
書籍名
動き出す「貯蓄から投資へ」 資産運用立国への課題と挑戦
判型など
292ページ、A5判、並製
言語
日本語
発行年月日
2024年7月11日
ISBN コード
978-4-322-14449-9
出版社
金融財政事情研究会
出版社URL
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英語版ページ指定
本書は、東京大学で2023年度に行われた講義「資本市場と公共政策」の内容をまとめたものです。この講義は、みずほ証券株式会社による寄付講座の一環として、公共政策大学院および大学院法学政治学研究科 (総合法政専攻・法曹養成専攻) の大学院生を対象に、現実の政策課題への理解を深めてもらうことを目的として、毎年度秋学期に開講されています。
2023年度秋学期は、「国民の安定的な資産形成の実現に向けた課題」をテーマに選定し、政府が進める「貯蓄から投資へ」に向けた最新の動きを取り上げました。
政府が「貯蓄から投資へ」という言葉を初めて公表文書で使用したのは、2001年8月に金融庁が公表した「証券市場の構造改革プログラム」まで遡ります。その後、個人投資家の市場参加を促すためのさまざまな施策が講じられてきましたが、日本の家計金融資産における株式や投資信託などのリスク性資産の割合は、米国などと比較して、依然として低い水準にとどまっています。
そのような中、2022年5月に「資産所得倍増」という大きな方向性が示されたことで「貯蓄から投資へ」が再び大きく動き出しました。そして、この講義が開講されていた2023年12月には「資産運用立国実現プラン」が取りまとめられ、講義で言及された多くの施策が実行に移されています。こうしたタイミングで、この政策課題に最前線で向き合う官民の幅広い専門家・実務家にゲスト講師としてお越しいただき、豊富なご経験と知識にもとづく最先端の実務や理論について実態に即したお話をいただいた本講義は、まさに時宜を得たものであったと考えています。
最新の政策課題であることのみならず、資本市場をめぐる課題に対応するための政策手段は多様であり、公共政策を学ぶうえで参考となる内容が多いと考えたことや、学生が将来社会人として生活を送っていくうえで必要な金融リテラシーを身に付けることができると考えたことも、このテーマを選定した理由です。
2023年度の講義は、第一線で活躍される講師陣によるお話に加え、多数の学生の参加を得て、毎回、数多くの学生による質疑と、それに伴う講師と学生との真摯なやりとりがなされ、活発かつ多くの示唆に富んだものとなりました。そうした講義の内容を本学の教室内だけにとどめておくのはあまりに惜しいと考え、読者の皆様と広く共有することができるよう、講義録として本書を出版することを計画した次第です。
金融資本市場をめぐる課題や資産形成のあり方を考えるに際し、本書が読者の皆様の参考となれば幸いです。
(紹介文執筆者: 公共政策大学院 特任教授 守屋 貴之 / 2025)
本の目次
前金融庁長官 中島 淳一
第2章 ファイナンシャル・ウェルビーイングと金融リテラシーに関する海外事例
みずほ証券株式会社グローバル戦略部産官学連携室上級研究員 梶原 真紀
第3章 金融広報中央委員会の歴史と金融経済教育の課題
日本銀行情報サービス局金融広報課長/金融広報中央委員会事務局主任企画役 山田 桂志
第4章 顧客と金融事業者をつなぐFPの役割
特定非営利法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会理事長 白根 壽晴
第5章 株式市場の魅力向上策――上場会社の企業価値向上に向けた取引所の取組み
株式会社東京証券取引所上場部企画グループ統括課長 池田 直隆
第6章 企業年金・個人年金制度と国民の資産形成
厚生労働省年金局企業年金・個人年金課長 海老 敬子
第7章 金融商品の販売と自主規制機関の役割
日本証券業協会自主規制本部自主規制企画部長 横田 裕
第8章 顧客本位の業務運営に関する実務と2023年金融商品取引法等改正のねらい
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士 有吉 尚哉
第9章 メディアから見た「貯蓄から投資へ」
株式会社日本経済新聞社編集金融・市場ユニット金融エディター 玉木 淳
第10章 金融リテラシーの向上に向けて
金融庁総合政策局総合政策課金融経済教育推進機構設立準備室長 桑田 尚
(役職は講義時点)
関連情報
http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/CMPP/index.html
著者インタビュー:
GraSPPers Voice 政策課題に取り組むときに必要なのは「バランス感覚」と「柔軟性」 (東京大学公共政策大学院ホームページ)
https://www.pp.u-tokyo.ac.jp/grasppers-voice/prof-takayuki-moriya/