
書籍名
金融資本市場のフロンティア 東京大学で学ぶFinTech、金融規制、資本市場
判型など
316ページ、A5判
言語
日本語
発行年月日
2019年7月17日
ISBN コード
978-4-502-30991-5
出版社
中央経済社
出版社URL
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本書は、東京大学大学院における講義「資本市場と公共政策」の概要について、速記録に基づいて整理・加筆修正し、編集したものです。この講義は、みずほ証券株式会社による寄付講座『資本市場と公共政策』の一環として、公共政策大学院、法科大学院 (法曹養成専攻)、法学政治学研究科総合法政専攻の大学院生を対象として行われ、将来、官公庁・行政関係機関や金融機関職員、法曹関係、研究者などを目指す大学院生が学習するのに適したテーマを選び、現実の政策課題への理解を深めてもらうことを目的に、毎年、開講されています 。
2018年度秋学期のテーマとして「金融資本市場における公共政策的・法的論点と課題」として、FinTechやM&A、コーポレートガバナンスなどの最近の金融資本市場におけるトピックを取り上げることとしました。
金融資本市場においては、最近、FinTechに代表されるような新たなプレーヤーによる参入、キャッシュレスの進展、AI・ビックデータの活用、仮想通貨交換業等における課題、ICO (Initial Coin Offering) と呼ばれる資金調達の在り方の検討などの大きな変革が進んでいます。会社法改正の動きなどを受けたコーポレートガバナンスのあり方、スチュワードシップ・コード改訂を受けた機関投資家のあり方、フィデュシャリー・デューティーの考え方、ベンチャーファイナンス、ESG投資などの従来から指摘されている課題や論点などは重要性をますます高めており、公共政策的・法的論点と課題は多数に上ります。そして、この講義が行われた時期は、まさにFinTechが大きな注目を集めた時期でもあり、仮想通貨交換業規制やICO規制の在り方の本格的な検討や議論を通じて、既存の金融監督規制の問題点やそれとの整合性など、新たに浮かび上がった課題も多く、公共政策的・法的論点も多数に上ったことから、本書はまさに時宜を得たものであったと考えています。
本書では、豊富な経験と知識をお持ちの専門家・実務家によって、最先端の実務や理論、貴重なご経験について、多くの資料をもとに、リアルな実態に即して執筆いただいています。このため、公共政策や法曹といった世界を将来志向する方にとってはもちろん、研究者や実務家の方にとっても得るものの多い内容となっていると思います。また、講義における質疑応答の模様も収録されており、その論点や課題についての理解を深め、今後の公共政策や法規制の在り方について掘り下げて思索する一助となっていることと思います。
(紹介文執筆者: 公共政策大学院 特任教授 湯山 智教 / 2020)
本の目次
柏木 亮二 (野村総合研究所金融ITイノベーション事業本部上級研究員)
第2章 FinTech・仮想通貨に関するわが国の取り組みと課題
神田 潤一 (株式会社マネーフォワード執行役員)
第3章 FinTechと今後の金融行政の方向性
岡田 大 (金融庁企画市場局信用制度参事官)
第4章 Age of FinTech,中央銀行の視点
副島 豊 (日本銀行決済機構局審議役FinTechセンター長)
第5章 金融機関のデジタル・イノベーションへの取り組み
小林 レミ (みずほ証券株式会社市場情報戦略部上級研究員)
第6章 ICOと金融規制
有吉 尚哉 (西村あさひ法律事務所パートナー)
第7章 M&Aの法的・公共政策的な課題と論点
田村 俊夫 (一橋大学大学院経営管理研究科教授)
第8章 「顧客本位の業務運営」原則: 公法と私法の接点
小野 傑 (西村あさひ法律事務所代表パートナー)
第9章 コーポレートガバナンス改革と独立取締役の役割
藤田 勉 (一橋大学大学院経営管理研究科特任教授)
第10章 ベンチャーファイナンス,イノベーション促進に関する論点と課題
石井 芳明 (内閣府科学技術イノベーション担当企画官)
第11章 ESG投資の現状と課題:パフォーマンス評価を中心に
湯山 智教 (東京大学公共政策大学院特任教授)
(注: 肩書は本書に収録した講義の開催時のもの)