東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

水色の表紙に人体のイラスト

書籍名

身体性システムとリハビリテーションの科学2 身体認知

著者名

近藤 敏之、 今水 寛、 森岡 周 (編)

判型など

264ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2018年12月14日

ISBN コード

978-4-13-064402-0

出版社

東京大学出版会

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これからの社会に必要とされる有効なリハビリテーション法の確立を目指すシリーズ全2巻。本巻では「身体認知」を扱う。幻肢をはじめとした身体錯覚やバーチャルリアリティなどのリハビリへの活用といった最新のトピックも収録。理学療法や神経科学に携わる人必携。人間が適切に身体を動かしているときには“自身が運動している”という運動主体感や“これが自身の身体である”という身体所有感などの身体意識を得られる。特に、身体意識の神経基盤が、主に右半球の下頭頂小葉と前頭回を結ぶ神経回路網に存在することを、健常者における行動実験・脳活動計測・非侵襲脳刺激、身体意識に変容のある統合失調症患者における脳内ネットワーク解析で明らかにした研究について詳しく説明。また、身体意識の基礎となる感覚抑制のメカニズムを、サルの神経活動記録により、ニューロンレベルで明らかにした研究についても解説する。
 
本シリーズは、脳と身体の関わりについて、システム工学的な方法論を用いて、リハビリテーションを対象として考えましょう、という趣旨で刊行された。このテーマは、今日迎えている超高齢社会において非常に重要なトピックであり、さまざまな議論がなされているものの、これまでそれに100%適合した学問分野がなかった。このような問題意識より、文部科学省新学術領域研究「脳内身体表現の変容機構の理解と制御 (略称: 身体性システム)」が2014年から5年計画で発足し、脳科学、リハビリテーション医学、システム工学という3つの分野の研究者が緊密なタッグを組んで「身体性システム科学」なる学問体系の確立を目指して研究を遂行している。本書は、その領域の成果の1つの集大成となる書籍である。ここでは、各執筆者が、各々の学問分野をベースとして、全体として共通して進む方向性を意識しつつ、執筆している。本書は脳科学、リハビリテーション医学、工学の学際領域に興味がある大学生以上の読者をターゲットとしている。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 教授 今水 寛 / 2019)

本の目次

第I部 身体認知とリハビリテーションの理論
第1章 身体認知とは――脳の中の自己身体
  1.1 身体認知のシステム科学
  1.2 精神疾患における身体意識の異常

第2章 身体意識の脳科学
  2.1 心理学・行動学からのアプローチ
  2.2 非侵襲脳活動計測からのアプローチ
  2.3. 神経活動からのアプローチ
  2.4 リハビリテーションへの応用に向けて

第3章 身体意識の脳内身体表現マーカー
  3.1 皮質脳波計測による脳内身体表現マーカーの探索
  3.2 皮質脳波/機能的MRIによる脳内身体表現マーカーの探索

第4章 身体意識の数理モデル
  4.1 身体意識――運動主体感と身体保持感
  4.2 研究方法――計算論と検証
  4.3 運動主体感の成立過程とそのモデル
  4.4 身体保持感の成立過程とそのモデル
  4.5 実験による検証
  4.6 モデルベーストリハビリテーションへの展開

第II部 応用事例
第5章 VR・クラウドリハビリシステム――身体意識への介入
  5.1 ニューロリハビリテーションの現状と課題
  5.2 VRを活用したリハビリテーションシステム
  5.3 脳内身体表現を考慮したVRリハビリテーションプラットフォーム
  5.4 クラウド型VRリハビリテーションシステム
  5.5 提案システムを用いた身体意識への介入実験事例
  5.6 今後の展開

第6章 運動観察リハビリテーション――視覚情報を利用した運動学習
  6.1 脳卒中とその後遺症
  6.2 リハビリテーションの阻害因子
  6.3 身体意識と運動障害
  6.4 脳内身体表現と運動制御
  6.5 観察・模倣運動

第7章 身体失認・失行症のリハビリテーション――身体意識の問題から捉える
  7.1 身体失認の病態とメカニズム
  7.2 身体失認の評価とリハビリテーション
  7.3 失行の病態とメカニズム
  7.4 失行の評価とリハビリテーション
 

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