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食物アレルギー性腸炎の制御機構の解明 誘導と寛解に関わる各種臓器の役割

掲載日:2015年1月7日

東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センターの足立(中嶋)はるよ特任研究員、八村敏志准教授および同医科学研究所の清野宏教授らの研究グループは、食物アレルギーを発症する遺伝子改変マウス(卵白に含まれるアルブミン(オボアルブミン)のみと結合するT細胞の受容体遺伝子を発現したマウス)において、その腸炎発症にオボアルブミンのみに反応する白血球(CD4陽性T細胞)とそれが産生するサイトカインの一種、インターロイキン-4が必須であることを示しました。

食物アレルギーを患った遺伝子改変マウスにオボアルブミンを投与することで誘導される腸炎の原因組織を同定するため、各種リンパ系の組織を欠損したマウスを作製した。欠損させた組織は以下の5種である(1, MLNs; 腸間膜リンパ節、2, PPs; パイエル板、3 (4), MLNs and PPs (pLNs); 腸間膜リンパ節とパイエル板、5, SP; 脾臓)。腸管免疫系のリンパ節(MLNs とPPs)は腸炎誘導に必須である一方、全身的に防御を担う免疫系(SP)は炎症形成には影響しない。

© 2015 足立(中嶋)はるよ
食物アレルギーを患った遺伝子改変マウスにオボアルブミンを投与することで誘導される腸炎の原因組織を同定するため、各種リンパ系の組織を欠損したマウスを作製した。欠損させた組織は以下の5種である(1, MLNs; 腸間膜リンパ節、2, PPs; パイエル板、3 (4), MLNs and PPs (pLNs); 腸間膜リンパ節とパイエル板、5, SP; 脾臓)。腸管免疫系のリンパ節(MLNs とPPs)は腸炎誘導に必須である一方、全身的に防御を担う免疫系(SP)は炎症形成には影響しない。

この食物アレルギーを発症するマウスは、オボアルブミンの経口投与により炎症が誘導された後も、継続的にオボアルブミンを投与すると、T細胞が無反応状態(寛容)になり腸炎を克服します。そこで腸炎の発症と抑制に関わる免疫組織を特定するため、各組織を欠損したマウスを作製しました。その結果、1)腸管免疫系のうち腸間膜リンパ節は腸炎形成に必須である。一方腸管のリンパ節様器官・パイエル板は、摂取したオボアルブミンに対し迅速に反応し、腸間膜リンパ節と協調的に機能する、2)全身的な防御を担う免疫組織である脾臓はオボアルブミン投与後から寛容になり腸炎誘導には関与しない、3)腸間膜リンパ節では寛容成立後も炎症反応が継続し、炎症の再発に関わる可能性がある、ことが明らかになりました。

免疫系は、生体が取り込んだ食品に対して炎症と寛容の相反する反応を同時に誘導します。この複雑な免疫応答のバランスが崩れることが食物アレルギー発症の仕組みですが、未だに詳細は解明されていません。本研究はこの仕組みを担う組織と、それらの相互関係を明らかにすることに成功しました。本成果は科学的根拠のある安全で有効な治療法の開発に必須であり、その進展に大きく貢献します。

プレスリリース

論文情報

Haruyo Nakajima-Adachi, Akira Kikuchi, Yoko Fujimura, Kyoko Shibahara, Tsuyoshi Makino, Masako Toda, Shuichi Kaminogawa, Ryuichiro Sato, Hiroshi Kiyono, Satoshi Hachimura, et.al.,
“Peyer’s patches and mesenteric lymph nodes cooperatively promote enteropathy in a mouse model of food allergy”,
PLoS One Online Edition: 2014/10/7 (Japan time), doi: 10.1371/journal.pone.0107492.
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