東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に図形とタイトル

書籍名

だれでもデザイン 未来をつくる教室

著者名

山中 俊治

判型など

360ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2021年11月27日

ISBN コード

9784255012551

出版社

朝日出版社

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だれでもデザイン

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本書は、プロダクトデザイナーである筆者が2017年に高校生に対して行った4日間の特別授業を書籍化したものである。関東の様々な地域から集まった高校生に与えられた目標は「ありふれたモノから学んで、新しいモノを作ること」。デザイナーとして様々なものづくりに関わってきた筆者が自ら実践してきた方法論のコアの部分の伝授であり、近年は大学の教員として学生たちに伝え続けて来たことでもある。
 
授業の構成は演習を主体とし、随所にレクチャーが挟まれる形で進められた。
 
1)言語としてのスケッチを学ぶ
スケッチは観察の方法であり、考えるための道具でもあり、人に伝えるための技術でもある。美術の授業というより科学と語学の授業に近い。「外形を描くのではなく構造を描く」ことなどが伝授される。重要なのは、「絵は才能で描くもの」という誤解を解くこと。
 
2)観察スケッチ
いくつかの日用品を分解し、スケッチし、製品を作った人がどうしてそのような形にしたのかを推理してもらう。同時にスケッチが非常に有用な「観察の方法」であることも学習する。
 
3)アイディエーション
「良いアイデアに出会う方法」の実践。グループワークとして、「空想の羽を広げる→簡単なスケッチを描く→わいわいとそれについて語り合う→スケッチを追加する→語り合う」というような作業サイクルを短時間で回す。特に、「なんか気になる」「なぜか惹かれる」というようなウィークシグナルを大切にする作法を学習する。
 
4)プロトタイピング
出てきたアイデアを段ボールや針金などの簡単な材料で形にする。デザイナーたちがLo-Fiプロトタイピングと呼んでいる方法の実践である。「手を動かしながら考える」ことを学ぶ。
 
5)プレゼンテーション
アイデアを実現するためには多くの人を説得しなければなりない。論理的な説明も重要だが、印象的な伝え方も重要なスキルとなる。
 
このWSの特徴は明快なゴールがないことである。「既存のフレームに囚われず、好奇心のままに探索を進め、想像の羽を広げること」はデザインに限らず創造的なプロセスの根幹である。
 
講義パートでは、デザインという言葉の歴史的な意味の変遷を踏まえた現代的なデザインの定義、芸術と科学とデザインの関係、デザインと製造技術の関わりなどが語られる。加えて筆者がデザインした様々なプロダクトのデザインプロセスが詳細に紹介されている。Suica自動改札機を実用化に導いた実験、グッドデザイン金賞を受賞した大根おろしの歯並びの工夫、震災後の福島の子どもたちの内部被曝測定のために急遽開発された乳幼児専用ホールボディカウンター、生き物っぽい動きを抽出した不思議なロボット、パラリンピックアスリートのための高性能で美しい義足の開発などの事例から、常に先端技術と人の関わりをデザインしてきた筆者の方法論を俯瞰することができる。
 
本書は、一見デザインの入門書のように見えるが、より普遍的な「アイデアで未来を作る」方法をわかりやすく伝えるものである。
 

(紹介文執筆者: 生産技術研究所 教授 / 特別教授 山中 俊治 / 2023)

本の目次

はじめに 

1章 デザインって、なに?
2章 言葉としてのスケッチ
3章 「っぽい」リアルさを描く
4章 分解と観察スケッチで「作り方」をたどる
5章 アイデアのヒントは観察の中に、他人の頭の中に
6章 使いやすいものを作る
7章 なにを、どうして作るのか
8章 形にして、共感を集めて、アイデアを育てる
おわりに
 

関連情報

著者インタビュー:
山中俊治が語る、「天才じゃない自分」 (『美術手帖』 2023年2月27日)
https://bijutsutecho.com/magazine/interview/26582
 
JAPAN HOUSE|INTERVIEW|Shunji Yamanaka (English) (JAPAN HOUSE | YouTube  2019年3月28日)
https://www.youtube.com/watch?v=P8-0uM7qBjw&t=7s
 
書評:
すずきたけし 評「アイデアは「思いつく」のではなく「思い出す」もの。JR東日本の改札機の課題をデザインで解決した著者が教える、物づくりの根幹」 (ダ・ヴィンチweb 2022年4月11日)
https://ddnavi.com/review/967252/a/

森山和道 評「世界の解像度を上げてくれる好著」 (『週刊読書人』 2022年2月11日)
https://dokushojin.stores.jp/

今週の本棚: 渡邊十絲子 (詩人) 評 (『毎日新聞』東京朝刊2022年1月22日)
https://mainichi.jp/articles/20220122/ddm/015/070/003000c
 
書籍紹介:
新刊めったくたガイド: すずきたけし「かわりばんこ」に気づかせてくれるグラフィック・メディスン (『本の雑誌』4月花筏どんぶら号 No.466 2022年4月)
https://www.webdoku.jp/honshi/2022/4-220303152432.html
 
「だれでもデザイン」 山中俊治さん 小さな幸せが社会変える 新著の余録 (『福井新聞D刊』 2022年4月10日)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1529140
 
[新著の余録]■だれでもデザイン 山中俊治さん 小さな幸せ 変革の一歩に (『沖縄タイムス』 2022年3月5日)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/920533
 
今月のブレーン編集部おすすめの本 (『ブレーン』 2022年2月号)
https://mag.sendenkaigi.com/brain/202202/book-select/023229.php
 
デザインエンジニア・山中俊治による新刊書 (『AXIS』web magazine 2021年11月30日)
https://www.axismag.jp/posts/2021/11/432222.html
 
イベント:
NEW! 23SDE ジュニア工学教育プログラム: デザインx工学 セミナー「絵を描き、作りながら考える未来」 (メタバース工学部 2023年7月2日)
https://www.meta-school.t.u-tokyo.ac.jp/junior/23sde/
 
『だれでもデザイン』刊行記念トークイベント: 山中俊治×寄藤文平 (青山ブックセンター 2022年1月11日)
https://mag.tecture.jp/event/20220111-49462/
 

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