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書籍名

メガシティ メガシティとサステイナビリティ

著者名

村松 伸、 加藤 浩徳、 森 宏一郎 (編)

判型など

304ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年8月12日

ISBN コード

978-4-13-065151-6

出版社

東京大学出版会

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メガシティとサステイナビリティ

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人類と地球のサステイナブルな未来は、メガシティに大きく委ねられている。21世紀末に100億人を突破すると言われる世界人口の変化にともない、人口1000万人以上を擁する巨大都市であるメガシティもまた急激に増加しようとしている。メガシティは人口の多さと集中度から、そのもたらすさまざまな負荷はとてつもなく巨大である。
 
グローバルには温室効果ガスの排出、自然資源・水産資源などの大量消費、海洋汚染、ローカルには大量廃棄物、河川の汚濁、疫病の発生等々、メガシティを筆頭に都市は、人類と地球を危機に陥れる張本人として取り扱われてきた。しかしその一方で、都市の誕生は、火の使用、農業の発明に匹敵する人類の文明の重要な画期の一つと見なされる。非都市から人々をひきつけ、教育、福利、安心と安全を提供し、人類の発展に寄与する多数の飛躍的発明・発見も都市が育んできた。
 
本書は、地球環境問題のひとつとしてメガシティが俎上にのぼる際の現在の通俗的な視点を疑い、人類の長い歴史の中でメガシティの意味を再考しようとするものであり、6巻に渡るシリーズのイントロダクションにあたる。まず、メガシティが向かうべき姿の原則を提示し、そのあるべき姿を達成するためのアプローチが提案される。そこでは、長期ビジョンに基づく「ラディカル・インクリメンタリズム」という考え方、巨大都市のあるべき姿の評価方法であるCSIというアプローチ、「都市地域生態圏」という概念、新興国巨大都市経済のモデルと環境問題の解決策が提示される。また、地球環境とメガシティが生起する問題への介入策として「メガシティ・シナリオベース・アプローチ」、モンスーンアジア都市地域生態圏の巨大都市への介入方法としてスプロール化と高密度化への対処方法がそれぞれ具体的に提案されている。
 
本書は、メガシティが地球環境に与えるインパクトについて、ゼロから研究を開始し、世界でも類を見ないまったく本質的で独創的な理解と解決策を提示した点や、分析にとどまらず介入策までも提示している点で、他に類を見ない内容となっている。また本書は100人以上の研究者の参加による巨大プロジェクトの成果であるが、個々の研究者の断片と集積ではなく、それらをひとつの方向に統合し、また学術的、啓発的な一体化を達成した結果として生み出された点も大きな特徴と言える。
 
メガシティと地球環境の複雑な関係、その不具合の解決、さらにそれぞれのメガシティが有する特質の育成などに関心のある方には、是非とも手に取って読んでいただきたい。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 教授 加藤 浩徳 / 2018)

本の目次

目次
 
1 総説: メガシティと地球環境をめぐる問題群
2 メガシティとその出現経緯
3 地球環境・経済・社会: 都市を考える3要素
4 メガシティとサステイナビリティ
5 ミクロ介入: ラディカル・インクリメンタリズムの実践
<座談会> 地球の中のメガシティ
 

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