Collection: Le cinéma des poètes Les poètes spatialistes et le cinéma (空間主義の詩人たちと映画)
111ページ、11.5x17.5cm
フランス語
2019年2月
9782376280460
Nouvelles éditions Place
ピエール・ガルニエ (1928‐2014) とイルゼ・ガルニエ (1927‐2020) は1960年代初めころに、「新しいヴィジュアル・フォニク (音声) 詩」別名「空間詩 (スパシアリスム)」の創設者として知られている。空間詩は紙の1ページの空間の中で、言葉をオブジェと見なすものである。空間詩は主としてヴィジュアル・ポエトリー (視覚詩) と音声詩の分野で知られているが、その映画への貢献も同様に興味深いものがある。
この分野でピエールとイルゼの制作したものは、映画のテキスト、シナリオ、ビデオの企画、カートゥーン、それに「映画詩」など大変豊かであった。しかしながらこの作品群は長い間、無視されてきた。一つには彼らは大衆に向けて投影される映画を実際には作らなかったし、もう一つには彼らが脳裏に描いた映画は物語な映画ではなく、実験的な映画だったからである。つまりその映画とは、スクリーンに投影されても、音声詩が語られるときもあれば無音のときもある、フィルム化された詩作品なのである。
映画のために空間詩の詩人たちが創作した作品は、本書の中で初めて解説され、分析されている。本書は4章からなるが、その中で四つの側面が扱われる。1章は何故、詩人が映画に向かったのか。空間詩の詩人が映画に関心を抱いたのは、彼らが詩作品を映像の実践と考えたことで説明される。つまり動き、光、空間、媒体が、彼らにとっては詩を読み解くのと同じように、作品にとって本質的と思われたのである。2章は詩人がどのように映画を、実際の芝居の中で使ったかを解説している。彼らの芝居の脚本は、上演するときに舞台上のスクリーンの上に映画、もしくは画像を投影するものである。3、4章では、二人の詩人が映画のためにどのように創作したか、むしろ広い意味で、アニメのイメージを創作したかを分析している。ピエール・ガルニエはビデオとカートゥーンのための作品を制作した。その作品は素早くめくることで読者に動きを与えようとした一群の作品と、詩人の蔵書の中で発見された未完成のデッサンである。イルゼ・ガルニエは独特な映画詩を制作した。その作品は映画を使ったものとして、空間詩の詩人の中でも最も野心的な側面を持っている。彼女は二冊のアーティストブックを制作した。その中で映画に撮影されるべきデッサンや詩や写真が、映画監督に向けられたコメントと共に書かれている。この二冊のアーティストブックをもとに二人の芸術家によって一本のビデオが制作されたが、ただしそれにイルゼ・ガルニエは参加していない。https://vimeo.com/183284925
本書は彼らの作品のまったく知られていない側面を分析し、空間詩を知ってもらうだけでなく、映画とアヴァンギャルドの歴史に貢献するものである。
(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 准教授 マリアンヌ・シモン=及川 / 2021)
本の目次
映画の方へ
映画とともに、空間劇の美学
映画、ビデオ、カートゥーンのための創造
イルゼ・ガルニエの映画・詩
結論
関連情報
Jan Baetens “Pierre et Ilse Garnier, poètes-spatialistes ?” (Ubique and Unique Book Pt. 1 vol.20, No.1 2019年4月3日)
http://www.imageandnarrative.be/index.php/imagenarrative/article/view/2085
Marie Martin “Le cinéma projeté des poètes spatialistes” (AVRIL volume 20, NUMÉRO 4 2019年)
https://www.fabula.org/acta/document12138.php