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白い表紙

書籍名

世界の中のラテンアメリカ政治

著者名

舛方 周一郎、 宮地 隆廣

判型など

328ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2023年3月27日

ISBN コード

978-4-910635-04-0

出版社

東京外国語大学出版会

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世界の中のラテンアメリカ政治

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本書はラテンアメリカ政治の概説書です。大学の学部生向けの授業で使うことを想定し、全12章で構成されています。扱う時代の範囲は紀元前から2010年代にまで及び、この1冊を読めば、ラテンアメリカ政治史の大きな流れが分かるようになっています。この非常に長い期間について、ラテンアメリカを構成する20もの国を、限られたページの中で扱うことはとても難しいのですが、比較政治学の研究の蓄積によってその可能性が開けました。
 
比較政治学とは、複数の場所や時期を比べることで、政治の体系的な理解を目指す学問です。具体的には、一定の基準に照らして何が同じで、何が違うのかを明らかにした上で、なぜ同じ / 違うのか考察します。例えば、政治を扱う上で重要な概念として民主制、一般に民主主義と呼ばれるものがあります。民主制は国家を運営する仕組みで、今日の世界では望ましいものとして広く認知されています。では、民主制であることの基準は何か、どの国にいつ民主制がある (あるいはあった) のか、なぜそうなのかを問うことができます。
 
民主制に関する研究は日進月歩で発展しており、10年前の日本と100年前のアルゼンチンのように場所と時期が全く異なる国を比べることが現在ではできるようになっています。民主制に加え、軍や経済政策など、政治史を知るための基本的な側面についても、これまでの研究によって共通点や多様性が明らかにされてきました。本書はこうした研究の成果を取り入れることで、ラテンアメリカ諸国の位置づけを示しつつ、注目すべき事例を選択して、多くの字数を割いて説明するというスタイルを取っています。
 
ラテンアメリカ諸国は文化的に類似しており、同じ時期にヨーロッパ諸国から独立するなど共通点が多いことが知られています。このことから、似たような国がいかに多様になったかを検討できる比較政治学の実験場として、ラテンアメリカは注目されてきました。本書もまたラテンアメリカ諸国間の多様性を説明していますが、それに加えて、ラテンアメリカの外にある国や地域との比較を意識する記述を心掛けました。比較の対象には日本も含まれています。
 
最後に、本書の内容にまつわるデータや最新の研究に関する情報をまとめたブログを設けていることも、これまでのラテンアメリカ政治史の書籍にはない、新しい特徴です。比較政治研究の面白さや、ラテンアメリカへの関心を喚起する内容を随時発信していきますので、是非ご覧下さい。
 

(紹介文執筆者: 総合文化研究科・教養学部 教授 宮地 隆廣 / 2023)

本の目次

第1章 ラテンアメリカ政治の全体像
第2章 独立前のラテンアメリカ
第3章 独立直後の国家形成
第4章 ポピュリズムの時代へ
第5章 ポピュリズムの政治
第6章 軍による政治支配
第7章 軍事政権の多様性
第8章 民主制への展開 南米
第9章 民主制への展開 中米
第10章 新自由主義改革
第11章 左傾化
第12章 これからのラテンアメリカ政治
 

関連情報

『世界の中のラテンアメリカ政治』舛方周一郎・宮地隆廣著(東京外国語大学出版会、2023)の補足情報https://lapitw-tufs.blogspot.com/
 
ためし読み:
[ためし読み]『世界の中のラテンアメリカ政治』「この本について」「第1章」より (東京外国語大学出版会 | TUFS PRESS | note 2023年3月20日)
https://note.com/tufspress/n/nbccd0a6282c7
 
自著解説:
ラテンアメリカと世界を往還する旅に出る……舛方周一郎 (『pieria 2023』第15号 2023年4月)
https://wp.tufs.ac.jp/tufspress/pieria/
 
書評・書籍紹介:
受田宏之 評 <本の棚> (東京大学教養学部『教養学部報』第647号 2024年1月12日)
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/647/open/647-2-01.html

磯田沙織 評 (『ラテン・アメリカ論集』第57号 2023年12月)
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/laronshu/56/0/_contents/-char/ja

新刊案内 (日本イスパニア学会『会報』第30号 2023年10月1日)
https://www.gakkai.ne.jp/ajh/boletin/日本イスパニヤ学会会報%20第30号%202023.pdf

近著の図書紹介 (『国際貿易』 2023年9月25日号)
https://japit.or.jp/newspaper/3.html

浦部浩之 評「ラテンアメリカ政治の待望の教科書――同時代の日本や世界の状況についても注意を喚起し、世界の流れの中にラテンアメリカ政治を位置付ける斬新な試み」 (『図書新聞』第3603号 2023年8月12日)
http://www.toshoshimbun.com/books_newspaper/shinbun_list.php?shinbunno=3603
 
三浦航太 評「資料紹介」 (『ラテンアメリカ・レポート』40巻1号p.77 2023年7月31日)
https://doi.org/10.24765/latinamericareport.40.1_77
 
牧田裕美 評「新刊書紹介」 (日本ラテンアメリカ学会『会報』第141号 2023年7月31日)
http://www.ajel-jalas.jp/kaihou/kaihou_pdf/141.pdf
 
桜井敏浩 評 (『ラテンアメリカ時報』2023年春号No.1442 2023年4月25日)
https://latin-america.jp/archives/57626
 
討論会・座談会・合評会:
ラテン・アメリカ政経学会第60回(2023年)全国大会プログラム
企画セッション3:ラテンアメリカ政治の教育 教科書作成と授業の経験から考える (東洋大学白山キャンパス5号館5404教室 2023年11月25日)
https://sites.google.com/view/jsla2023/%E5%A4%A7%E4%BC%9A%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0
 
『世界の中のラテンアメリカの政治』ブックトーク (一般社団法人ラテンアメリカ協会 2023年9月26日)
https://latin-america.jp/archives/59171
 
合評会『世界の中のラテンアメリカ政治』を読む (東京外国語大学海外事情研究所 2023年6月24日)
https://www.tufs.ac.jp/event/2023/230624_1.html
 

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