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薄山吹色の表紙

書籍名

同成社 中世史選書24 室町幕府の外様衆と奉公衆

著者名

木下 聡

判型など

370ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2018年4月20日

ISBN コード

9784886217905

出版社

同成社

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室町幕府の外様衆と奉公衆

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室町幕府は、将軍を頂点として、守護家・外様衆・奉公衆・奉行人などから構成されている。本書で取り扱う外様衆・奉公衆とは、元々各地の有力な領主で、南北朝内乱の中で幕府将軍に付き従い、恒常的に京都に滞在した人々である。有事には将軍の直接的な軍事力として機能し、平時には将軍御所の警備、外出の御供・警衛をし、将軍の直轄領の代官も務めていた。
 
このように幕府内でも重要な位置を占めていた外様衆・奉公衆であるが、個別の家の検討がされることはあっても、全体的な検討は福田豊彦氏の一連の研究以降この二十年以上なされておらず、外様衆に至っては、存在自体は知られていても、構成員・役割・出自などは全く検討されていなかった。
 
本書の第I部では、そうした外様衆・奉公衆を総体的に明らかにすることを目的として論を展開している。まず室町幕府の秩序がどのように編成されていたかを明らかにし、外様衆・奉公衆が、室町幕府の全国統治に欠かせない存在であったと同時に、彼らも衆編成されることへのメリットがあるからこそ、在京して幕府に属したことを示した。そして外様衆の構成員とその出自、簡単な家のあらまし、幕府内で果たした役割を明らかにし、奉公衆も、成立時期と構成員の変遷を検討し、各時代にどの氏族が奉公衆にいたかを示す一覧表も提示している。また序章では、管見に入った外様衆・奉公衆に関する先行研究もひとまとめにしてある。
 
第II部では、外様衆構成員の中でも、鎌倉幕府以来の吏僚である評定衆の各家を検討している。基本的に政治の表舞台に立つような人物はいないが、官途奉行・地方 (じかた) 頭人・神宮方頭人など重要な役職を任され、室町幕府を支え続けた家である。
 
彼らに共通しているのは、基本幕府内での家格・地位・役職を保持しようとする姿勢で、上昇志向を見せるのは限られた者であり、応仁の乱後はそれぞれの道を模索している。将軍との関係を強めた摂津氏、現状維持を図った二階堂・町野氏は、努力の甲斐あって幕府最末期まで生存できたが、結局幕府滅亡と命運を共にしている。一方京都に見切りを付けて越前に在国した波多野氏は、結果的には現代まで家を存続させている。
 
動乱の中でいかにして生き残るか。これはどの時代・地域においても直面する問題である。室町幕府の外様衆も奉公衆も、それぞれの家の生存戦略として、幕府や台頭する大名との関係・距離をいかに図るかに悩まされていた。本書は外様衆・奉公衆の全貌を知るだけでなく、そうした視点から彼らの苦悩を見るための一助ともなっている。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 助教 木下 聡 / 2018)

本の目次

序 章
第I部 室町幕府外様衆・奉公衆の編成
 第一章 室町幕府の秩序編成と武家社会
  はじめに
  一 室町幕府秩序の確立
  二 幕府の地域支配と家格秩序
  三 義稙将軍再任後の幕府秩序
  おわりに
 第二章 室町幕府外様衆の基礎的研究
  はじめに
  一 外様衆の構成員
  二 外様衆の形成と役割について
  おわりに
 第三章 室町幕府奉公衆の成立と変遷
  はじめに
  一 奉公衆の成立時期
  二 明応の政変までの奉公衆変遷
  三 義稙・義澄期の奉公衆
  四 義晴・義輝期の奉公衆
  五 義昭期の奉公衆
  おわりに
 
第II部 室町幕府評定衆家の研究
  序 評定衆家について
 第一章 摂津氏
  一 摂津氏の系譜
  二 南北朝~室町中期の摂津氏―親秀・能直・能秀・満親・之親期―
  三 戦国期の摂津氏―政親・元造・晴門期―
  まとめ
 第二章 二階堂氏
  一 鎌倉末~南北朝期二階堂氏の系譜と政治的動向
  二 鎌倉府・古河公方下の二階堂氏
  三 室町幕府における二階堂氏
  まとめ 
 第三章 町野氏
  一 南北朝期~鎌倉府時代の町野氏
  二 室町幕府における町野氏
  三 古河公方家臣としての町野氏
  まとめ
 第四章 太田氏
  一 南北朝期の太田氏
  二 室町期の太田氏
  まとめ
 第五章 波多野氏
   一 南北朝以降の波多野氏の系譜
   二 波多野氏の政治的位置と基盤
   小 括
 
  終 章
 

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