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書籍名

シリーズ 現代経済研究 慢性デフレ 真因の解明

著者名

渡辺 努 (編著)、 上野 陽一、関根 敏隆、西崎 健司、渡辺 広太、上田 晃三、須藤 直、今井 聡、塩路 悦朗、山本 勲、黒田 祥子、阿部 修人、塩谷 匡介

判型など

240ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2016年9月7日

ISBN コード

978-4-532-13466-2

出版社

日本経済新聞出版社

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慢性デフレ 真因の解明

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2012年末に発足した第2次安倍政権は、大胆な金融緩和と機動的な財政出動、そして民間投資を喚起する成長戦略という経済政策「3本の矢」を打ち出した。その起点となる金融政策については、政府と日本銀行が2013年初頭にアコード (政策協定) を発表した。「2年で2%」という物価安定目標を掲げて2014年4月に「量的・質的金融緩和」が始まり、2016年1月には「マイナス金利政策」へと踏み出した。2016年9月からは「イールドカーブ・コントロール」が始まった。日本経済はいよいよ、長く続いたデフレからの脱却に成功するのか。その推移は国内のみならず、世界からも注目を集めてきた。しかし、消費者物価の基調は上昇しつつあるものの、依然として足取りは重い。物価目標達成の展望も開けていない。振り返ると日本経済は、1990年代半ば以降20年もの長期にわたって、デフレとゼロ金利とに直面してきた。その間に、物価下落が将来にわたって続くという予想が人々の間に定着してしまい、実物に資金が回らず、投資意欲を減退させてきた。これは「慢性デフレ」とも呼べる現象である。慢性デフレの原因はどこにあるのか。企業の価格設定や、消費者の間に根強い「デフレマインド」は、どのようにして形成されてきたのか。これを明らかにするのが本書の目的である。本書では、慢性デフレの特徴を整理したうえで、企業と家計の行動をマクロとミクロのデータでとらえ、そのメカニズムを解明する。物価上昇率の趨勢的な低下は1990年代後半に日本で始まったが、その後,米国や欧州でも同様の現象が起きており、先進各国の中央銀行を悩ませている。本書の分析は日本のみならずグローバルな視点でも有益な含意をもつ。

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 渡辺 努 / 2016)

本の目次

第I部 慢性デフレの特徴とそのメカニズム
第1章 慢性デフレはなぜ起こったか -- 仮説のレビューと複合的実態の把握
第2章 価格硬直化の原因とマイルドデフレ長期化への影響

第II部 デフレ期における企業の価格設定行動
第3章 POSデータによる「特売」の分析 -- 景気との相関とデフレマインド醸成への含意
第4章 POSデータによる商品の新陳代謝と価格設定分析 -- 減量による実質値上げが意味するもの
第5章 為替レート・輸入品価格の影響力の復権 -- 外的ショックの時系列VAR分析

第III部 デフレ期における家計の購買価格と賃金
第6章 賃金デフレはマイルドデフレ長期化の主犯か -- ミクロ・マクロ両面からのアプローチ
第7章 世代別購入価格の実証分析 -- ホームスキャンデータであぶり出された高い買い物をする高齢者

関連情報

書評:
慢性デフレ真因の解明、上がらぬ物価と賃金を分析 -- 渡辺 努 編
2016/10/30 日本経済新聞朝刊 21ページ

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