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X線を用いて抗原複合体1分子の動態を連続的に計測 自己免疫疾患につながる新しい発現機構

掲載日:2015年2月6日

東京大学大学院新領域創成科学研究科の佐々木裕次教授と東京理科大学生命医科学研究所の小園晴生准教授を中心とする研究グループは、体内に侵入した病原体を免疫細胞に提示する分子である主要組織適合性抗原(MHC)分子が、病原体由来のタンパク質断片(抗原ペプチド)とどのように結合し、免疫応答を活性化しているかを、SPring-8 BL40XUビームラインで1分子内部動態測定をすることにより、世界で初めて実験的に明らかにした。

MHC分子に結合した抗原ペプチドの内部運動を1分子計測することに成功したDXT装置配置図。

© 2015 Yuji Sasaki.
MHC分子に結合した抗原ペプチドの内部運動を1分子計測することに成功したDXT装置配置図。

自己免疫を起こしやすい抗原ペプチドは、ゆるくMHC分子と結合することが以前より知られていた。しかし、このゆるい結合が免疫応答の分子認識機構にどう関わっているか実験的にはわからなかった。本研究成果により、抗原ペプチドの分子軸に対して回転方向の動きが特に活発化し、抗原ペプチドとMHCの複合体が新たな構造をとり、潜在的自己反応性のT細胞と反応することが分かった。

研究グループは、マウスのMHC分子に14個のアミノ酸からなる「長い抗原ペプチド」と10個のアミノ酸からなる「短い抗原ペプチド」が結合している場合のそれぞれの分子内部動態を、高精度と高速性を持ち合わせる唯一の1分子計測法であるX線1分子追跡法(DXT)、抗原ペプチド1分子動態の計算、多分子からの蛍光偏光解消法を用いて調べた。その結果、MHC分子とゆるく結合する「短い抗原ペプチド」は「長い抗原ペプチド」よりMHC分子内でよく動き、新たな構造をとっていることが明らかになった。

本成果は、佐々木らが考案実証した量子ビームを用いた1分子計測手法と計算科学の手法を融合することによって得られたものであり、このような手法は免疫学の分野において有効であり、非常に重要な結果を導けることを示した。

プレスリリース

論文情報

Haruo Kozono, Yufuku Matsushita, Naoki Ogawa, Yuko Kozono, Toshihiro Miyabe, Hiroshi Sekiguchi, Kouhei Ichiyanagi, Noriaki Okimoto Makoto Taiji, Osami Kanagawa, and Yuji C Sasaki,
“Single Molecular Motions of MHC Class II Rely on Bound Peptides”,
Biophysical Journal Online Edition: 2015/01/21 (Japan time), doi: 10.1016/j.bpj.2014.12.004.
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大学院新領域創成科学研究科

大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻

大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻 佐々木裕次 研究室

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