ARTICLES

English

印刷

世界初!シナプス形成の可視化で発見した「小さな突起」 自閉症など脳の発達障害の病態解明へ道

掲載日:2012年11月15日

小脳のシナプスが形成される際に顆粒細胞の出力線維(赤)から伸びた『小さな突起』 © Aya Ito-Ishida
小さな突起は活発に伸縮し、受け手側の構造であるプルキンエ細胞のスパインを取り囲む。それに伴い、スパインの構成分子であるデルタ2型グルタミン酸受容体(緑)の集積が促進し、シナプスが成熟することが示唆された。この顕微鏡画像は、Cbln1欠損マウスの小脳切片に、Cbln1タンパクを作用させてから7時間後、生きたままの状態で撮られた。顆粒細胞とデルタ2型グルタミン酸受容体は、それぞれ異なる色調の蛍光タンパクで標識されている。

東京大学の岡部繁男教授・石田綾研究員と慶應義塾大学の柚﨑通介教授らは、発達期の脳で神経細胞同士がつながる仕組みを解明しました。

神経細胞は「シナプス」を介して結合し、脳の回路を形成しています。幼弱期の脳が多彩な機能を獲得するためには、一つの細胞に数百~数百万個のシナプスが正確に作られることが必要といわれています。しかし、どのようにしてシナプスができるのか、その分子機構は不明な点が多く、神経科学の最大の課題となっています。本研究グループはマウスの神経細胞を用い、運動制御を担う小脳において、シナプスが形成される過程を可視化することに成功しました。その結果、シナプスの形成過程で神経線維から『小さな突起』が伸び、シナプスの成熟を促すことを、世界で初めて発見しました。さらに『小さな突起』は、Cbln1(シービーエルエヌ1)という分泌因子と、デルタ2受容体、ニューレキシンの3つのタンパク質の相互作用により形成されることを解明しました。脳の正常な発達とその障害の原因を解明するために、シナプスの形成機構を理解することが必須です。『小さな突起』を見出した今回の知見は、そのための重要な一歩となると期待されます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Aya Ito-Ishida, Taisuke Miyazaki, Eriko Miura, Keiko Matsuda, Masahiko Watanabe, Michisuke Yuzaki, Shigeo Okabe,
“Presynaptically released Cbln1 induces dynamic axonal structural changes by interacting with GluD2 during cerebellar synapse formation”,
Neuron 2012/11/8, doi: 10.1016/j.neuron.2012.07.027.
論文へのリンク

リンク

大学院医学系研究科

神経細胞生物学

慶應義塾大学医学部生理学(神経生理)

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる