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フレキシブルな有機不揮発性メモリを単分子膜で実現研究成果

フレキシブルな有機不揮発性メモリを単分子膜で実現

「フレキシブルな有機不揮発性メモリを単分子膜で実現」

注:本資料内容に関する解禁日(2:00 pm U.S. Eastern Time Thursday, 10 December 2009.アメリカ東部時間12月10日木曜日午後2時:日本時間12月11日午前4時)以前の報道につきましては、ご遠慮頂きたく存じます。

概要
 国立大学法人東京大学(総長濱田純一)の染谷隆夫博士(大学院工学系研究科電気系工学専攻教授[注1])と関谷毅博士(東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻助教)を中心とした研究チームは、ゲート絶縁膜に1分子膜を用いたフレキシブルな有機不揮発性メモリの作製に世界で初めて成功した。

 有機不揮発性メモリは、ゲート絶縁膜に自己組織化単分子膜[注2]、半導体に有機半導体ペンタセンを用い、金属電極を絶縁膜で挟み込むフローティングゲート構造を作製することで実現された。フローティングゲート構造は、シリコンのフラッシュメモリで採用されている基本構造である。今回の開発で鍵となったのは、プラスティックフィルム上に極薄のゲート絶縁膜を2段に重ねる技術で、これは分子の自己組織化単分子膜を利用することで可能となった。1分子膜を用いたことによってプログラム・消去電圧6V、読み出し電圧1Vまで低電圧化することができた。

 有機不揮発性メモリと有機トランジスタを組み合わせてメモリセルを構成し、これを2次元格子状に並べて26×26のメモリアレイを作製した。メモリアレイは、半径6mmまで曲げても機械的・電気的な劣化がなく、電源を切っても記憶が保持される不揮発性メモリとしての性能が確認された。さらに、このメモリアレイを圧力センサと集積化することによって、圧力イメージをシート内に保持できる“インテリジェント圧力センサ”の実証実験にも成功した。

 これまでにも有機不揮発性メモリの報告があるが、主にポリフッ化ビニリデンなどの有機強誘電性材料を用いたメモリと今回のようなフローティングゲート構造を用いたものとに大別される。有機強誘電性メモリはプログラム・消去電圧が高いなどの問題があり、一方フローティングゲート構造の有機メモリにおいても高いプログラム・消去電圧、メモリの特性ばらつき、大気安定性などの課題があった。これに対して、今回は、ゲート絶縁膜に厚み制御を必要とせず、大気安定材料である極薄膜の自己組織化単分子膜を用いることで、既存の課題を克服し、大規模な有機不揮発性メモリを実現した。

 実用化に向けての課題はメモリ保持時間である。現在の保持時間は1日であるが、これはメモリセルの大きさやゲート絶縁膜の厚みによっている。そのため、素子の微細化や分子長の長い自己組織化単分子膜を用いることによって、大幅に改善できると期待される。

 プラスティックフィルム上に有機半導体と自己組織化膜で作製されているため、印刷製造可能で大面積低コストが期待される。既存のシリコンフラッシュメモリは微細化を行うことで大容量記憶媒体として巨大な市場を形成してきた。一方、有機フラッシュメモリは大容量記憶媒体としてではなく、数メートルにもなる大面積のセンサやディスプレイなど、シリコンが苦手としている大面積エレクトロニクスにおけるメモリ素子として期待されている。現在盛んに研究が進められている大面積エレクトロニクスにこの有機フラッシュメモリを利用することで、より高機能化をすることができるようになり、例えば、パソコンや携帯電話などの記憶媒体が無くても、かざすだけで記憶できるイメージスキャナ、画像を覚えておいてくれるディスプレイ、セキュリティーシステムなど大面積エレクトロニクスの新用途が急速に拡大するものと期待される。

 本研究は、横田知之氏(東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 大学院生)、Ute Zschieschang博士(ドイツ マックスプランク研究所 研究員)、Hagen Klauk博士(ドイツ マックスプランク研究所 研究員)、Siegfried Bauer(オーストリア ヨハネスケプラー大学 教授)、竹内健博士(東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻 准教授)、高宮真博士(東京大学生産技術研究所 准教授)、桜井貴康博士(東京大学生産技術研究所 教授)らと共同で進められた。

 本研究の技術詳細は、米国Science誌にて2009年12月11日(日本時間)に出版される。
 論文名「Organic Non-volatile Memory Transistors for Flexible Sensor Arrays」

注1:東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構教授を兼担
注2:自己組織化単分子膜は、液体中で自己形成する数ナノメートルの極薄膜である。

 

本研究に関する連絡先:
東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻
教授 染谷隆夫
助教 関谷毅 

添付資料

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