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4匹のキツネザルのイラスト

書籍名

ゲームAIと深層学習 ニューロ進化と人間性

著者名

伊庭 斉志

判型など

224ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2018年8月25日

ISBN コード

978-4-274-22252-8

出版社

オーム社

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ゲームAIと深層学習

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本書は、ゲームとパズルのAIに関する解説書です。その基礎理論から最新の深層学習・強化学習・進化計算によるアプローチまでを具体例をあげて分かりやすく説明します。また単に解法のみではなく、AIに関しての様々な話題、歴史的な背景、数学的な話題なども含めています。それはゲームを研究することがAIにおける多様な課題を考察することに関連するからです。実際にゲームAIの研究は単にゲームのみではなく、最適化理論やシステム工学などの多くの問題の解決につながっています。
 
一章で紹介しますが、筆者はSciSys社のチェスマシン・カスパロフTravel Mate II (1986年製) を学生時代に購入しました。今にして思えば、ゲームAIの商品化の先駆けでした。このマシンは現在も奇跡的に動作しており、ときどき子供とチェスを楽しんでいます。私にとってはかなり強く、レベルを上げると勝つことがまだできていません。このマシンの説明書の最後には、カスパロフ本人からの以下の言葉が添えられています。
 
  「どうかカスパロフ型チェス・コンピュータを心ゆくまで楽しんでください。
   もしかすると、いつの日かチェス盤をはさんで私と戦えるかもしれませんよ!」
 
残念ながら筆者自身にはこの可能性はないでしょうが、読者が本書を参考に拡張してチェレンジして下されば幸いです。ぜひとも、他のゲームやパズルにおいてより強力なものを目指してください。
 
本書は、人工知能の最新の話題として、ゲームAIをメインに、深層学習・ディープラーニング、機械学習、メタヒューリスティックスについて解説します。ディープラーニングや機械学習を進化計算・メタヒューリスティックスと統合した手法はGoogleのDeepMindなどで盛んに研究され、従来のCNNを拡張した新しいフレームワークとして注目されつつあります。とくにゲームAIについては、アルファ碁や将棋のプログラムが有名です。本書では最近のゲームAI手法をさまざまな実例題で解説するとともに、実際にゲームAIを構築できるような技法の習得を目指します。また、一般ゲームAIや人間らしいゲームAIなどの最新の話題についても説明します。
 
さらに、ゲームAIやメタヒューリスティックス、進化計算についてデモンストレーションとなるサンプルプログラムを提供し、読者の理解を助けるようになっています。ただし初歩から分かりやすく説明することを目指しているため、これらが必ずしも最新のデータ、最強アルゴリズム、チャンピョン記録を扱っているとは限りません。それよりも一般的なAIとして役立つ技法の説明に重点をおきました。おそらく、解決のためのより効率的なヒューリスティックスは、筆者の気づかないところにも多数あるかと思われます。読者はこれらの拡張をみずから試して、自分なりのより賢いゲームAIの作成に挑戦してください。

 

(紹介文執筆者: 情報理工学系研究科 教授 伊庭 斉志 / 2020)

本の目次

第1章 パズルとゲームのAI今昔物語
1.1 AIの予言は的中したのか?
1.2 ゲームAIの歴史と背景
1.3 ゲームAIは人間から楽しみを奪うのか?
1.4 ゲームAIの意義
1.5 ゲームの深遠さと先手必勝の定理
 
第2章 パズルを解くAI
2.1 木の探索
2.2 倉庫番
2.3 ナンバーリンク
2.4 箱入り娘
2.5 ペグソリティア
2.6 数独を数学してみる
 
第3章 制約従属のパズルと非単調な推理
3.1 縦型探索とバックトラック
3.2 大数学者が間違えたチェスのパズル
3.3 線画の解釈とだまし絵
3.4 ATMSと4色問題
3.5 チェスパズルを解こう
3.6 クヌースのヒップパズルとビットボード
 
第4章 ゲームを解くAI
4.1 三目並べと木
4.2 ゲームの木の探索
4.3 オセロとFool's mate
4.4 Aマリオ
4.5 モンテカルロ木探索
4.6 立体4目並べ
4.7 オセロのモンテカルロ法とネガスカウト法
4.8 賭けにどうやって勝つか?
4.9 ゴーストをやっつけよう:AIパックマン
 
第5章 学習・進化とゲームAI
5.1 アルファ碁の衝撃
5.2 DQNとアーケードゲーム
5.3 進化するマリオ
5.4 ニューロ進化
5.5 パックマンのニューロ進化
5.6 好奇心のあるマリオ
 
第6章 ゲームAIと人間らしさ
6.1 人間らしいAIはなぜ必要か?
6.2 一般ゲームとは?
6.3 チューリングテストと最も人間らしいAI
6.4 「 人間らしさ」を用いない人間らしいゲームAI
6.5 「 人間らしさ」を用いた人間らしいゲームAI
 

関連情報

本書で紹介したデモ・ソフトウェアの紹介ページ:
http://www.iba.t.u-tokyo.ac.jp/support/index.html
 
書籍紹介:
ゲームで用いられる人工知能(AI)はどうプログラミングされている?設計に迫る (Kredo Blog 2019年8月14日)
https://kredo.jp/media/game-ai-design/

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