東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙にグレーとえんじ色の文字で書名など

書籍名

資産運用の高度化に向けて インベストメント・チェーンを通じた経済成長

著者名

神作 裕之、 小野 傑、今泉 宣親 (編)

判型など

436ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2017年3月10日

ISBN コード

978-4-322-13040-9

出版社

きんざい

出版社URL

書籍紹介ページ

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資産運用の高度化に向けて

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本書は本学公共政策大学院及び法科大学院等の大学院生を対象に、2015年度に行われた講義「資本市場と公共政策」の講義記録を編纂したものである。本講義は、毎年度、資本市場を取り巻くさまざまな課題の中から、政策的かつ法的にホットな議論のあるテーマを選び、関係する実務家を招いてリレー講義を行っているもので、2015年度は「資産運用の高度化」をテーマに取り上げた。

今後、少子高齢化がますます進み、国民各人による現役時代の自助努力による資産形成が一層重要になっていく中、千数百兆円に及ぶ家計金融資産という国富を食いつぶすことなく増やしていくことは不可欠になっている。しかしながら、日本の家計金融資産の構成は、現預金や国債等に大きく偏っており、より積極的な資産構成となっている米国などと比べて、家計金融資産の増加ペースは大きく見劣りしている。

他方で、近年グローバルに低金利環境が継続する中、資金を預かる機関投資家においては、債券等による伝統的な運用方法だけでは必要なリターンを得ることは難しい。

このため、我が国において「資産運用の高度化」を進め、最終受益者である家計から金融機関等を経て投資先企業等へ至る「インベストメント・チェーン」全体を発展させることは、日本において重大かつ喫緊の課題となっている。

このように、「資産運用の高度化」の政策的な重要性はますます高まっていることから、講義のテーマとして取り上げた。また、各界の専門家・実務家を招いての連続講義の内容は、教室でのひと時で終わらせるにはもったいないと考え、登壇者の協力の下、講義録として出版するに至った。

具体的には、日本における資産運用とその技術的な進展、公的年金・投資信託・保険会社などのとりわけ中長期的な観点からの投資を目指す機関投資家における資産運用の状況、日本版スチュワードシップ・コードのねらい、「顧客本位の業務運営に関する原則」の背景にあるとされるフィデューシャリー・デューティー、機関投資家による運用行動に大きな影響を与えている我が国の業規制や、国際金融規制などの国際的な議論について取り上げている。

本書はあくまでも複数の専門家・実務家によるリレー講義をまとめたものである。したがって、本書を読めば、学術的な理論が理解できる、あるいは体系的に一つの法典が理解できるというものではない。また、行政も含めた実務の世界は日進月歩であり、最新の動きは本講義の後もどんどん積み重なっている。

しかし、それぞれ一線で実務に従事している専門家、行政官、法曹関係者が自分の言葉で語った内容からは、一般の教科書類では得られない、実務における懊悩、これに対して知恵を絞って対処する姿、その結果、社会が動かされている様が伝わってくると思う。このため、公共政策や法曹といった世界を将来志向する方にとってはもちろん、学術的な世界に生きる人にとっても得るものの多い内容となっていると自負している。

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 神作 裕之 / 2017)

本の目次

第1章  機関投資家による資産運用手法の変遷 -- 年金基金の運用を通じて
      みずほ年金研究所理事長   村上 正人
第2章  運用技術の高度化 -- 年金運用の現場から
      みずほ信託銀行投資運用業務部長  岩村 伸一
第3章  機関投資家としての生命保険会社
      第一生命保険運用企画部運用企画室長  渡辺 康幸
第4章  公的・準公的資金の運用の高度化等についての議論
      野村総合研究所上席研究員  堀江 貞之
第5章  証券会社からみた貯蓄から投資への流れと投資信託
      みずほ証券常務執行役員  幸田 博人
第6章  日本版スチュワードシップ・コード
      金融庁総務企画局参事官  油布 志行
第7章  法概念としてのフィデューシャリー・デューティー
      西村あさひ法律事務所パートナー弁護士・東京大学大学院法学政治学研究科客員教授  小野 傑
第8章  投資運用業を取り巻く法規制
      西村あさひ法律事務所パートナー弁護士  有吉 尚哉
第9章  資産運用に関する国際的な議論
      みずほ証券経営調査部上級研究員  熊谷 五郎