Go Global Gateway 2020年度コラム2
オフラインの価値
2020/04/21     

大学院総合文化研究科・教養学部
附属国際交流センター グローバリゼーションオフィス 特任助教     
下山田翔     

  みなさんこんにちは。新学期が始まり4週間経ちましたが、いかがお過ごしですか。オンラインの授業にはもう慣れた、という人もいるかもしれません。勉強も、買い物も、友達や家族との交流も、あらゆることがオンラインでできる(せざるをえない)今だからこそ、みなさんに考えてほしいことがあります。それは、オフラインの価値についてです。
  オフラインの価値に気づくには、オンラインで伝わらないことを考えるといいかもしれません。例えば食事の匂いはどうでしょう。例年なら5月に開催される五月祭には多くの屋台が出店されますが、そこからただよう美味しそうな匂いは、本郷キャンパスに行かないと感じられません。もちろん、五月祭のウェブサイトで何が食べられるのかを見ることはできても、本郷キャンパスに行かないと食べられません。
  私はエディンバラ大学に留学していましたが、現地に行ってとても驚いたのは、夏の日の長さと、冬の日の短さです。エディンバラの緯度が東京よりもずっと高いことは知っていました。しかし、北緯55度という情報をオンラインで知ることと、実際にその場所で生活するのは異なります。6月は、勉強を終えた夜8時過ぎに近所の公園でゴルフを楽しみました。その喜びを、モスクに通う学友に伝えて、のちに少し後悔したことがあります。なぜだかわかりますか。ヒントは食事です。
  大学の授業はどうでしょう。みなさんは日頃、教員や学友の声を、Zoomを通して聞いていると思います。バーチャルな空間で聞くその声は、教室で聞く声と一緒ですか。授業中に行われるディベートを想像してください。議論が白熱したときの大きな声や熱気は、人が物理的な空間に集合し、共に学んだときにしか感じられない雰囲気ではないでしょうか。
  オンライン学習は、地理的な隔たりを超えて、知識の習得を可能にします。海外にいる大学教員や学生と交流することもできるでしょう。しかし、行かないとわからないこと、行かないままだとわかった"つもり"になっていることが、たくさんあります。駒場で、本郷で、そして海外の大学で、学べるようになる日が待ち遠しいですね!