東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

船や鳥居、厳島神社の鳥居、海中などの写真

書籍名

令和元年 海洋教育指導資料 学校における海の学びガイドブック 小・中学校編

判型など

152ページ、A4判

言語

日本語

発行年月日

2019年7月

ISBN コード

978-4-477-03171-2

出版社

大日本図書

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

学校における海の学びガイドブック

英語版ページ指定

英語ページを見る

グローバル化が進展し、AIやIoTを含めた急速な技術革新の時代において、子どもたちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して問題・課題を解決したり、多様な情報を活用できる知識へと秩序づけ、再構成したりして自らの目的を見いだし豊かに生きていくことが求められている。このような新しい時代に対応するために、教育課程の基準となる学習指導要領は平成29年に改訂され、令和2年度から全面実施されている。本書は新しい時代の「海洋教育」について、学習指導要領に準拠しつつ、学校教育の中でどのように考え、どのような形で授業を構想し実践していけばいいのかについて、具体的なモデルを提示することを目的としている。

第1章においては、海洋教育の理念について「公共財 (公共善)」と「慎慮 (フミリタス)」をキー概念として教育学的に読み解き、持続可能な社会の構築との関係性について提案するとともに、SDGsと海洋教育の関係性について考え、”Ocean Literacy for All”(UNESCO,2017) に示された7つの基本原則 (The essential principles of Ocean Literacy) について解説を行った。
 
第2章においては、学習指導要領についてその趣旨の理解を深めるとともに、「主体的、対話的で深い学び」を重視した授業改善について考え、実際の授業を構成する必須の活動 (言語活動、体験活動) について考察を加え、海洋教育を考える基礎の充実を図った。
 
第3章においては、今回の改訂において大きな柱となるカリキュラム・マネジメントについて概説し、東京大学海洋教育センターで提案している海洋教育の3つの柱、すなわち「生命 (Life)」、「環境 (Environment)」、「安全 (Security)」に沿って海洋教育カリキュラム・マネジメントについて考察を行った。
 
第4章及び第5章は、それぞれ小学校及び中学校における具体的な海洋教育カリキュラムのモデルプランを示したものであり、本書のボディーとなるものである。海洋教育に関して、このような形で統一的にモデルカリキュラムが示されたのは、本書が初めての試みということができる。各章は「教科」編と「総合的な学習の時間」編とで構成されており、小学校で全8モデルプラン、中学校で全6モデルプランが掲載されている。各モデルプランは、「単元の目標」、「単元の概要」、「単元指導計画」、「学習の展開」を柱としつつ、「海洋教育としての視点」や「教科等との関連」について明記し、学習指導の広がりと連携に配慮した。また、プランの最後に「学習を通して期待される児童/生徒の変容」という項目を設け、授業により変容した具体的な子どもの姿を示した。さらに、全てのモデルプランに「本モデルのポイント」として「海洋教育」という視点からモデルプランの価値付けを行い、従来型の教育と海洋教育の接続がスムースに行われるように配慮した。
 
四方を海で囲まれている我が国にとって、「海洋」は地理的にも歴史的にも、そして文化的にも極めて重要な学習の対象となりえるものである。海洋基本法が制定されて未だ10年余りに過ぎないが、新しい令和の時代の海洋教育に、本書が新しい「航路」を示すことができればと考えている。

 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 特任教授 日置 光久 / 2020)

本の目次

第1章 海洋教育の理念と持続可能な社会の構築
第2章 学習指導要領が目指すものと海洋教育
第3章 カリキュラム・マネジメントと海洋教育
第4章 小学校における海洋教育 (海洋教育のモデルプラン 教科3例、総合5例)
第5章 中学校における海洋教育 (海洋教育のモデルプラン 教科3例、総合3例)
資料 (海洋基本法、海洋基本計画)

このページを読んだ人は、こんなページも見ています