東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

黄緑色の表紙

書籍名

新・企業の研究者をめざす皆さんへ

著者名

丸山 宏

判型など

232ページ

言語

日本語

発行年月日

2019年12月21日

ISBN コード

9784764906068

出版社

近代科学社

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

新・企業の研究者をめざす皆さんへ

英語版ページ指定

英語ページを見る

大学では多くのことを学ぶが、その多くは数学・物理・経済・法律など対象となる分野の知識である。それらの知識をどのようなプロセスで生み出すのか、あるいはそれらを実社会の問題にどのように応用していくか、というやり方については明示的に学ばないことが多い。その結果、社会に出てから仕事のやり方について、とまどうことになる。特に企業に勤める場合には、上司や同僚、社内の様々な部署、顧客やサプライヤなど多くの利害関係者と調整しながら仕事を進めることになるが、それらはなかなか大学では教えてもらえない。
 
職種が研究者であってもそれは同じだ。大学院では、教授や先輩の指導を受けながら、時には見様見真似で研究のやり方をある程度身につけることはできる。しかし、企業での研究は大学の研究とは異なり、研究成果が明確に企業の価値につながることが求められる。そもそも自分が働く企業において、どのような研究が求められれているのだろうか。研究成果が出る数年後には、どのようなビジネスが行われているだろうか。営業部門や、開発部門、生産部門、品質管理部門の人たちとどのように関わっていけばよいのだろうか。
 
大学では学部4年、大学院へ行けば6年、博士課程まで入れれば9年程度勉強することになる。しかし、その後の社会人生活は最低でも30年、長ければ40年以上だ。その間、自分はどのように成長していけばよいのか。キャリアについてどのように考えればよいのだろうか。順調にいけば管理職になるだろう。リーダーになるとはどういうことだろうか。良いリーダーになるために学ぶべきことはなんだろうか。
 
いずれ皆さんは社会に出て、以上のようなことを実地に学んでいくことになる。私自身、IBM、キヤノン、統計数理研究所、Preferred Networksという様々な組織で、課題にぶつかる度に自分で考え、多くの失敗をしながら学んできた。どうしてそういうことを学校で教えてもらえなかったのだろう、と疑問に思ったことも、1回や2回ではない。
 
本書は、企業の研究者としてキャリアを歩もうと思う皆さんに、私の苦い経験から得た知見を伝えたいと思って執筆した。将来、仕事の中で「あれ、こんな状況はいつか本で読んだことがあるな」と思い出すことがきっとあるだろうと思う。そういうときにまた取り出して眺めてみてほしい。その意味では、既に社会人になって、企業の研究者として活躍している方々にも、本書は役立つだろう。さらにいえば、コミュニケーションやリーダーシップの項目は、研究者に限らず社会人として知っていたい内容を含んでいる。この本に書かれている知見が、多くの人に伝わると幸いである。
 

(紹介文執筆者: 工学系研究科 特任教授 丸山 宏 / 2021)

本の目次

第1章 Research That Matters
第2章 研究の営み
 2.1 良い問題を選ぶ
 2.2 問題を解く
 2.3 研究を進める
 2.4 研究の出口
第3章 コミュニケーション
 3.1 論文を書く
 3.2 プレゼンテーションする
 3.3 議論する
 3.4 交渉する
 3.5 異文化コミュニケーション
第4章 研究者のキャリア
 4.1 研究分野を変える
 4.2 職種を変える
 4.3 勤務先を変える
 4.4 学生時代に学んでおくこと
 4.5 自分の市場価値を高める
 4.6 人生とは何かを考える
 4.7「それも1つの研究者人生」
第5章 リーダーシップについて
 5.1 意思決定する
 5.2 人を動かす
 5.3 人を評価する
 5.4 不確実性に対応する
 5.5 スタッフの役割
第6章 知財・契約・インテグリティ
 6.1 知的財産権
 6.2 契約
 6.3 インテグリティ
第7章 私たちの研究開発はどこへ向かうか

関連情報

著者コラム:
レクチャーシリーズ:つながりが創発するイノベーション [第3回]「それも一つの研究者人生」 (『人工知能』30巻5号 2015年9月)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/30/5/30_686/_pdf/-char/ja
 
著者インタビュー:
進路指導に役立つ最新DATA & ノウハウ:理系「研究職」のキャリアとなるまでのステップ (『Career Guidance』vol.402 別冊付録 2014年)
https://souken.shingakunet.com/publication/.assets/2014_furoku402_2.pdf
https://souken.shingakunet.com/publication/careerguidance/vol402201405-ce5a.html
 
Research Front Line No.122 研究室訪問 (大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 2011年4月)
https://www.ism.ac.jp/ism_info_j/labo/visit/122-2.html

このページを読んだ人は、こんなページも見ています