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直接観測された物質物理学の謎「隠れた秩序」 ウラン化合物の結晶構造の変化を示す決定打

掲載日:2014年6月25日

東京大学大学院新領域創成科学研究科の芝内孝禎教授(京都大学理学研究科客員教授)、同水上雄太助教、京都大学大学院理学研究科の松田祐司教授らは、ラン化合物URu2Si2の「隠れた秩序」の結晶構造が、わずかに菱形状にひずんでいることを、SPring-8における放射光を用いた超高分解能結晶構造解析により直接的な方法で観測して示しました。

「隠れた秩序」における電子状態の概念図。

© 2014 芝内 孝禎
「隠れた秩序」における電子状態の概念図。グレーの球がそれぞれウラン原子を示している。ある面(青色)でのウラン原子のまわりの電子状態の様子は、右斜め方向と左斜め方向で異なった楕円形の状態となっており、4回回転対称性が破れている。

URu2Si2は新しい電子状態である「隠れた秩序」を示し、物質物理学の30年来の謎でした。2011年に研究グループが間接的な証拠により菱形状(2回回転対称性)の秩序であることを類推しましたが、これまでの結晶構造解析では正方形状(4回回転対称性)であると報告されてきており、本研究で菱形状の結晶構造が直接観測されたことは、「隠れた秩序」がどのような空間的な対称性を持った電子状態であるかを示す決定打です。

長年の謎であった「隠れた秩序」が単純には予測できなかった電子状態を持つことが示されたことにより、物質中の電子がとり得る新しい状態の理解へとつながることが期待されます。

本研究成果は2014年6月19日付けで、英国科学誌Nature Communicationsにオンライン掲載されました。また、本研究は公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)の杉本邦久研究員、独立行政法人日本原子力研究開発機構の芳賀芳範主任研究員らと共同で行われました。

プレスリリース

論文情報

S. Tonegawa, S. Kasahara, T. Fukuda, K. Sugimoto, N. Yasuda, Y. Tsuruhara, D. Watanabe, Y. Mizukami, Y. Haga, T.D. Matsuda, E. Yamamoto, Y. Onuki, H. Ikeda, Y. Matsuda, T. Shibauchi,
“Direct observation of lattice symmetry breaking at the hidden-order transition in URu2Si2”,
Nature Communications vol.5, Article number: 4188 (2014), doi: 10.1038/ncomms5188.
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