東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

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書籍名

大学4年間の経営学がマンガでざっと学べる 学び直しの決定版

著者名

高橋 伸夫、 うだ ひろえ

判型など

240ページ、A5判、単行本

言語

日本語

発行年月日

2018年9月29日

ISBN コード

9784046024183

出版社

KADOKAWA

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大学4年間の経営学がマンガでざっと学べる

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高橋伸夫著『大学4年間の経営学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA, 2016年) がよく売れたので、その勢いに乗って、図解版 (2017年) と角川文庫版 (2019年) が出版され、海外でも、韓国で韓国語版 (2017年)、台湾で中国語版 (2018年) が出版された。その流れの中で、ついにはマンガ化もされたというわけだが……。
 
色々なマンガ化の仕方があると思うが、この本の場合、ご夫婦でカフェを5年ほど経営していたこともある漫画家のうだひろえさんが、今はファイナンシャル・プランナー (FP) をやっているご主人 (カフェ経営の前はサラリーマンだった) と二人仲良くマンガの登場人物となり (要するに実在の人物) 、お二人の楽しい会話の中に、私が「高橋伸夫・東京大学教授」として突然割り込んで、あーだこーだと経営学の解説を始める……というスタイルのマンガ。なので、劇中にはキャラクター化されたかなり個性的な「私」が登場する。
 
うだひろえさんとはお会いしたこともあり、その場で、紙にサラサラと私をキャラクター化していたので、ああ、こんな感じで登場するんだなぁと思ってはいたものの、いざマンガになってみると、言動も含めて、かなり個性的で強烈なキャラ。自分はこんな風に見えているんだと驚き、マンガだからしょうがないとは思いつつ、結局、出版前にゲラを校正している段階で、かなり引いてしまった。そして、出版される頃には、この本のことは自分の中で半分なかったことになっていた。
 
というわけで、ほとんど誰にも献本せず、出版されてからしばらくは、本を開いて見ることもなかったのだが、あるとき、他大学の知り合いの経営学の先生から (献本もしていないのに)、このマンガはいい、学生に薦めたけど、学生の評判もいいというメールをいただいた。そう言われると人間は現金なもので、半ば封印していたこのマンガ版を取り出して、改めて読み始めた。確かにスラスラと読み進める。「高橋伸夫・東京大学教授」も自分だと思わなければ (?)、喜怒哀楽がはっきりしていて、なかなか愛すべき面白い先生だなぁと思えてくるから不思議である。あっという間に読み終えてしまった。
 
ただし、チマチマと校正しているときには気が付かなかったが、動画と同じで、マンガはスラスラと読める分だけ、立ち止まって考えることをしなくなるという欠点があることも分かった。ストーリーが分かるだけではなく、書かれている内容をきちんと理解しようと思ったら、同じ箇所を何度か読み返すとか、少し時間をおいて読み直すとかいう作法も必要になるのかもしれない。しかし逆に言えば、教科書を読むといつもどこか難解な箇所に引っかかってしまい、1冊を完読できたためしがないという悩みをもつ人にとっては、このマンガは朗報だと思う。マンガ化すれば理解しやすくなるというほど甘くはないが、とにかく1冊を読み通せるようにはなる。細部の理解はそれからでも遅くはない。その意味で、今や私にマンガの可能性を教えてくれた挑戦的な1冊となった。大学の講義や教科書で挫折しかけている人には、ぜひお薦めしたい。

 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 高橋 伸夫 / 2021)

本の目次

Part 1 組織のパフォーマンスを研究する「経営組織論」って?

・会社の組織ってどんなカタチ?(職能別組織と管理過程論)
・上司は2人いたほうがよい?(マトリックス組織と命令系統の一元化)
・「やる気」ってどこからくるの?(モチベーションと期待理論)etc...

Part 2 事業の進むべき道を探る「経営戦略論」って?

・競争に勝つための基本的な考え方とは?(ポーターの基本3戦略)
・成功の方程式で勝利する確率を高めるためには?(ドミナント・ロジックの活用)
・売れるものをつくり、良く売れる戦略を立てるには?(マーケティングのSTPと4P)etc...

Part 3 技術の可能性を引き出す「技術経営論」って?

・利益の確保と効率化を併走させるには?(損益分岐点とインダストリアル・エンジニアリング)
・ハズれにくい製品イノベーションに必要なことは?(ユーザー・イノベーションとオープン・イノベーション)
・組織にオープンな意識を広めていくには?(ゲートキーパーとNIH症候群)  etc...

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