東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に途上国の教育現場の写真8枚

書籍名

教員政策と国際協力 未来を拓く教育をすべての子どもに

著者名

興津 妙子、川口 純 (編著)

判型など

368ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2018年11月15日

ISBN コード

9784750347479

出版社

明石書店

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教員政策と国際協力

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本書は、大きな転換点に立つ途上国の教員を取り巻く政策状況について、各国の事例と国際協力の動向から深く考察する論点を洗い出し、今後の展望を読み解く視点を提供しようとするものである。本書は、国際教育開発を専門とする学生のみなさんのみならず、ボランティア等で途上国の教育に関わっている、または関わろうとしている方々、さらには日本で教員を目指す方たちにも、様々な有益な知見を提供し、同時に、国際社会が、途上国の教員の拡充と資質向上にどのように貢献していくべきかを問いかけるものとなっている。
 
執筆者は、比較教育学や国際教育開発学の領域で活躍する研究者と、国際機関や二国間援助機関において国際教育開発にかかわっている実務家からなり、それぞれの専門領域から途上国の教員政策というテーマについて考察を展開している。
 
まず、序章において、途上国の教師を取り巻く政策と実践の状況を見る際の軸として、教員供給、教員配置、教員の量と質の確保、教師教育、カリキュラム、ガバナンスという6つの視点を提示する。そして、歴史的な観点を踏まえ、近年のグローバルな政策動向を読み解いていく。
 
第I部「途上国の教員政策」では、東南アジア、南西アジア、サブサハラアフリカ、ラテンアメリカにおける国別事例をもとに、各国の教員政策と実践に関する現状と課題について、求められる専門職性や教師教育、教員評価のあり方の変化に着目しながら考察している。
 
第II部「教員政策に対する国際協力のアプローチ」では、主要な国際協力機関により教員政策分野においてどのような国際協力が進められており、いかなる課題があるのかについて論じている。具体的には、ユネスコ、ユニセフ、世界銀行、教育のためのグローバル・パートナーシップ、米国国際開発庁、国際協力機構 (JICA) による国際協力の取り組みについて紹介している。
 
「おわりに」では、本書で明らかにされたことを踏まえ、グローバル化が進展する世界における途上国の教員政策が抱える現代的課題を、グローバルとローカルの相互作用という視点から捉え直している。また、途上国の教員政策研究のさらなる進展に向けて、政策の獅子主体である教員自身の意味世界から、その教育行為を解明するというアプローチの重要性について論じている。
 
本書は、多様な途上国世界の教員政策をめぐる最新の動向とともに、それらに大きな影響を与えてきた主要な国際協力機関による教員政策分野の協力アプローチを描き出している。特に、途上国の教員政策が、グローバルな潮流の影響を色濃く受けつつも、各国のローカルな文脈によって異なる受容がなされている状況を多層的に描いている点が本書の特長である。
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 特任助教 荻巣 崇世 / 2019)

本の目次

序  章  途上国における教員政策の分析視角―グローバルとローカルの相互作用― (興津妙子)
 
第一部  途上国の教員政策
第一章  カンボジアの教員政策―変わる教職― (荻巣崇世)
第二章  タイの教師教育改革―混迷する政局下の革新的な取り組み― (牧貴 愛)
第三章  インドにおける学習者中心教育と教員養成をめぐる課題―求められる教員の学びの支援― (小原優貴)
第四章  マラウイの教員養成制度の改定にともなう課題 (川口 純・中和 渚)
第五章  南アフリカの教員の挑戦―民主的教育の実現― (小野由美子・近森憲助)
第六章  ザンビアの教員を取り巻く環境と教員政策の課題―教育の質の保証に向けた取り組み― (中井一芳・下田旭美・馬場卓也)
第七章  ボリビア多民族国における教師教育のゆくえ―Ley070による教育政策の転換の影響と課題― (石坂広樹)
 
第二部 教員政策に対する国際協力のアプローチ
第八章  ユネスコによる協力―SDG4教育の質の向上のために― (横関祐見子)
第九章  ユニセフによる協力―子どもの権利に基づくアプローチ― (服部浩幸)
第十章  世界銀行による協力 (深尾剛司・宮島智美)
第十一章  教育のためのグローバル・パートナーシップ (GPE) による協力―教育セクター計画強化を通じた教員支援― (金澤大介・保坂菜穂子)
第十二章  米国国際開発庁 (USAID) による協力―内容分析からみる教員の位置づけ― (マーク・ギンスバーグ)
第十三章  国際協力機構 (JICA) による協力―教員の授業実践の改善から子どもの学びの改善へ― (石原伸一)
 
おわりに
 

関連情報

文献紹介:
興津妙子 (『比較教育学研究』59号 2019年8月20日)
https://www.toshindo-pub.com/book/91584/
 
書評:
又地 淳 (独立行政法人国際協力機構 JICA) 評 (『国際開発研究』28号1巻、123頁 2019年6月)
https://www.jasid.org/uploads/ckfinder/files/JASID-28-1.pdf
 

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