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ドナルド・トランプの写真

書籍名

トランプ・リスク 米国一国主義と地球温暖化

著者名

有馬 純

判型など

208ページ

言語

日本語

発行年月日

2017年10月11日

ISBN コード

9784885554834

出版社

エネルギーフォーラム社

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トランプ・リスク

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2016年11月の米大統領選の結果は世界に衝撃を与えました。事前の予想に反し、ドナルド・トランプ氏が当選したからです。米国第一主義というトランプ大統領のスローガンは米国の外交政策に様々な影響を与えることになりましたが、地球温暖化はオバマ政権との違いが最も際立つ分野の一つです。
 
2015年に採択されたパリ協定は地球温暖化問題を自分の政治的レガシーとしたい米国のオバマ大統領と深刻化する大気汚染に取り組むと共に責任ある大国を演出したい中国の習近平政権の協力によって出来上がったといっても過言ではありません。他方、トランプ氏は選挙期間中、国内エネルギー生産拡大、エネルギーコストの引き下げを公約し、地球温暖化問題はでっち上げ、オバマ大統領の個人的コミットであるパリ協定はキャンセルすると公言してきました。トランプ政権の成立は地球温暖化をめぐる国際協力に対する米国の関与に非常に大きな影響を及ぼすことになります。
 
トランプ大統領は政権発足後、クリーンパワープランや自動車燃費規制等、オバマ大統領時代のエネルギー・環境政策を次々に変更していきます。そして2017年6月にパリ協定離脱を内外に表明するに到ります。トランプ大統領はスピーチの中で「パリ協定は米国の経済・雇用にネガティブな影響を与える。中国等の新興国が温室効果ガス排出の拡大を認められている中で米国の排出量を現状よりも削減することは不平等である」と述べました。2001年にブッシュ政権が京都議定書から離脱したのに続き、米国が国際合意を経た国際環境レジームから離脱するのはこれで二度目になります。ただトランプ政権部内でもパリ協定に残留するか離脱するかの意見対立がありました。本書ではトランプ政権に近い専門家、オバマ政権時代の政府関係者へのインタビュー等も交えつつ、トランプ政権部内でパリ協定をめぐり残留派、離脱派がどのような議論を展開したのか、米国のパリ協定離脱は国際的な温暖化防止努力にどのような影響を与えるのか等について考察をしています。更に米国のパリ協定離脱という大きな状況変化の中でわが国としてどのような対応を取るべきかについても論じました。
 
米国とパリ協定の関わりについては日本が議長を務めた2019年のG20プロセスにおいても大きな火種になりました。また2020年の米大統領選に向け、民主党の候補者たちはトランプ政権との違いを際立たせるため、温暖化問題に大きな力点を置いています。本書は温暖化をめぐる米国内の亀裂を理解するヒントを与えると考えます。

 

(紹介文執筆者: 公共政策大学院 教授 有馬 純 / 2020)

本の目次

第1章 パリ協定とは何か
第2章 トランプ陣営と共和党の選挙公約
第3章 トランプ政権のエネルギー・環境関連主要人事
第4章 トランプ政権発足後のエネルギー・環境政策の動き
第5章 パリ協定離脱・残留を巡る綱引き
第6章 トランプ大統領のパリ協定離脱表明とその波紋
第7章 トランプ政権の下で米国のエネルギーセクターはどうなるのか
第8章 トランプ政権が国際的な地球温暖化防止努力に及ぼす影響
第9章 日本はどう対応すべきなのか

関連情報

著者インタビュー:
トランプ・リスク――米国第一主義と地球温暖化 (新電力ネット 2017年10月11日)
https://pps-net.org/book/43445
 
守るのはゴルフ場だけ? トランプの温暖化政策 (日経ビジネス 2016年11月16日)
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/230270/111500036/?P=1
 
書評:
竹内 純子 (国際環境経済研究所理事・主席研究員) 評「エネ環境政策の“変化”捉える」 (電気新聞 2018年1月5日)
http://ieei.or.jp/2018/01/takeuchi180126/

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