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不安とテスト成績に対する脳の異なる役割分担を明らかに -机に向かう計算テスト中の脳機能を光トポグラフィーで計測-

掲載日:2013年5月10日

日常生活における不安や心理的ストレスについての関心は高まっていますが、それらと脳機能との関係は、未だ詳しく明らかにされていませんでした。

© Ryu Takizawa. 前頭葉の機能区分によって課題成績と不安との脳機能との関連の仕方が異なっていた。

東京大学大学院医学系研究科精神医学の滝沢龍助教・笠井清登教授らのグループは、内田クレぺリン課題という単純計算課題(15分間・2セット)を施行時の前頭葉機能を、光トポグラフィー(近赤外線スペクトロスコピー:NIRS)を用いて計測しました。NIRSは自然な姿勢で非侵襲的な計測をできることが特徴であり、被検者が座った姿勢で机に向かい鉛筆を持って長時間課題をこなす最中の脳機能を計測できます。学校でのテストや職場でのデスクワークのような日常生活に近い環境で計測できる利点があり、ストレス下において脳のどこでどのような処理が行われているのかという脳科学の謎のひとつを明らかにする有効な手法です。

本研究の結果、前頭葉機能と課題成績・不安との関連の仕方が、脳の前頭葉の機能区分によって異なっていることが分かりました。腹外側前頭前野では課題遂行成績のみと有意な相関を示したのに対し、より高次な統合処理機能を持つと考えられている前頭極や背外側前頭前野のNIRS信号の変化は不安指標と有意に相関を示しました。これは心理的ストレス課題の成績と不安に対する処理において、前頭葉の機能区分によって異なる役割分担が存在する可能性を示唆した初めての報告です。

本研究成果は、2013年2月20日に科学雑誌「Cerebral Cortex」のオンライン速報版(http://cercor.oxfordjournals.org/)で公開されました。なお、本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、また文部科学省新学術領域研究などの助成を受けて行われました。

論文情報

Ryu Takizawa, Yukika Nishimura, Ryosuke Tsunematsu, Hidenori Yamasue, Kiyoto Kasai,
“Anxiety and Performance: The Disparate Roles of Prefrontal Subregions Under Maintained Psychological Stress”,
Cerebral Cortex 2013.2.20. doi: 10.1093/cercor/bht036.
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大学院医学系研究科・医学部 精神医学分野

大学院医学系研究科・医学部 精神医学分野 神経画像・臨床神経生理グループ

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