Go Global Gateway 2020年度コラム3
相対性と多様性
2020/05/13     

大学院総合文化研究科・教養学部
附属国際交流センター グローバリゼーションオフィス 特任助教     
下山田翔     

  「自己を相対化し、国際感覚をもつ」
このフレーズをどこかで見た・聞いたことはありませんか。国際総合力を構成するコンセプトのうち、5つ目の要素です。国際総合力を身につけるには自己を相対化することが望ましい、ということが読み取れますが、皆さんはこのフレーズをどのように解釈しますか。
  相対は「他との関係や比較において成り立つさま」を意味する言葉で、絶対の対義語です。私が国際的な文脈において相対性を実感するのは、「自分とは違う文化に身をおく人と自分を比べたときに、自分の認識が絶対に正しいとは言えない」ことに気づくときです。
  英語を例にとって考えてみましょう。イギリス英語やアメリカ英語の話者は「確信を持っている」と言う時に「I’m one hundred percent (100 %) sure」と言うことがあります。しかし、Hinglish(HindiとEnglishのハイブリッド)の話者のなかには、「確信」や「100 %」を意味する際に「cent percent」と言う人がいます。イギリス英語やアメリカ英語に慣れ親しんでいる私は、centと聞くと0.01を連想します(ドルやユーロの一番小さなコインを思い出してください)。しかし、インドやパキスタンでは、私の見解は絶対に正しいとは言えないでしょう。
  国や文化が変われば“正しい”とされていることも変わるので、相対性は多様性と密接に関連しています。一見、揺らぎのなさそうな数字の世界も、実は多様です。もし、あなたの第1言語が日本語なら、10,000 (ten thousand) や100,000 (one hundred thousand) を英語で言うことに苦労しているかもしれません。それは、日本では数字を4桁(万の位)で区切るのに対し、英語では3桁(千の位)で区切るからです。
  視点が変われば、ものの見方も変わります。月の模様を見て何を連想するかは国によって異なる、という話を聞いたことがある人も多いでしょう。なぜ、異なる国や宗教が同じ土地を取り合うのでしょう。なぜ、環境問題に対する取り組みは、世界で足並みが揃わないのでしょう。なぜ、女性が社会で活躍できる国と、できない国があるのでしょう。解決策を見出すためには、自分とは違うものの見方を理解する必要があります。
  世界は相対性と多様性で溢れています。自分とは違う場所に住み、違う言語を話し、違う文化に身をおく人が、同じものをどのように捉えるか想像してください。そして、(今すぐには無理でも)その人が住む場所に行き、その人の言語を学び、その人の文化に親しむことで、答え合わせをしてみてください。まるで壮大なクイズに挑戦するように、皆さんが相対性と多様性に向き合っていってくれたらいいなと思っています。