東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に薄いストライプの横線、右上にビルの写真

書籍名

金融法講義

著者名

神田 秀樹 (編著)、 神作 裕之 (編著)、 みずほフィナンシャルグループ (編著)

判型など

542ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2013年12月13日

ISBN コード

978-4-00-022600-4

出版社

岩波書店

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金融法講義

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金融とは、異なる時点におけるキャッシュフローの交換と定義されます。伝統的な金融取引としては、個人または企業と銀行との間で行われる預金や借入れにかかる取引が思い浮かぶでしょう。本書は、そのような伝統的な金融取引についての民事法上の規律に関する記述に続き、シンジケート・ローン、デリバティブ、資産運用、社債、LBO・MBOおよび証券化という6種類の現代的金融取引について解説するものです。
 
本書は、東京大学法学部 (総合法政専攻と公共政策大学院と合併) において平成19年以降開講されている特別講義「金融法」の講義を、速記録をベースにその後の法改正や判例などを盛り込んだ上で再現したものです。
 
特別講義「金融法」は、株式会社みずほフィナンシャルグループにより東京大学大学院法学政治学研究科に平成19年に設置された寄附講座「金融法」のプログラムの一環として実施されています。講義では、デリバティブ取引や証券化などの現代的金融取引に関する民事法上の規律や金融監督規制について、みずほフィナンシャルグループから実務の一線で活躍しておられる専門家を講師としてお招きし、豊富なデータと生きた法に基づく最先端の講義をしていただいています。講義では、実務家からの数回の講義のあと、研究者の側からレビューとして整理や問題提起を行っています。本書は、講義を再現するとともに、レビューの内容の一部は主としてコラムに反映されています。
 
「金融法」の分野では、かつてはスタンダードな体系書が何種類かありましたが、最近はほとんど存在しません。その理由としては、法改正が頻繁で実務の進歩が急速であるなどさまざまな理由があると考えられますが、1つの大きな理由は、実務家と研究者とが協力しなければ理論的にも実務的にも真に利用に耐え得る体系書を執筆することがむつかしくなっていることにあると考えられます。本書は、特別講義「金融法」における実践を通じて、金融法の体系書として実務家と研究者の協働作業の成果を世に問うものです。
 
本書が出版されたのちは、特別法「金融講義」では、第2章から第4章までのいわゆる伝統的銀行取引については受講者の皆さんに事前に読んでおいていただくこととし、講義では、第1章に続いて第5章以下が扱われています。そして、本書ではほとんど触れていない金融規制と銀行法など監督法についても、取り扱っています。具体的には、プルーデンス規制と銀行法の概要、銀証分離規制の歴史と現在、各種リスク管理および統合的なリスク管理などについて、国際金融規制の動向も踏まえながら講義が行われています。本書は、現在、新版の公刊に向けて改訂作業を行っている最中であり、新版ではこれらを取り込むことを目指しています。したがって、新版では、従来の記述のアップデートのほか、金融監督法の部分が新たに付け加わることになります。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 神作 裕之 / 2016)

本の目次

はしがき
第1章 金融法概観
1 金融法の範囲と基礎概念
2 金融取引の類型
3 金融取引に関する特別法
4 金融規制の目的と近年の動向等
5 銀行法概観
6 本書の構成

I 伝統的銀行取引

第2章 受信取引法
1 はじめに
2 預金契約
3 預金の成立
4 預金の帰属
5 預金の払戻し
6 預金の相続
7 預金と時効
8 複数店預金に対する差押え
9 結びに代えて

第3章 与信取引法1 -- 貸出し
1 はじめに
2 銀行の与信業務と根拠法
3 与信業務にかかる法規制
4 与信判断における善管注意義務
5 与信の相手方
6 銀行取引約定書
7 与信の具体的態様
8 保証・損失補償
9 担保

第4章 与信取引法2 -- 債権管理・債権回収
1 債権管理
2 債権回収
II 現代型金融取引

第5章 シンジケート・ローン
1 シンジケート・ローンの概要
2 アレンジャーおよびエージェントの役割と責任
3 シンジケート・ローン契約の特徴
4 貸付債権売買市場 (セカンダリー・マーケット)

第6章 デリバティブ
1 デリバティブ取引の概要
2 デリバティブ取引の債権金額
3 デリバティブ取引の内部統制問題
4 デリバティブ取引の説明義務
5 デリバティブ取引をめぐる近時の規制動向
6 おわりに -- デリバティブ取引の法務のポイント

第7章 資産運用
1 はじめに
2 主な運用商品・運用会社と関連法
3 投資信託の関連当事者と関連する法律

第8章 社債
1 公社債の種類と社債発行市場の規模
2 社債発行に関わる主な法律
3 社債管理者制度と社債権者集会

第9章 LBO・MBO
1 はじめに
2 LBO・MBO総論
3 LBO・MBOにおける主要な証券関連規制
4 LBO・MBOと銀行・証券会社に対する規制
5 おわりに

第10章 証券化
1 はじめに
2 資産の証券化概論
3 証券化と法律
4 (補論) 証券化と金融危機・金融システムの関係
5 おわりに

関連情報

東京大学大学院法学政治学研究科
2016年度 Aセメスター 特別講義「金融法」神田・神作
http://www.flp.j.u-tokyo.ac.jp/
注: ID (ユーザー名)、パスワード制限有り

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