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白と青の表紙

書籍名

法学教室ライブラリー 刑法各論の悩みどころ

著者名

橋爪 隆

判型など

544ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2022年12月

ISBN コード

978-4-641-13955-8

出版社

有斐閣

出版社URL

書籍紹介ページ

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刑法各論の悩みどころ

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本書『刑法各論の悩みどころ』は、雑誌「法学教室」の同名の連載に、その後の判例・学説の動きを踏まえて加筆・修正を行い、また、新たに2つのテーマ (業務妨害罪、文書偽造罪に関する項目) を追加したものです。この本では、姉妹書『刑法総論の悩みどころ』と同様に、刑法各論を学ぶ際に、学生のみなさんにとって理解が困難な解釈論上の論点について、議論の状況や問題点を整理した上で、一定の考え方を示すことを目的としています。その意味では、本書は、学部や法科大学院で、刑法各論をある程度勉強した人が、さらに学びを深めるために読んでいただくことを想定していますが、刑法各論をはじめて勉強する学生のみなさんにとっても理解できるように、基本的な内容を省略せずに、できるだけ平易に説明するように工夫してみたつもりです。また、法曹実務家や研究者の読者を想定して、最新の実務や学説の動向について、筆者なりの分析を加えているところもあります。このため、とりわけ学生の読者の方には、本書に基礎的な内容と発展的な内容が含まれていることに留意していただく必要があります (もっとも、発展的な内容も、刑法を楽しく学ぶためには重要ですので、ぜひ難しい内容にも挑戦してもらいたいと思っています)。

本書は全体で23章から構成されていますが、そのうち、財産犯をめぐるテーマが15の章で取り扱われています。財産犯の分量が多くなったのは、いうまでもありませんが、刑法各論の議論では財産犯をめぐる問題がもっとも複雑であり、また、実務的にも重要な問題が多いからです (もちろん財産犯以外の議論も重要です)。

本書の執筆に際しては、刑法各論の解釈論において、なぜこのような問題が生じるのか、どのような観点から見解の対立が生じるのか、さらに、私自身がどのような思考過程で一定の結論を導き出そうとしているのかについて、議論のプロセスを平易に言語化することに努めたつもりです。本書の結論に納得していただければ大変嬉しいですが、私の思考過程を踏まえつつ、それを批判的に検討していただけることも、大変有り難いことです。本書の立場に賛成するか反対するかはともかく、本書で示した課題について、読者の方にも一緒に考えていただき、刑法各論の議論の面白さを実感していただけるのであれば、本書の目的は十二分に達成されたと考えています。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 橋爪 隆 / 2023)

本の目次

第1章 遺棄罪をめぐる問題について
第2章 暴行罪・傷害罪について
第3章 同時傷害の特例について
第4章 住居侵入罪をめぐる問題
第5章 業務妨害罪について
第6章 窃盗罪の保護法益について
第7章 窃盗罪における占有の意義について
第8章 窃盗罪における不法領得の意思について
第9章 強盗罪の構造について
第10章 事後強盗罪について
第11章 強盗致死傷罪について
第12章 詐欺罪における「人を欺」く行為について
第13章 詐欺罪の実質的限界について
第14章 詐欺罪における交付行為について
第15章 横領罪における「自己の占有する他人の物」について
第16章 横領行為の意義について
第17章 銀行預金に関連する財産犯について
第18章 背任罪の成立要件について (1)
第19章 背任罪の成立要件について (2)
第20章 盗品等関与罪について
第21章 放火罪をめぐる問題について
第22章 文書偽造罪における「偽造」の意義について
第23章 賄賂罪における職務関連性について

関連情報

書籍紹介:
編集担当者から (『法学教室』508号 2023年1月)
https://www.yuhikaku.co.jp/static_files/BookInfo202301-13955.pdf
 
関連動画:
「東京大学法学部教員メッセージ (刑法・橋爪隆)」 (東京大学YouTubeチャンネル 2022年12月1日)
https://www.youtube.com/watch?v=B0bHwHe0V4Q

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