東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に吹き出しのデザイン

書籍名

デザインの小骨話

著者名

山中 俊治

判型など

224ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2017年11月28日

ISBN コード

978-4-8222-5951-8

出版社

日経BP社

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デザインの小骨話

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筆者はデザイナーとして、また大学の研究者としての活動を通して、人と技術の関わり方について模索してきた。本書はその活動を通して培った思考方法とデザインのルールをベースに、最先端の科学技術との付き合い方、昆虫など生物の形と機能の関わり、日用品に潜む科学、フリーランスとしての生き方、製造技術とデザインなど、非常に幅の広い話題を、繊細なタッチで描かれたたくさんのスケッチとともに親しみやすい語り口で伝えるデザイン・エッセイである。
 
以下、本書まえがきより
私がツイッターを始めたのは2011年の春だった。教え子の結婚式で卒業生たちが盛り上がっているのを見て、うらやましかったからに過ぎない。しかしいつの間にかつぶやきの数は3万を超えた。他のSNSにはあまり深入りしていないので、ツイッター常習者と言える。
 
多くのSNSと同様に、このメディアもやがては消えてしまう刹那的なものだ。最初は私も、その時々の気持ちや、共有したい情報などをだらだらと綴っていた。しかしある頃から、一つの役割をこのメディアに委ねることにした。それは「学生たちに語ったこと」の記録である。
 
ツイッターを始める少し前から私は、慶應義塾大学の教員となり研究室を持つようになった。フリーのデザイナーとして、そこそこ知られるようになっていた私の元に集まった学生たちからは、否応無しに「この先生のようになりたい」という思いが伝わってきた。それに応えられるのかどうかはわからないが、ともかく私は、自分の思考方法や仕事の流儀を彼らに伝えようとした。いつも何を見ているのか、何を面白いと思うのか、どう観察し、何をもって発見したとみなすのか。さらには、アイデアの出し方や造形のスキル、いつ仕事をし、どう休みをとるのか、なぜその仕事に価値があると思うのか。そんなことを全部伝えてみようと思った。それは、かつて私自身が欲しかった「先生」だったからである。
 
漫画を描くことに明け暮れていた学生だったある日、私は工業デザインという仕事を知った。それは自分が大学で学んだ機械工学と漫画の両方を活かせる仕事のような気がした。しかし東京大学にはそれがどのような仕事なのかを教えてくれる先生はほとんどいなかった。たったひとつ「工業意匠」という授業を見つけ、その先生に教えてもらった本や技法書読み漁った。ともかくほとんど独学で、結局本当にデザインとデザイナーを学べたのは、運良く自動車会社のデザイン部に職を得てからだった。だから私は過去の自分への贈り物のつもりで、学生たちに語りかける。
 
ある時からツイッターは、その記録になった。授業や研究会、学生たちとの食事、立ち話などで伝えた内容を簡潔にまとめて、空いた時間に呟く。時には絵や写真も添える。やがて、伝え足りなかったことや、これから伝えたいことなども呟くようになった。そうした私の言葉は思ったよりも多くの人の共感を得たようだった、7年が経った今ではフォロワーも7万 (2020年には96,000) を超えている。
 
この書籍の大部分は、そうやって綴ってきた私のつぶやきからいくつかを拾い上げ、より詳しくより丁寧に語り直したものである。
 

(紹介文執筆者: 生産技術研究所 教授 山中 俊治 / 2020)

本の目次

第一章 生き物と人とその仕組み
第二章 日常の観察
第三章 つくる人の視界
第四章 スケッチの役目
第五章 仕事の作法
第六章 空へ

関連情報

著者連載コラム:
デザインの小骨話 (日経クロストレンド 2018年4月25日~)
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/skillup/00013/
 
著者インタビュー :
[音とデザイン 第3回] 美しさにはデザイナーの「生命観」が問われるコンセプター坂井直樹さん×デザインエンジニア山中俊治さん (わたしのオト 2020年5月1日)
https://www.j-cast.com/justmysound/2020/05/01384990.html
 
メディアアーティスト・市原えつこさんが、東京大学 生産技術研究所・山中俊治さんに聞く、「生命というテーマとの向き合い方」 (Qonversations.net 2018年11月2日)
https://qonversations.net/interview/2548/
 
著者プロフィール:
山中 俊治 (やまなか・しゅんじ)
 
東京大学生産技術研究所・東京大学大学院情報学環・教授。
1982年東京大学工学部産業機械工学科卒業後、日産自動車デザインセンター勤務。
1987年よりフリーのデザイナーとして独立。1991~94年まで東京大学客員助教授を務める。
1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。
2008~12年慶應義塾大学制作・メディア研究科教授。2013年4月より東京大学教授。
 
デザイナーとして腕時計から鉄道車両に至る幅広い工業製品をデザインする一方、技術者としてロボティクスや通信技術に関わる。詳細なユーザビリティテストを通じてSuicaをはじめとする日本全国のICカード改札機の標準UIをデザインした。大学では義足や感覚に訴えるロボットなど、人とものの新しい関係を研究している。
 
2004年毎日デザイン賞受賞、ドイツIF Good Design Award、グッドデザイン賞受賞多数。2010年「Tagtype Garage Kit」がニューヨーク近代美術館パーマネントコレクションに選定。近著に『デザインの骨格』(日経BP社、2011年)、『カーボン・アスリート 美しい義足に描く夢』(白水社、2012年) がある。
 

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