東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

木、車、風力発電などのイラスト

書籍名

21世紀の農学 持続可能性への挑戦

著者名

生源寺 眞一 (編著)

判型など

232ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2021年11月15日

ISBN コード

978-4-563-08402-8

出版社

培風館

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

21世紀の農学

英語版ページ指定

英語ページを見る

本書は、持続可能性をキーワードに、農学が挑戦する課題の見取り図を分かり易く提示したテキストです。本書は、「食料」「資源・環境」「技術革新」「地域社会」という4つの領域における挑戦をとりあげ、そのもとで具体的なテーマを論じた12の章から構成されています。想定する読者は、主として農学の初心者ですが、専門分野に進んだ学部学生や大学院生なども念頭にあります。執筆者は、経済学や社会学、歴史学、栄養教育といった人文社会科学の専門家たちです。客観的なエビデンスを重視して、図表を用いながら、身近な話題から国際的な論点まで解説しています。
 
ここでは、学部ゼミで本書をテキストとして使用してきた私の経験を紹介したいと思います。ゼミでは基本的に毎回1つの章をとりあげます。どの章のゼミでも、学生たちから様々な論点が提示されたり、感想が語られたりします。指導役の私からみても、よく読み込んでいると感心することが多くあります。第1章 (食料自給率から見えてくるもの) は私が執筆しました。そのゼミのさい、ある学生からこんな質問がありました。「日本の食料自給率は低いですが、食品ロスを考慮すればもっと低くなるのではないでしょうか」。面白い質問です。この質問に答えるには、食料自給率とは何かを理解していなければなりません。
 
食料自給率とは、分母に国内の食料消費、分子に国内の食料生産をとった指標です。テキストの第1章では、まず国内の食料消費 (1節) を、次に国内の食料生産 (2節) をとりあげています。これらを把握することで、食料自給率の意味が理解できるのです (3節)。そして、食料自給率の意味が理解できると、食料供給力という考え方が重要であることが分かります (4節)。食料供給力を確保することは、食料安全保障の意味で社会のセーフティネットとなるからです。このように理解を進めていくことで、先ほどの学生の質問にたいして、読者の皆さんも正確に、そして広い視野から答えることができるようになるのです。
 
本書の編者 (生源寺眞一教授) は、読者に向けて次のメッセージを語っています。「12の章で展開される論述においては、初学者がこれまで接したことのない概念も提示される。新規に導入された概念をベースにすることで、食料や農業・農村をめぐるさまざまな現象や課題が統一感をもって理解できる。簡単なことではない。読み進んでいくことに難しさを感じる場合もあるに違いない。時間をかけて取り組むことで、壁を乗り越えていただきたい」。この言葉に、私も執筆者の一人として、そして学生たちと一緒に読んできた経験から、うなずくことができます。皆さんも、農学が挑戦する新たな課題に挑戦してみませんか。『21世紀の農学~持続可能性への挑戦』からはそれを学ぶことができるのです。
 

(紹介文執筆者: 農学生命科学研究科・農学部 准教授 小嶋 大造 / 2022)

本の目次

   序章 新たな課題に挑戦する農学(生源寺眞一)
 
I部 食料をめぐる挑戦
   1章 食料自給率から見えてくるもの(小嶋大造
   2章 食生活の変化と健康づくり(武見ゆかり、小岩井馨)
   3章 フードシステムの発達と食の安全(清原昭子)
   4章 地球規模の飢餓克服に向けて(小泉達治)
 
II部 資源・環境をめぐる挑戦
   5章 自然災害と向き合う農業・農村(福与徳文)
   6章 持続可能な水産資源管理とは(松井隆宏)
   7章 森林利用の持続可能性を高めるために(古井戸宏通
 
III部 技術革新をめぐる挑戦
   8章 スマート農業が実現する将来像と課題(南石晃明)
   9章 環境保全との両立が求められる食料生産(西澤栄一郎)
   10章 食料資源を支える国際協力(小山 修)
 
IV部 地域社会をめぐる挑戦
   11章 地域の共同力が支える農林水産業(荘林幹太郎)
   12章 大切なのは農山漁村の多面的機能(飯國芳明)

関連情報

シンポジウム:
NEW! 【2/3 ハイブリッド開催】公開シンポジウム「食料自給率の動向と見通し-食料・農業・農村基本法改正に向けて」 (日本学術会議農学委員会・食料科学委員会 2024年2月3日)
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/event/event_20240203-1.html

このページを読んだ人は、こんなページも見ています