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球体に座った宇宙服の人の白黒写真

書籍名

ブルーバックス 科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点

著者名

佐倉 統

判型など

272ページ、新書判

言語

日本語

発行年月日

2020年12月17日

ISBN コード

978-4-06-522142-6

出版社

講談社

出版社URL

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科学とはなにか

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この文章を書いているのは2022年1月、新型コロナウイルス感染症が流行している真っ最中。こういうときは、専門家の科学的な判断がぼくたちの日常生活に直接大きな影響を与えます。そして、そういった専門家の判断や呼びかけに対して、しばしば一般の人たちから批判や不満が出てきます。
 
飲食店の営業時間を短縮せよというのはその店の経営者にとっては死活問題ですから、反感をもたれるのはわかりますが、ワクチンの接種やマスクの着用すら嫌だ、絶対したくない、というのは、ぼくにはなんとも理解しがたいです。
 
似たようなことは、コロナに限らず今までにもよく起こっていました。2011年には福島第一原発事故後の放射線リスクについて、1990年代には遺伝子組換え食品の安全性をめぐって、専門家の見解と一般社会の受け止め方の間に大きな齟齬がありました。
 
なぜ、こういうことが起きるのか? 新発見をした科学者は賞賛されるのに、生活場面に関わる科学者が批判されるのはなぜなのか? せっかくの科学的な知見をもっと日常生活に有効に使えるようにするにはどうしたらいいのか? ──これらの疑問について、科学的な知識と日常生活で必要な知識は、同じ「知識」といっても性質がずいぶん違うのだということを基本概念として説明したのがこの本です。
 
ざっくり三部構成になっていて、そもそも科学的知識はどういう特徴を持っているのか、そのような知識を生産する科学の方法とはどういうものなのかという哲学パートが第1部。続く第2部は、なんでそのような違いが生じているのか、その歴史的背景を説明した方が分かりやすいだろうということで科学史パート。そしてそのような違いを乗り越えるためにはどうしたらいいか、社会的な視点で論じた第3部。
 
普通、「科学論」の本というと科学そのものについての説明が多いのですが、この本で意識したのは科学的知識の「ユーザー」の側にとって有益な視点です。なので、「科学を使いこなすために」という表現がしばしば出てきます。科学の成果を産み出すのは科学者ですが、その知識は社会で、一般の人々が自分たちの立場や価値観から咀嚼して、はじめて日常生活の中で役に立つものになります。その具体例として、障害を持った方々が自分の状況を自分の言葉で語る当事者研究に注目したのも、科学論の本としては初めてではないかと自負しています。
 
そして最後の章ではこれらの議論を踏まえて、日本の科学の特徴と現状、そしてこれからの見通しについて述べました。現在、日本の科学技術は元気がありません。論文の量も質も年々下がっていますし、東京大学の国際ランキングももうひとつパッとしません。だけど、日本人は昔から、日常生活をちょっとした工夫で楽しむ技に長けています。衣食住のレベルも高い。こういった特徴を科学の側にもっと取り込むことができたら、ユニークでレベルの高い科学が展開できると思っています。
 

(紹介文執筆者: 情報学環 教授 佐倉 統 / 2022)

本の目次

はじめに──新しい科学論が必要な理由
第1章 「なぜ」「どのように」科学について語るのか?
第2章 科学の事実と日常の事実──科学技術の方法論
第3章 科学技術は誰のものか──(1) 近代科学の誕生以前は
第4章 科学技術は誰のものか── (2)「科学のあり方」が変質していくなかで
第5章 科学知と生活知──科学技術の飼い慣らし方・理論編
第6章 「二正面作戦」を戦い抜くために──科学技術の飼い慣らし方・実践編
第7章 「今」「ここ」で科学技術を考えること
終章──科学技術を生態系として見る

関連情報

オーディオブック:
科学とはなにか 新しい科学論、いま必要な三つの視点
著者: 佐倉 統
ナレーター: 橋本英樹 (再生時間7時間10分) (Audible)
https://www.audible.co.jp/pd/B08WPYDQXH

著者インタビュー:
【第3回】科学技術と社会の関係値から見る現状と持続可能な社会 佐倉 統氏 × 大澤 真幸氏
Part1: 科学技術社会論研究者の立場から見た現在の状況 (CCI FUTURE IMPACT Forum for SDGs)
https://www.cci.co.jp/forum/cci-future-impact-forum-for-sdgs/vol3-1/
 
【第3回】科学技術と社会の関係値から見る現状と持続可能な社会 佐倉 統氏 × 大澤 真幸氏
Part2:SDGsや社会の仕組みを考える上での科学の知識、知見の使いこなし方 (CCI FUTURE IMPACT Forum for SDGs)
https://www.cci.co.jp/forum/cci-future-impact-forum-for-sdgs/vol3-2/
 
【第3回】科学技術と社会の関係値から見る現状と持続可能な社会 佐倉 統氏 × 大澤 真幸氏
Part3: 課題解決におけるAIの方向性とこれからの時代のレベルの在り方 (CCI FUTURE IMPACT Forum for SDGs)
https://www.cci.co.jp/forum/cci-future-impact-forum-for-sdgs/vol3-3/
 
今、求められる総合知とは≪佐倉統さんインタビュー≫<特集 令和3年版科学技術・イノベーション白書> (Science Portal 2021年9月1日)
https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/sciencewindow/20210901_w01/

「生物学的な心地良さ」とは何か?「進化論」で考えてみた1つの答え (朱戸 アオ、佐倉 統) (ブルーバックス | 講談社 2021年2月15日)
https://gendai.media/articles/-/79625?media=bb
 
パンデミックを予見した漫画家が驚くほどのリアルさを実現できた理由 (朱戸 アオ、佐倉 統) (ブルーバックス | 講談社 2021年2月8日)
https://gendai.media/articles/-/79612?media=bb

自著解説:
【マイブック】『科学とはなにか-新しい科学論、いま必要な三つの視点』 (佐倉統 教授) (東京大学大学院情報学環・学際情報学府ホームページ 2021年3月11日)
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/research/210311mybook
 
書評:
科学とはなにか―新しい科学論、いま必要な三つの視点 (損保ジャパン | SOMPO Park 2021年5月3日)
https://park.sjnk.co.jp/education/fl10833/
 
内田麻理香 評 (毎日新聞 東京朝刊 2021年2月13日)
https://mainichi.jp/articles/20210213/ddm/015/070/013000c
 
田中香織 評「日本の科学技術力は衰退? 疑似科学信仰は拡大?──新しい科学論が必要な理由」 (講談社BOOK倶楽部 2021年1月27日)
https://news.kodansha.co.jp/8640
 
書籍紹介:
本読みの“巨人” 池上 彰が薦める ビジネスパーソン必読の7冊はこれだ! (『週刊東洋経済』 2021年5月1日・5月8日合併特大号)
https://str.toyokeizai.net/magazine/toyo/20210426/
 
今月の読本(特別編)「科学とはなにか」(佐倉統 講談社ブルーバックス)司る人々と社会によって作られていく「科学技術」と向き合う前提を知るために (八ヶ岳の南麓を彷徨って 2020年12月22日)
https://highlandfeet.wordpress.com/2020/12/22/今月の読本特別編「科学とはなにか」佐倉統-講/
 
読書メモ:科学とはなにか(佐倉統 著)…科学技術を「生態系」として語る (重ね描き日記 2020年12月20日)
https://rmaruy.hatenablog.com/entry/2020/12/20/142801

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