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鞭毛モーターの司令塔を発見 鞭毛を動かす分子モーターの活性を制御する中心装置の存在を初めて明らかにした

掲載日:2013年5月1日

© Masahide Kikkawa. 左下:緑藻クラミドモナスの鞭毛。長さは約10マイクロメートル。右下:超低温電子顕微鏡を用いて解かれた鞭毛内部の3次元構造。太さは約180ナノメートル。一対の中心管を9本の二重管が取り囲む9+2構造をとっている。上:9本の二重管の内、一本を取り出した図。本研究で明らかになった鞭毛モーター司令塔の場所を矢印で示す。赤点線の円の直径が約17ナノメートル。

© Masahide Kikkawa. 左下:緑藻クラミドモナスの鞭毛。長さは約10マイクロメートル。右下:超低温電子顕微鏡を用いて解かれた鞭毛内部の3次元構造。太さは約180ナノメートル。一対の中心管を9本の二重管が取り囲む9+2構造をとっている。上:9本の二重管の内、一本を取り出した図。本研究で明らかになった鞭毛モーター司令塔の場所を矢印で示す。赤点線の円の直径が約17ナノメートル。

鞭毛は波打ち運動によって液体の流れを生み出す細胞小器官で、人間を含む多くの生物の細胞運動や発生に重要な役割を担っています。例えば人間の精子は、鞭毛を波打たせて泳ぎます。また、肺の気道では、吸い込んだホコリや病原体を外へ出すために、沢山の繊毛(鞭毛の一種)が粘液の流れを作っています。この様に体内で重要な役割を担っている鞭毛は、数千個のダイニンと呼ばれるモーター分子によって動かされています。鞭毛では多種多様なダイニン分子が働いていますが、異なる種類のダイニンがどのように協働しているのか分かっていませんでした。

今回、東京大学大学院医学系研究科の小田賢幸助教と吉川雅英教授らのグループは、超低温電子顕微鏡などを用いて、鞭毛の外側のダイニンと内側のダイニンを繋ぐ役割をしているタンパク質ODA-IC2を同定しました。さらに超高速度カメラ等による多角的解析から、このODA-IC2を遺伝子操作によって乱すと外側にあるダイニンは制御から外れて暴走し、内側にあるダイニンは逆に働きが低下することが分かりました。これらの結果は、ODA-IC2が鞭毛の動きを制御する上で「司令塔」として働いており、そこに手を加えるとダイニン全体に影響が及ぶ急所であることを示しています。今回得られた知見は、鞭毛運動の制御機構についての理解を深めるだけでなく、鞭毛が関わる不妊、呼吸器疾患、水頭症等の研究に貢献することが期待されます。

本研究は内閣府・最先端・次世代研究開発支援プログラム、及び科学研究費補助金の助成を受けて行われました。本研究の成果は『Current Biology』(2013年4月22日号)に掲載されます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Toshiyuki Oda, Toshiki Yagi, Haruaki Yanagisawa, and Masahide Kikkawa,
“Identification of the Outer-Inner Dynein Linker as a Hub Controller for Axonemal Dynein Activitie”s,
Current Biology Vol. 23, 2013: 1-9, doi: 10.1016/j.cub.2013.03.028.
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大学院医学系研究科

分子細胞生物学専攻生体構造学分野

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