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ロシア国立海軍のイラスト

書籍名

ロシア国立海軍文書館所蔵日本関係史料解説目録 ロシア国立海軍文書館所蔵日本関係史料解説目録2

判型など

367ページ

言語

日本語、ロシア語

発行年月日

2017年

ISBN コード

9785893321739

出版社

ヒペリオン出版社

英語版ページ指定

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本書は、史料編纂所とロシア国立海軍文書館 (RGAVMF) との共同で刊行された、解説つきの史料目録である。ロシア国立海軍文書館が所蔵している、日露関係の史料について目録化したものの第2巻にあたる (第1巻は、2011年に刊行された)。同館は、ロシア連邦のサンクト・ペテルブルグ市 (かつて帝政期に首都であった) に所在する、ロシア最古の文書館 (アーカイヴズ) のひとつであり (創立1724年)、20世紀までのロシア海軍関係の歴史的な記録資料を大量に収蔵している。そのなかには、日本関係の大部な史料群も存在しているのである。本巻は、この厖大な史料のうち、19世紀中葉から20世紀初頭までの時期を取り扱い、調査の成果を目録として刊行するものである。
 
史料編纂所による学術研究の事業は明治期にまで遡るが、海外における日本史関連資料の調査、すなわち在外史料の調査は、19世紀末にスタートし、基幹的な史料集の編纂・刊行と並行してすすめられてきたものである。第2次大戦後には、国際学士院連合 (UAI) の関係事業としても位置づけられ、すなわち日本学士院委嘱の事業の一環としても、在外史料の調査収集、さらには出版事業が推進されてきた。本書は、史料編纂所が日本学士院よりの支援を得て刊行した、ロシア所在の「日本関係史料解説目録」シリーズとしては、3冊目にあたるものとなる (いずれもサンクト・ペテルブルグ市ヒペリオン社から刊行)。
 
いわゆる冷戦期の渦中では、日本人研究者がソ連共産圏の文書館にアクセスすることは長いあいだ困難であった。ロシア連邦の発足以後、ロシア所在のアーカイヴズは広く国内外の研究者たちに開かれるように転換し、ロシア・ソ連史の研究は格段に深化したものと評価されている。日露関係の歴史研究についてもこれは例外ではなく、各種文書館所蔵の一次史料にもとづく実証研究が次々と現れてきているのが現段階である。史料編纂所による調査研究もこの動向に加えられるものといってよい。21世紀初頭から研究チームが編成されて、直接にロシア所在の史料についての調査・研究にあたったのである。日露関係の未紹介史料は大量にのぼり、まずはその本邦学界への速やかな紹介が課題として認識されるにいたった。史料編纂所では、関連して科学研究費による研究プロジェクトの成果としても位置づけ、本書を刊行することとした。
 
本書のような史料解説目録の刊行は、まずはロシアの国家機構内部で重要資料として保管されてきた大部の史料につき、その簡便な紹介をめざしているものである。目録の作成作業は、国立海軍文書館のスタッフがおこなった。史料目録の配列は1843年から1917年までの年代順となっており、露文の目録に続けて、その日本語訳を収載している。例として、1853年の史料を一点挙げてみよう。「プチャーチンのコンスタンチン・ニコラエヴィチ大公宛軍務報告書。その内容は、フリゲート艦パルラダ号の香港から長崎への航海、…日本人が儀礼を遵守してフリゲート艦に乗艦したこと、荘厳な入港のこと」(180~181頁)。
 
『ロシア国立海軍文書館所蔵日本関係史料解説目録』では、第1巻で1344点、本巻の第2巻で1296点の史料が目録化されている。日本関係の史料はもちろん以上に留まるものではないが、今後の調査研究の足がかりとしてご利用いただければ幸いである。東京大学附属図書館には本目録のシリーズが架蔵されているので、ぜひとも閲覧のうえで日露関係の歴史を考える一助としていただきたい。
 

(紹介文執筆者: 史料編纂所 准教授 小野 将 / 2018)

本の目次

編著者による解説序文
 
История Японии в документах Российского государственного архива военно-морского флота - 2. Середина XIX-начало XX в.
 
ロシア国立海軍文書館所蔵日本関係史料解説目録2 (19世紀―20世紀初頭)
 

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