東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

ライトブルー、エメラルドグリーン、白の表紙

書籍名

弘文堂ケースブックシリーズ ケースブック租税法 [第6版]

著者名

金子 宏、佐藤 英明、 増井 良啓、 渋谷 雅弘

判型など

666ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2023年9月21日

ISBN コード

978-4-335-30521-4

出版社

弘文堂

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

ケースブック租税法 (第6版)

その他

2017年10月第5版発売 (更新2023年9月)

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この書物は、法科大学院の教材として編集した租税法のケースブックです。法律家を志す人にとって特に重要である基礎理論、所得税、法人税、相続・贈与税の4分野をカバーしています。編集にあたっては、具体的な事実に即して法の適用と判例法の形成について理解することができるように工夫しています。すなわち、重要な判例や税制調査会の答申などを主な素材にして、設問形式を含んだ詳しいNote & Questionを付しています。読者がこれらに取り組むことによって、基礎的な理解から一歩進んだ学習まで、法律家として必要な力を身につける手助けになるように作りこんであります。
 
本書の構想は、1980年代のはじめにさかのぼります。当時、編著者のひとりである金子宏教授が、ケースブックの編集準備をはじめました。ぜひともケース・メソッドで講義をしたい、とずっと考えていたからです。ここにケース・メソッドというのは、米国のロー・スクールで開発された授業のやり方です。学生が毎回一定の頁まで予習し、教室ではそれを前提として教授と学生の間で対話と討論を行います。その際にケース (個別の判例) を素材とすることから、ケース・メソッドと呼ばれています。そして、ケース・メソッドによる授業を実施するには、充実したケースブックが不可欠になります。
 
21世紀初頭の司法制度改革および法科大学院の発足に伴い、租税法の主要分野をカバーするケースブックの必要性はますます高まりました。こういった背景のもとに、本書が刊行されたわけです。共編著者の佐藤英明教授、渋谷雅弘教授、および増井良啓は、いずれも東京大学で金子教授の教えを受け、それぞれに1990年代初頭にハーバード・ロー・スクールの授業を生で体験しています。それぞれの得意領域を生かしつつ、その後の授業方法の進化や日本の文脈にそくした教材選択を意識し、力をあわせて、本書の初版を2004年に刊行することができました。と同時に、未公刊ながら、本書を教材として用いる全国の同僚のために教師用マニュアル (teaching manual) を作成しました。マニュアルには金子教授を上記3名で囲む座談会が付されており、いま読みなおしても熱気にあふれています。
 
本書はその後版を重ね、2017年には第5版となりました。以上に説明したように、本書の基本的性格は学習用教材です。しかし、学術的見地からみても、数年ごとの改訂がその時々の租税法の形成を正確に反映しています。したがって、本書の項目建てや設問、参考文献などの変遷を見るだけで、この分野で法がどのように展開してきたかがわかります。専門的に法を学ぶ前の1年生、2年生のみなさんも、ぜひいちど、本書を図書館などで手に取ってみてください。どういう事件が法を形成してきたか、生の素材から新鮮な感触を得られることでしょう。

 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 増井 良啓 / 2021)

本の目次

序説 租税法の学習に当たって (金子 宏)
 
第1編 租税法の基礎理論 (金子 宏・佐藤英明)
 第1章 租税法律主義
 第2章 租税公平主義
 第3章 租税法の法源
 第4章 租税法の解釈と適用
 
第2編 所得税 (佐藤英明)
 第1章 所得税の基礎
 第2章 所得分類
 第3章 所得の計算と年度帰属
 第4章 所得税額の計算
 第5章 源泉徴収

第3編 法人税 (増井良啓)
 第1章 法人税の基礎
 第2章 法人所得の意義と計算
 第3章 法人税額の計算
 第4章 同族会社の特例
 
第4編 相続税・贈与税 (渋谷雅弘)
 序 章 相続税の意義と類型
 第1章 相続税
 第2章 贈与税
 第3章 税負担の不当な減少の防止
 第4章 財産の評価
 第5章 確定・徴収手続
[判例索引]
 

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