東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

海と黄色い重機の写真

書籍名

システム・アーキテクチャ 複雑システムの構想から実現まで

著者名

E. クロウリー、B. キャメロン、D. セルヴァ (著)、 稗方 和夫 (訳)

判型など

464ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2020年1月

ISBN コード

978-4-621-30405-1

出版社

丸善出版

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

システム・アーキテクチャ

英語版ページ指定

英語ページを見る

本書には、利害関係の複雑さや技術や業務の専門分化のために見失われがちな複雑な製品やサービスのアーキテクチャの決定に至るまでの流れが示されている。MITと連携した産業界に向けた教育プログラムのコアとなるコンテンツを模索していた際に、原書System Architecture: Strategy and Product Development for Complex Systemsは、内容の質および適合性の観点から最適な書籍であると考えた。しかし、日本人が原書のまま理解するには難解な点も多くあるため、日本語を母国語とする方に内容をより深くかつ効率的に理解していただくため、全文を翻訳し、本書を出版した。
 
本書は、センスや個人の能力に頼っているシステム・アーキテクチャの意思決定を一つの学術分野として確立しようというチャレンジングな試みであることが魅力的であり、また、若手エンジニアが習得するにふさわしい内容がまとめられた優れた (しかし難しい) ものである。システム・アーキテクチャという概念は、新規アーキテクチャの開発に関する実務家の知見や課題を体系化する試みから発展したものである。本書はシステム・アーキテクチャの分析や方法論を紹介し、そのサイエンスを開発することを意図している。システムとは互いに作用しあう2つ以上の要素であるといえるが、様々な機能が1つになることで首尾一貫した全体を創り出し、結果として生まれる機能が個別要素の機能の和を越えるという創発に本書は焦点を置く。システムの構成要素、インタラクション、機能、コンセプトやアーキテクチャといった抽象的な概念に、明確な定義を与えることで複雑なシステムを生み出す方法論を提示している。この方法論は、複雑なシステムを取り巻く利害関係の分析、利害関係者のニーズを分析し優先付けする方法、システムの構成要素の分析、システムのコンセプトデザインなどの新しいアイデアの創造、システムアーキテクトの役割、複雑さの定義と対処方法、システム・アーキテクチャ決定に利用するアルゴリズムの選定など幅広い。また、本書には様々な複雑システム開発の初期段階に関わった原著者らの経験を盛り込んだほか、様々な分野で活躍するシステムアーキテクトの経験を基にしたケーススタディも扱っている。クロウリー教授が過去15年間にわたってMITで教え、様々なリーダーを教育してきた大学院の授業から生み出された本書は、システムが今日どのように運用されているかを理解することに加え、技術的な組織の管理においても役に立つ書籍である。
 

(紹介文執筆者: 新領域創成科学研究科 教授 稗方 和夫 / 2023)

本の目次

序文
まえがき
謝辞
著者紹介
 
第1部 システムシンキング
第1章 システム・アーキテクチャの紹介
第2章 システムシンキング
第3章 複雑なシステムについて考える
 
第2部 システム・アーキテクチャの解析
第4章 フォーム (Form)
第5章 機能 (Function)
第6章 システム・アーキテクチャ
第7章 ソリューションニュートラル機能とコンセプト
第8章 コンセプトからアーキテクチャへ
 
第3部 システム・アーキテクチャの構築
第9章 アーキテクトの役割
第10章 システム・アーキテクチャにおける上流・下流の影響
第11章 ニーズから目標への変換
第12章 コンセプト策定における創造性の適用
第13章 複雑さをマネジメントするためのツールとしての分解
 
第4部 意思決定としてのアーキテクチャ
第14章 意思決定プロセスとしてのシステム・アーキテクチャ
第15章 アーキテクチャのトレードスペースに関する推論
第16章 システム・アーキテクチャ最適化問題の定式化と解決
 
付録
各章の問題
訳者あとがき

関連情報

原書:
System Architecture: Strategy and Product Development for Complex Systems  (Pearson刊 2015年)
著者: Edward Crawley / Bruce Cameron / Daniel Selva
https://www.pearson.com/en-us/subject-catalog/p/systems-architecture-strategy-and-product-development-for-complex-systems/P200000003288/9780133975345

書籍紹介:
B. キャメロン「System Architecture, a new book by Bruce Cameron」 (MIT SLOAN SCHOOL OF MANAGEMENT 2015年10月11日)
https://exec.mit.edu/s/blog-post/system-architecture-a-new-book-by-bruce-cameron-MCX4BJDRHOYZBYRHWMMTLGN6MOEI
 
関連記事:
「Bruce Cameron」 (MIT INDUSTRIAL LIASON PROGRAM)
https://ilp.mit.edu/read/BruceCameron
 
「Bruce Cameron - Introduction to System Architecture - 1 of 5」 (MIT Corporate Relations|YouTube 2023年3月10日)
https://www.youtube.com/watch?v=4Wm0mhEbVwI
 
関連動画:
稗方和夫 / ブライアン・モーザー「東大MIT産学連携の実績と今後の展開」 (Graduate School of Frontier Sciences UTokyo|YouTube 2022年11月1日)
https://www.youtube.com/watch?v=OmmuaBcD03Y

このページを読んだ人は、こんなページも見ています