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書籍名

African Potentials African Politics of Survival Extraversion and Informality in the Contemporary World

著者名

Mitsugi Endo, Michael Neocosmos and Ato Kwamena Onoma (編集)

判型など

308ページ、ペーパーバック

言語

英語

発行年月日

2021年

ISBN コード

9789956551682

出版社

Langaa RPCIG

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

African Politics of Survival

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本書籍は、5年間にわたる日本とアフリカ研究者の共同研究として行われた第二期の「アフリカ潜在力」研究の成果として刊行された五巻本の一巻である。紹介者の遠藤貢は、本プロジェクトの「国家・市民」班班長として、本論集の編集作業に当たった。本巻の主要なテーマは2つある。一つは外向性 (あるいは外翻) と訳されることがあるExtraversionと言う考え方を「アフリカ潜在力」の一つの可能性として取り扱うことである。この概念はアフリカ政治研究では一定の認知がなされており、アフリカ社会 (特にそのエリート) が (多くの場合不平等な) 外的な環境から資源を動員する戦略としてとらえており、その資源を自らの政治的基盤の構築や経済的資源に転化することに、その意味を見いだしている。ある種の従属的な環境の中にあっても、アフリカの主体性を見いだそうとする点に、この概念の特徴がある。例えば、近年の研究では、国際刑事裁判所 (ICC) に関して、検事部を併設するICCが、審理対象となっている被告に関する調査を行う際、政権側に有利な形で、調査実施の方向性を「誘導」可能であり、Extraversionを巧みに操っている事例と位置づけられている。第二にInformalityであり、これも近年の研究において、Formalとされる制度との間の緊張関係 (対立と協調) という観点から、アフリカにおける政治のあり方を特徴付ける重要な視座として評価されている。これまではアフリカにおける政治研究では、Informalityに中心的な関心が持たれてきたが、この視座を確認するとともに、再考を行うことを目指すものである。こうした二つの研究の視座を考慮した分析が展開されている。加えて、本論集では、全五巻にける最初の感という位置づけが与えられたことも踏まえ、現下で世界的な対応課題となっているCovid-19へのアフリカの対応の諸相を新たなテーマとして位置づけ、南アフリカや西アフリカなどの事例を用いて、最新の情報や分析視角を用いた分析を行った章を組み入れた。さらに、最終章においては、5年間にわたって検討してきた「アフリカ潜在力」の新たな概念化の可能性についての考察を行った章を設定している。筆者のネオコスモス教授は、この5年の研究プロジェクトが行われる前の第一期より関わってくれた研究者であり、「アフリカ潜在力」という視点の重要性を日本人研究者と共有するとともに、様々な新規の視座を提供してきた研究者である。ここでは、「アフリカ潜在力」が、決して特異な視座ではなく人間社会の普遍性を開く可能性を提供する新たな視座になり得ることを提言している。「アフリカ潜在力」研究は、アフリカという地域の研究にとどまらない人類社会の可能性を模索する知的活動である一面を示す意味を有している。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 遠藤 貢 / 2021)

本の目次

Series Preface: African Potentials for Convivial World-Making
Motoji Matsuda
Introduction – African Politics of Survival: Extraversion and Informality in the Contemporary World
Mitsugi Endo, Ato Kwamena Onoma and Michael Neocosmos
1. A Legitimate Proxy? The United Nations Operation in Côte d'Ivoire from the Perspective of African Regional Organizations
Akira Sato
2. Overcoming the Dichotomy between Africa and the West: Norms and Measures for Arms Transfers to Non-State Actors (NSAs)
Tamara Enomoto
3. Competing Local Knowledges of an Indigenous Plant: The Social Construction of Legitimate Rooibos Use in Post-Apartheid South Africa
Toshihiro Abe
4. The Working Collapsed State as a Resilient Reaction in the Contemporary World: The Case of Somalia
Mitsugi Endo
5. When African Potentials Fail to Work: The Background to Recent Land Conflicts in Africa
Shinichi Takeuchi
6. ‘Peace from Below’ as an African Potential: Wars and Peace in South Sudan
Eisei Kurimoto
7. Institutional Bricolage in Responses to Public Health Crises in South Africa: Between Path Dependency and Flexibility
Kumiko Makino
8. Kusina Amai Hakuendwe: Diasporan Zimbabweans, COVID-19 and Nomadic Global Citizenship
Artwell Nhemachena
9. Epidemics, Negotiability and Futurity in Africa and Beyond
Ato Kwamena Onoma
10. African Potentials and the Thought of Universal Humanity: Latent Universalism in African Popular Cultures
Michael Neocosmos
Index
 

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