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日本の市販ベビーフードの栄養学的な特徴を明らかに 価格の高いものはより「健康的」か? 研究成果

掲載日:2023年4月3日

【発表者】
杉本 南(東京大学未来ビジョン研究センター 特任助教)
佐々木 敏(東京大学大学院医学系研究科 教授(研究当時))
上地 賢(東邦大学健康科学部 看護学科 講師(研究当時))
苑 暁藝(国立健康・栄養研究所 特任研究員)
 
【発表のポイント】
  • 日本の市販ベビーフードを網羅的に収集し、そのパッケージ上の情報から見た栄養学的な特徴を、低/高価格帯の間で比較しました。
  • 種類によっては、高価格帯の製品の方が、たんぱく質が多く食塩が少なかったものの、差は比較的に小さく、食材の種類は低価格帯の方が多様でした。
  • この研究の結果は、乳幼児の健康に資するベビーフードの開発や適切な利用の促進へ貢献することが期待されます。
【発表の概要】
東京大学未来ビジョン研究センターの杉本南特任助教と、同大学大学院医学系研究科の佐々木敏教授らによる研究グループは、日本で初めて、日本の市販の離乳補助食品(いわゆるベビーフード)の栄養学的な特徴を明らかにしました。さらに、食品選択の重要な要素である価格と栄養学的な特徴との関連を、世界で初めて明らかにしました。
日本では、少子化にも関わらず、ベビーフードの生産量が年々増加している傾向にあり、乳幼児の食生活で、ベビーフードの果たす役割が大きくなっています。諸外国では、ベビーフードの食塩や砂糖の含有量に関する懸念が指摘されていますが、日本の製品に関する報告はありませんでした。
本研究では、販売されているベビーフードを網羅的に集め、そのパッケージ/製品ウェブサイト上の情報に基づき、製品の種類(ドライタイプの食品(注1)、ウェットタイプの食品(注2)、菓子類、飲料類)ごとに高/低価格帯間で、栄養学的な特徴を比較しました。その結果、レトルトなどのウェットタイプの製品では、高価格帯の製品の方が、たんぱく質が多く食塩が少ないものの、使用されている食材の種類は、低価格帯の製品の方が多様でした。一方で、ドライタイプの製品や、菓子、飲料では、高/低価格帯間で目立った差は見られませんでした。
この研究の結果は、乳幼児の健康に資するベビーフードの開発や適切な利用の促進への貢献が期待されます。例えば、離乳食を与える際には、無理をして高いベビーフードを買ったり、ベビーフードの利用を避けたりする必要はなさそうですが、一部の製品だけに偏らない、食塩の量に気を付けつつ他の食品・食材と組わせて与える、などの工夫をするとよい可能性が示唆されます。

(注1)ドライタイプの食品:ここでは、フリーズドライ加工された食品やフレーク状の食品で、水や湯を加えて戻して与えるものを、ドライタイプと定義した。

(注2)ウェットタイプの食品:ここでは、瓶やプラスチックトレー、レトルトパックなどに梱包されており、そのままあるいは温めて与えるものをウェットタイプと定義した。
 
表:価格帯間での価格と栄養素含有量の比較



ドライタイプでは、価格帯間で差はみられません。ウェットタイプでは、高価格帯の方が、たんぱく質含有量が多く、食塩が少なくなっています。菓子類と飲料類では、高価格帯の方が、たんぱく質含有量が多い傾向があります。
※製品は、表記の種類よりさらに細かい種類に分けてから2群に分けているため、低価格帯と高価格帯の25パーセンタイル値と75パーセンタイル値には重なりがあります。

図:使用されている原材料の種類の比較

ドライタイプでは目立った差はみられません。ウェットタイプでは低価格帯の製品の方が高価格帯の製品よりも使用されている原材料の種類は豊富な傾向があります。
 

論文情報

Minami Sugimoto, Xiaoyi Yuan, Ken Uechi, and Satoshi Sasaki, "The nutritional profile of commercial complementary foods in Japan: comparison between low and high price products," British Journal of Nutrition: 2023年3月13日, doi:10.1017/S0007114523000612.
論文へのリンク (掲載誌別ウィンドウで開く)

お問い合わせ先

東京大学未来ビジョン研究センター
特任助教 杉本 南(すぎもと みなみ)
E-mail:msugimoto[at]ifi.u-tokyo.ac.jp ([at]を@に変えて送信してください)

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