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書籍名

ワークショップデザイン論 創ることで学ぶ – 第2版

著者名

山内 祐平、 森 玲奈、 安斎 勇樹

判型など

264ページ、A5判変形、並製

言語

日本語

発行年月日

2021年1月15日

ISBN コード

978-4-7664-2720-2

出版社

慶應義塾大学出版会

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

ワークショップデザイン論

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ワークショップは様々な目的で利用されている学びと創造の技法である。最も実践の歴史が長いのは演劇領域であるが、現代においてワークショップは様々な形で使われるようになっており、領域によって、時間の設定やファシリテーションなどに違いがある。しかしながら、何らかの創る活動と学ぶ活動が含まれているという点は、ほぼ共通している。本書では、ワークショップを「創ることで学ぶ活動」と位置づけ、論を進めている。
 
ワークショップでは参加者の能動的な経験から学習が生起する。このような学習は「経験学習 (Experiential Learning)」と呼ばれ、100年を超える研究と実践の歴史がある。
 
経験学習の研究者としてはデューイとコルブが有名であり、本書でも概要が説明されているが、ここでは新規な観点として「創造的経験学習」すなわち、新しいアイデアや形を「創り出す」ことによって学ぶ活動という概念が導入されている。
 
ワークショップが昨今注目されている背景には、イノベーションが求められる社会状況の中で、新しいアイデアの創出や創造性育成などが学習目標として重視されるようになってきていることがある。そのため、ワークショップで求められる経験学習も安定した知識や技術を継承するというよりも、創造的であることが求められるようになってきている。
 
創造的活動は予測を裏切ることに本質があるので、事前に完全な計画を想定することは字義的に矛盾することになる。本論では、このような、本質的な不確定性をはらんだ活動をデザインしていくためのデザインモデルについて検討し、その実装方法を紹介している。
 
ワークショップデザインは、経験による学習を生起させるために、ステークホルダーが協同して創り学ぶ活動を構成する過程である。これらの構成はノンフォーマル学習として意図的に行われ、様々な領域において実践が積み重ねられている。本書では、デザイン過程のうち、企画について第2章、運営について第3章、評価について第4章において詳細を論じ、第5章においてデザイン過程をささえるワークショップ実践者の専門性発達、第6章において学習環境デザイン論の視座を提示することによって、ワークショップデザイン論の全体像を明らかにしている。
 
ワークショップデザインは、ワークショップをデザインするという課題に対して創造的な答えを生み出し、その経験を評価という形で反省的にとらえなおし学ぶと言う意味で「メタワークショップ」としてとらえることができる。このような営みが連鎖することによって、ワークショップをデザインする人たちと参加する人たちが創造的な学びを通じてつながることができるようになるだろう。

 

(紹介文執筆者: 情報学環 教授 山内 祐平 / 2021)

本の目次

はじめに
 
第1章 ワークショップと学習
Section 1 ワークショップと経験学習
Section 2 ワークショップとノンフォーマル学習
Section 3 ワークショップと創造的活動
Section 4 ワークショップのデザイン
 
第2章 ワークショップを企画する
Section 1 コンセプトの生成
Section 2 プログラムの作成
Section 3 事例:資生堂グループ「TRUST 8」
Section 4 企画の要件
 
第3章 ワークショップを運営する
Section 1 ワークショップの広報
Section 2 ファシリテーション
Section 3 事例:CAMPクリケットワークショップ
Section 4 運営の要件
 
第4章 ワークショップを評価する
Section 1 「ワークショップ評価」に必要な視点
Section 2 2つの評価
Section 3 「ワークショップ評価」のための手法
Section 4 ワークショップデザインの評価に向けて
 
第5章 ワークショップ実践者を育てる
Section 1 実践者の全体像
Section 2 ワークショップ実践者の熟達
Section 3 ワークショップ実践者とその専門性
Section 4 実践者が学び育つ環境とは
 
第6章 ワークショップと学習環境
Section 1 ワークショップと共同体
Section 2 ワークショップと空間
Section 3 ワークショップと学習環境
 
Appendix ワークショップデザイン探究のためのブックガイド
引用文献
索引
著者紹介

 

関連情報

著者インタビュー:
学びと創造にあふれた社会を築く。ワークショップを実践する人にとっての道標『ワークショップデザイン論』 (greenz.jp 2013年6月15日)
https://greenz.jp/2013/06/15/workshop_design/
 
ワークショップデザインは創造の“起爆剤”である~安斎勇樹インタビュー (Open CU 2013年5月14日)
https://www.opencu.com/2013/05/yukianzai-interview/
 
書籍紹介:
必読本!?ワークショップの企画者・進行役におすすめの書籍12選 (会議HACK 2020年1月14日)
https://www.kaigishitu.com/meeting-hacks/detail/id=38888
 
イベント:
デザインフォーラム「ワークショップデザインシリーズ」vol.5 (Design Innovation Consortium 2015年4月25日)
http://designinnovation.jp/program/design-forum/df-report/vol5.html
 
『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』出版パーティ (東京大学情報学環福武ホール 2013年5月25日)
http://educetech.blogspot.com/2013/04/2013425.html
 
OpenCU WorkShop: ワークショップデザイン入門~学びと創造の場作りの手法を学ぶ~ <第1回> (loftwork lab 2013年3月22日)
https://everevo.com/event/4549
 

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