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第1回 Kavli IPMUアーティスト・イン・レジデンスプログラム参加作家展を開催 (カブリ数物連携宇宙研究機構)

2018年04月19日掲載

実施日: 2018年03月09日 ~ 2018年03月25日

2018年3月9日(金)から25日(日)まで、カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は、2F建ての元倉庫のギャラリー、カマタ_ソーコ(東京都大田区)で企画主催展覧会「再n邂逅する科学と美術の試み,2018東京 -第1回Kavli IPMUアーティスト・イン・レジデンスプログラム参加作家展」を実施しました。


展覧会場入口


展示風景(1F), 野村康生(奥), 春山憲太郎(手前)

Kavli IPMUアーティスト・イン・レジデンス(以下AIR)プログラムとは、物理学・天文学・数学の3分野を融合させる事で宇宙の根源的な謎の解明を目指す基礎科学の研究所であるKavli IPMUに約1か月間程度アーティストが滞在し、研究者が研究する同じ場で研究者と交流をしながら作品の制作を行い、後日作品を一般に公開するものです。本展は、プログラムに参加し、滞在制作を行った春山憲太郎2017年度レジデントアーティスト(彫刻)、平川紀道2016年度レジデントアーティスト(メディア)、野村康生2015年度レジデントアーティスト(絵画)による新作とKavli IPMUを紹介する展示、及び本プログラムを多様な専門家と共に検討する関連プログラムを実施するもので、科学と美術の交流による新たな文化の創造とKavli IPMUの広報を目的として、専門家も含む広く一般の方を対象に実施しました。


Noctis Labyrinthus No.30 -type.C positive-, Noctis Labyrinthus No.31 -type.P negative-, 2018, 野村康生

Untitled 2018, 2018, 春山憲太郎
 >記録動画
展示風景(2F), a study for spacecolortime, 2018, 平川紀道(credit: Norimichi Hirakawa)

16日間で20-30代が約半数を占める382名の参加者がありました。来場者アンケート結果(回答数210)によると、美術展示については「非常にすばらしい試みだと思います。ぜひ続けてほしいです」等今後のレジデンスプログラム及び企画展示の継続を希望する声が多い一方で、「難しい」「説明がもっとあると良い」等の意見も多く見られ、容易に"わかる"展示ではないが、多くの人にまず何よりも可能性のある興味深い試みとして受容されたことが伺えます。また、美術分野の学芸員・大学教員等の訪問も10数名あり、本企画が美術の専門領域においても関心を集めたことが伺えます。
Kavli IPMUの紹介展示は「併設してある学習スペースの内容も面白く、AIRらしい演出でもあった」等、来場者はKavli IPMUを知らなかった方が半数以上を占め、約8割の方が本企画への参加を通じてKavli IPMUへの関心を高めたと答えています。


Kavli IPMU紹介スペース(1F)


Kavli IPMU紹介スペース(1F)

会期中の関連プログラムは、サイエンスのアウトリーチプログラムとして、数学者によるサイエンスカフェ;伊藤由佳理Kavli IPMU教授/名古屋大学准教授「不思議なマッカイ対応」を3/18(日)11:00-12:30にカマタ_ソーコにて実施して10名の参加者があり、Will Donovan Kavli IPMU特任研究員「シャボン玉と時空」を3/21(水・祝)14:00-15:30にカマタ_ソーコにて実施して6名の参加者があり、阿部知行Kavli IPMU准教授「数学って何をするんですか?ー聞いてみよう!数学者とのダイアログ」を3/17(土)14:00-15:00にカマタ_ソーコにて実施して10名の参加者がありました。また、アートのアウトリーチプログラムとして、本展企画者による「ガイドツアー」を毎週火曜日14:00-14:30にカマタ_ソーコにて実施し、都合5名の参加者がありました。


サイエンスカフェ「シャボン玉と時空」の様子

他に、Kavli IPMU AIRプログラムを評価するものとして、出展作家、研究者(池田暁志Kavli IPMU特任研究員ー数学,砂山朋美Kavli IPMU特任研究員ー天文学)、および科学文化論(奥村大介東京大学特任研究員)、美術批評(沢山遼氏)が登壇するシンポジウム「科学論と美術論から考える基礎×科学×美術」を3/10(土)14:00-17:00にカマタ_ソーコにて実施し、約40名の参加者がありました。出展作家からどのように滞在しどのような作品を制作したのかの報告、Kavli IPMUの研究者から自身の研究の紹介と滞在をどのように受容したのかの報告、科学文化論からは科学プロモーションの一形式としてAIRプログラムの可能性、AIRの先駆けとしての科学人類学、数理科学と芸術、芸術における科学的正しさといった視点から過去の事例の紹介と比較を、美術批評からは過去の事例としてイサム・ノグチとバックミンスター・フラーの協働を中心とした紹介とその評価の提示がありました。


シンポジウムの様子

さらに、Kavli IPMU AIRプログラムをより探求するものとして、出展作家、研究者(山崎雅人Kavli IPMU准教授ー理論物理)、および論理学(丸山善宏京都大学助教)、美学(桑原俊介上智大学助教)が登壇するワークショップ「真×善×美から考える科学の基底と美術の基底」を3/11(日)10:00-16:30に多摩六都科学館(東京都西東京市)にて実施し、38名の参加者がありました。企画趣旨の説明後、午前中は出展作家からどのように作品を制作しているのかの報告、異なる表現メディアを扱う作家同士における、制作の際の限界の乗り越えについて相違点の確認等があり、午後は美学から美と善の通時的な概念変遷の紹介、論理学から善と真の関係の視点から自然主義の紹介、理論物理から研究における真と美についての報告がそれぞれあり、それを受けて参加者同士での意見交換、登壇者同士での意見交換を行いました。


ワークショップの様子(credit: 多摩六都科学館)

加えて、Kavli IPMU AIRプログラムの未来を検討するものとして、神経科学者(金井良太ARAYA Inc.,CEO)を招いたセミナー「人工意識から見るKavli IPMU AIRプログラム」を3/24(土)14:00-15:30にカマタ_ソーコにて実施し、12名の参加者がありました。人工意識研究からは方法としての客観を掲げる科学において美術等で扱うとされてきた主観を扱うために、数学と物理が扱うような”構造”を”感覚”や”認識”に見出す手法及び評価の開発と、それに伴う既存の不可視領域の可視化(未経験の"感覚"の可能性など)の提示がありました。
同様に、オルタナティブギャラリーオーナー(小川希Art Center Ongoing,代表)を招いたセミナー「オルタナティブから見るKavli IPMU AIRプログラム」を3/25(日)14:00-15:30にカマタ_ソーコにて実施し、18名の参加者がありました。オルタナティブからは、現在のアートワールドからは評価されない傾向にある自身のギャラリーに集まる作家の作品紹介、謎を探求する者としての科学者とアーティストの共通性、評価の定まらない価値の依代として価値観を共有するコミュニティの形成とその維持としての"コレクティブ"の可能性の提示がありました。

これらに登壇した専門家は、いずれも本プログラムのアートとサイエンスの横断を評価し、自身にとっても他分野の専門家と交流する機会として非常に貴重で有益な機会であるとしました。
来場者アンケートからは、「とても密度の濃いお話を伺えて勉強になりました。とても良かったです。考えさせられました」(数学者との対話)、「実際にAIRに参加した当人方の話と、それを学問的に見た話の両方を聴けたことで、企画の成果としての芸術作品の楽しみ方、企画そのものの主旨や可能にしうることなど様々なことを考える、知ることができた」(科学論と美術論から考える基礎×科学×美術)、「科学のイベントだけなら参加しなかったけれど、科学のことが聞けてよかったです。科学に興味のない人に科学のことを知ってもらうにはいいイベントではないかと思いました!」「このようなワークショップで色々な意見を伺い知見を増やすだけでなく、発見、ヒラメキを得られるので、定期的に開催してほしいと思います」(真×善×美から考える科学の基底と美術の基底)、「「役に立たない価置をどう見出すのか?」について数学・物理・天文学も「自然を新たな見方ができるおもしろさ」であり、決してノーベル賞を受賞する為でもビッグサイエンスの予算を取る為でもないはずだ。美術の逸脱する自由を、正しさの主張よりも重視する研究所にIPMUはなるべき」(オルタナティブからみるKavli IPMU AIR)等、来場者からも高い評価を得ていることが伺えます。

科学者とアーティストが出会い、その出会いの場にいなかった多くの方と作品を通じてその出会いを共有することを端緒とする本試みは、単に科学と美術が出会うだけでなく、科学にしか関心がなかった人が美術に出会い、美術にしか関心がなかった人が科学に出会い、多様な専門家同士が出会い、過去に出会ったアーティストと科学者が作品を通じて出会い直す等、多層的な出会いが可能となる稀有な機会として機能し、科学と美術の出会いのもたらす可能性への期待を生んだと言えるでしょう。本企画で発生した出会いを継続し活かしていくことで、今後”邂逅”へとつながる可能性は決して低いものではないのかもしれません。(本展企画者)

関連URL:https://www.ipmu.jp/ja/2018AIRExhibition



「再n邂逅する科学と美術の試み,2018東京 -第1回Kavli IPMUアーティスト・イン・レジデンスプログラム参加作家展」会場入口
 
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