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植物中の元素の動きを生きたまま見る 生きた植物体内の無機元素動態をリアルタイムでイメージングする技術の開発

掲載日:2012年10月15日

(A)開発した装置で得られたリン酸(32Pでラベル)の連続画像。土壌に比べて水耕栽培ではリン酸を容易に吸収できることが分かる。(B)本装置を顕微鏡に搭載した様子。透過光像とRI像を撮像することができる。© Nakanishi Tomoko

植物は養分元素と水で生きている。そこで生きた植物の活動を知るためには、吸収する養分元素の動態をリアルタイムで可視化し、その画像を解析することが非常に重要である。

現在、蛍光タンパク質を用いて植物の細胞を光らせて内部の様子を探るイメージング技術が著しく発展している。しかし、この手法では細胞の発光を捕えるために暗闇の中で観測を行う必要があり、植物にとって自然な生育環境である光照射下でのリアルタイムの観測は困難である。また、元素の運搬量の定量的な評価などを画像から行うことは不可能であった。

今回、東京大学大学院農学生命科学研究科 放射線植物生理学研究室 中西友子 教授らは、植物全体ならびに微小組織のイメージングを行うため、アイソトープ(RI)を用いたマクロとミクロの2種類のイメージング装置を開発した。

RIを利用するイメージング画像は、放射線計測を基盤としているため、画像からの定量化ができることが蛍光イメージングと比較して大きな優位点である。RIイメージングはダイナミックレンジが広いので、少量から多量までのRIをイメージングすることができる。さらに、放射線を計測するCCDカメラと試料植物の間に、光は透過しないが放射線は透過するアルミニウムを置くことで、植物にだけ光を照射しながら放射線量を観測することが可能となった。

これらの装置により、植物が土壌から無機元素を吸収し、地上部へ輸送するというマクロな動態から、根端部分に無機元素を蓄積するというミクロな動態までを、初めてリアルタイムの高解像度動画として捉えられるようになった。この装置を用いることにより、分子生物学的な研究と、植物体内での実際の無機元素動態が結びつき、植物体内物質動態の理解につながっていくことが期待される。

プレスリリース

論文情報

Satomi Kanno, Masato Yamawaki, Hiroki Ishibashi, Natsuko I. Kobayashi, Atsushi Hirose, Keitaro Tanoi, Laurent Nussaume and Tomoko M. Nakanishi,
“Development of real-time radioisotope imaging systems for plant nutrient uptake studies”,
Philosophical Transactions of the Royal Society B 367 (2012): 1501, doi: 10.1098/rstb.2011.0229.
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大学院農学生命科学研究科

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