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臨床研究「Valsartan Amlodipine Randomized Trial」に関する調査結果概要記者発表

臨床研究「Valsartan Amlodipine Randomized Trial」に関する調査結果概要

平成27年3月31日

東京大学
 

1.ポイント
○A教授が他大学在職時代に実施していたVART研究とその成果である論文について調査・検討を行ったところ、利益相反に関する点並びにデータの信頼性及び統計解析方法の妥当性に関する点について、当時のルール上明確な違反はなく、当時の研究コミュニティにおける常識的な取扱いの範囲内であると認定した。
○データの改ざんを認めることはできず、統計解析方法も当時の所属大学医学部教授会が承認した研究計画書記載のプロトコールからの逸脱がなく、当時の研究レベルにおいて不適切と認定することはできなかった。
○ 他方、東京大学においては、研究倫理体制の適正確保のため各種施策が実施されてきているが、今後とも不断の改善努力が望まれる。

2. 調査結果の概要
VART研究特別外部調査委員会(委員長:山口厚 早稲田大学教授。以下、「本委員会」という。)は、VART研究(※)(以下、「本研究」という。)及びその成果として2010年10月7日に公表された論文(以下、「メイン論文」という。)について、当時の所属機関において定められていた臨床研究に関する規程等のルールに違反した点があったか、また、当時の臨床研究の実施方法又は臨床研究に関する論文投稿におけるルールに違反した点があったか、との観点から調査・検証を実施した。
本委員会は、本研究及びメイン論文について、本研究が開始された2002年当時からメイン論文が公表された2010年当時までを調査対象期間として、以下の項目に分けて調査・検証を行った。
① 利益相反に関する点
② データの信頼性及び統計解析方法の妥当性に関する点
具体的には、①について、E氏の関与への認識と利益相反規程への抵触等、また、②について、データの信頼性と統計解析の妥当性等の各項目に関して、調査・検証を行った。
その結果、
・A教授に、本研究の統計解析にE氏がどの程度関与していたのかの具体的認識はなかったこと
・A教授において、E氏がノバルティス社の社員であるとの具体的な認識を有していたとまでは認められないこと
・奨学寄附金の受入れについて、当時のメイン論文投稿時における論文投稿誌及び本研究期間当時の所属機関の定めには明確な規定はなかったことから、当該論文に利益相反の状況を掲載する必要があったと認めることはできないこと
・ メイン論文におけるデータの信頼性について、メイン論文に用いられたデータが、バルサルタンに有利な結論を導く意図をもって改ざんされたものであることを認めることは困難であること
・イベント評価委員や効果・安全性評価委員会について、委員のうち1名が被験者の担当医が委員に選任されたことは不適切であったものの、当時の所属大学においては、委員会の構成員の選定方法に関して具体的なルールは定まっていなかったものと推測され、本研究結果に影響は生じなかったこと
・統計解析方法の妥当性について、当時の所属大学自らが本研究のプロトコールを承認した事実に鑑み、同プロトコールと同じ前提を採用すると、本研究期間当時、A教授に不正行為と評価されるべき行為があったとは認められないこと
等の本委員会の調査・検証結果を総合すると、教員として教育研究という職務を適切に遂行しない蓋然性を推認させる不正行為があったとは認められないとの結論に至った。
ただし、本研究を事後的・客観的に評価した場合、研究実施体制等に問題があったことは否めないため、この点は、A教授において真摯に受け止められるべきであり、今後、A教授が東京大学において行う臨床研究を含む教育研究において十分留意することが望まれる。
なお、この点に関し、東京大学における研究倫理体制の適正及び信頼の確保のための取り組みとして、これまで各種の施策が実施されてきているが、これらの施策にとどまらず、今後も研究倫理体制の適正及び信頼の確保のための不断の改善努力が望まれる。

(※) the Valsartan Amlodipine Randomized Trial(VART study)
VART研究の目的は、アムロジピンとバルサルタンについて、2剤それぞれの使用下における各種心血管イベント発生の差を検討し、日本人にとってより有用な高血圧治療法を検討することにある。

【参考】本報告書全文(PDFファイル)
 

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