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グレーの表紙

書籍名

Index to the Aṅguttara-Nikāya

著者名

KASAMATSU sunao, KAWASAKI Yutaka, OUSAKA Yumi

判型など

631ページ、222x143mm

言語

英語

発行年月日

2014年

ISBN コード

978-0-86013-507-4

出版社

The Pali Text Society

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

Index to the Aṅguttara-Nikāya

その他

他の言語:パーリ語

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本書は、中期インド・アーリア語のひとつであるパーリ語で書かれ、スリランカやタイなどの東南アジア諸国で信仰されるテーラワーダ仏教の聖典に含まれる『アングッタラ・ニカーヤ』の語彙索引です。
 
パーリ語で書かれた仏教聖典の原典は、1881年にイギリスで設立されたパーリ文献協会によって計画的に出版されたものが底本として用いられ、今なお研究者に多大な便宜を供しています。しかしこのパーリ文献協会版の原典は、校正されることなく再版され続けるという初歩的な問題に加え、現代の研究水準からみると多くの問題を抱えており、すべての原典について新たな校訂作業が急務であることが指摘されてきました。またパーリ文献協会版の原典にはほとんど語彙索引が付されていないか、あっても非常に不完全で誤りが多く、包括的なパーリ語辞典の作成やパーリ語の言語学的研究、そして当然ながら仏教研究を進める際の大きな障害となってきました。
 
この状況を打開するため、1990年代初頭から、国内外の情報科学研究者、言語学研究者、仏教学研究者の国際的協働研究のもとに、パーリ語を含む中期インド・アーリア語で書かれた文献を系統的に解析できるツールが開発されました。これによって、解析のために作成された独自のフォント系を用いて作成されたテキストデータから、語彙と韻脚の正逆順索引を作成すること、またニューラルネットワーク法に基づいて韻文の韻律の種類を解析することが可能となりました。
 
本書は、これらのツールを用いて作成してきたパーリ語仏教聖典の語彙索引事業の掉尾を飾るものです。本書は、1883年から1900年にかけて出版されたパーリ文献協会版『アングッタラ・ニカーヤ』全5巻に出現する語彙とその出典箇所を全て列挙しています。また原典に含まれる、訂正を要する膨大な箇所の一覧を35頁にわたって提示して利用者の便宜をはかっています。本書によってパーリ語仏教聖典の主だったものについては全て語彙索引がそろい、上に述べた辞典編纂や原典の再校訂、また言語学や仏教学の研究に寄与することが期待されます。
 
理系研究者と文系研究者の協働の必要性、また国際的な連携が強調される昨今、ごく早い時期から上述した体制のもとに継続的に成果を出してきた点は大きな特徴でしょう。また、近年における人文情報学分野のさきがけのひとつとして、歴史的な意義を持つものでしょう。最近ではパーリ語の原典はデジタル化され、より容易に包括的な検索が可能となりましたが、実際にパーリ語の原典を用いる研究においては、このような語彙索引は今なお便利なツールとして機能するでしょう。
 

(紹介文執筆者: 附属図書館 助教 河﨑 豊 / 2022)

本の目次

Preface
Corrections to the Pali Text Society edition of the Aṅguttara-Nikāya
Index to the Aṅguttara-Nikāya

関連情報

関連研究課題:
「パーソナルコンピュータによるアングッタラ・ニカーヤの語彙索引作成とテキスト再構築」 (基盤研究 (B) 2011年度~2013年度)
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-23320014/
 
書評:
Petra Kieffer-Pülz 評 (Bulletin of the School of Oriental and African Studies, Volume 78, Issue 3, pp. 633 – 634 2015年10月)
https://doi.org/10.1017/S0041977X15000646

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