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ビタミンKの肝臓での作用不足は出血と寿命短縮に至る ビタミンKの肝臓内外への多面的な作用解明に道筋

掲載日:2014年3月10日

ビタミンKは緑黄色野菜や納豆に多く含まれ、臨床的には新生児の頭蓋内出血の予防や、加齢や医薬品等に使われるステロイドによる骨粗鬆症の治療に用いられています。また、疫学研究によりビタミンK不足が動脈硬化や認知症、悪性腫瘍の危険性を上げる可能性も報告されています。

© 東 浩太郎、井上 聡
γグルタミルカルボキシラーゼ(Ggcx)は、小胞体膜にある酵素であり、タンパク質の中の特定のグルタミン酸にカルボキシル基を付加するGla化という修飾に必要です。この修飾にはビタミンKの存在が欠かせません。肝臓のみでGgcxを欠損させたマウスは出血傾向を示し、正常なマウスに比べ早期に死亡することが示されました。また、この寿命短縮には性差があり、メスに比べてオスにおいてより顕著でした。

ビタミンKは主としてγ(ガンマ)グルタミルカルボキシラーゼ(Ggcx)という酵素の作用を助け、タンパク質の修飾にかかわるメカニズムが示されており、肝臓での血液凝固因子の活性化に必要です。ビタミンKとγグルタミルカルボキシラーゼの作用を受ける分子は血液凝固因子以外にも10種類以上知られ、全身に分布しており、ビタミンKは上記の疾患やさまざまな生理作用にかかわる多様な働きが推測されています。しかし、ビタミンKの作用は不明な点が多いほか、γグルタミルカルボキシラーゼを全身で欠損するマウスは激しい出血傾向により生存できないため、多面的なビタミンKの作用を動物モデルにて解明することは困難でした。

このたび、東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター抗加齢医学講座特任教授の井上聡、老年病科特任講師(研究当時)の東浩太郎、埼玉医科大学ゲノム医学研究センター 講師の池田和博らは、大阪大学、神戸薬科大学との共同研究により、γグルタミルカルボキシラーゼを肝臓のみで欠損するマウスの作製に成功し、そのマウスが出血傾向を示すことを示しました。また、この遺伝子改変マウスは寿命が短縮するものの、オスよりもメス(妊娠していない)の方が長生きであるという興味深い結果を得ました。本研究の技術を用いることにより、特定の臓器のみでビタミンKの作用を欠損したマウスを作製することが可能となり、今後、全身における多彩なビタミンKの作用が解明されると期待されます。

本研究は文部科学省や日本学術振興会の科学研究費の支援を得て行われました。この研究成果は、日本時間2月10日にPLOS ONEオンライン版に発表されました。

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論文情報

Azuma K, Tsukui T, Ikeda K, Shiba S, Nakagawa K, Okano T, Urano T, Horie-Inoue K, Ouchi Y, Inoue S,
“Liver-specific γ-Glutamyl Carboxylase-Deficient Mice Display Bleeding Diathesis and Short Life Span”,
PLoS One,Online Edition: 2014/2/10 (Japan time) , doi: 10.1371/journal.pone.0088643.
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大学院医学系研究科

医学部附属病院 老年病科

医学部附属病院 抗加齢医学講座

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