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窒素栄養の利用を制御する植物の仕組み NIN様転写因子が植物の硝酸応答を司る

掲載日:2013年4月1日

植物は土壌中の窒素を吸収・同化し、さまざまな生体物質を合成して成長しています。植物の主たる窒素源となる硝酸は、窒素同化に用いられるだけでなく、窒素同化に関わる遺伝子や成長制御に関わるタンパク質遺伝子などの発現を変化させるシグナル分子としても働き、植物の窒素利用機能を調節して成長を制御しています。

硝酸シグナルをうけて活性化したNIN様転写因子は窒素同化関連遺伝子の発現と制御タンパク質遺伝子の両方の発現を制御することにより、窒素応答の鍵因子として働いている。硝酸によるNIN様転写因子の活性化はN末端側領域を介して行なわれる。
© Shuichi Yanagisawa

東京大学生物生産工学研究センター植物機能工学部門の柳澤修一准教授の研究グループは、 窒素利用機能の制御においてNIN様転写因子が中心的な役割を担うことを見出しました。植物の窒素利用の仕組みとして、まず、硝酸シグナルがNIN様転写因子を活性化し、活性化されたNIN様転写因子がさまざまな遺伝子の発現を促進することで窒素利用機能を制御するという一連の流れが、今回初めて明らかになりました。

穀物の生産量をあげるため、農業では大量の窒素肥料が使用されていますが、このような大量の窒素肥料の使用は河川や海洋の富栄養化や酸性雨の元凶となっています。今回、窒素利用機能の制御を司る鍵因子が判明したことで、環境に悪影響を及ぼさない方法で植物の窒素利用効率を高められる可能性が出てきました。本成果は、環境にやさしい農業の開発や植物バイオマスの向上技術の開発につながります。

プレスリリース

論文情報

Mineko Konishi & Shuichi Yanagisawa,
“Arabidopsis NIN-like transcription factors play a central role in the nitrate signalling”,
Nature Communications Online Edition: 2013/3/20 (Japan time), doi: 10.1038/ncomms262.
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生物生産工学研究センター 植物機能工学部門

生物生産工学研究センター 植物機能工学部門 柳澤グループ

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