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青い表紙

書籍名

システム思考がモノ・コトづくりを変える デジタルトランスフォーメーションを成功に導く思考法

著者名

稗方 和夫、 高橋 裕

判型など

208ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2019年10月7日

ISBN コード

9784822289768

出版社

日経BP社

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システム思考がモノ・コトづくりを変える

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システムとは、個々の要素よりも大きい、あるいは異なる機能を提供するものです。自然界の生態系のような意図を持たないシステムもありますが、本書は人工的なシステムを主な対象としています。例えば、物流システムは、輸送機器、倉庫、在庫管理、梱包、情報システムと人間等をシステム化することで実現され、モノを運ぶという機能を人間に提供しています。この物流システムは技術や運用の複雑さを増しつつ利便性を高めており、この複雑さはシステム全体として新しい問題を引き起こします。
 
社会やビジネスの現場一般では、複数の企業の製品やサービスを組み合わせることで、より大きな、実現の難しい機能を実現します。しかし、組み合わせによるシステム化がうまく働かない場合の対処はより困難なものになります。
 
このような問題の解決に、システム思考という対象を明示的にシステムとして考える考え方は非常に有効です。
 
本書は、ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーション (DX) を主な対象として、これまでの研究成果を踏まえてシステム思考を有効に活用するための方法について述べています。複数の要素が密接につながり合い、協働し合う=システム化された社会やビジネスを変革・改善する適切な解決策を見出すことは大きな困難を伴います。この問題に、対象を個々の要素に分解し、要素間の関係を定義し、システム化されることで社会やビジネスが成立していることを明示的に考える考え方や手法が「システム思考」です。「システム思考」では、社会の課題をとらえるため、利害関係や顧客の要望・要求の理解と明示的な定義からスタートし、社会やビジネスのシステムがどのような機能をどのようなメカニズムで実現しているかを明らかにします。また、このメカニズムを様々なシミュレーション手法によって意思決定を支援するというところまでを扱うことで、「システム思考」による課題解決の全体像を示しています。
 
ビジネスパーソンに向けては、モノ (製品) づくり・コト (サービスや体験) づくりに不可欠な要素である顧客の要望や自社のコア技術などを俯瞰的に捉えて見える化し、適切に検討して創発することで、DXを成功に導く実現手法である「システム思考」を、わかりやすく、具体的に説明しています。また、抽象的であるために理解の難しい「システム思考」を、社会課題に興味を持つ大学生にわかりやすい書籍となっています。
 
企業の経営層、製造現場を支える技術者、様々なことを習得しつつある大学生に手を取っていただき、少しでもお役に立てば幸いです。
 

(紹介文執筆者: 新領域創成科学研究科 教授 稗方 和夫 / 2023)

本の目次

第1章 新たなモノづくり/コトづくりに必要なもの──AI + IoT のその先へ
第2章 良い「創発」を生み出す──システム思考と工学的アプローチ
第3章 システムをより深く理解する──機能分解と設計項目のモデル化
第4章 システムへの理解を「創発」につなげる──コア技術と効果的・創造的な解決策
第5章 想定外を想定し、最適解を得る──システムの動的・定量的な分析
 
補章 ケーススタディ──システム思考を用いた新製品プロジェクトの分析

関連情報

書籍紹介:
「富士フイルムはなぜ変われた?「システム思考」で解く」 (NIKKEIリスキリング 2019年12月12日)
https://reskill.nikkei.com/article/DGXMZO53022500V01C19A2000000/
 
「学習する組織 / システム思考に効く読書 (9)」 (Change Agent 2019年12月3日)
https://www.change-agent.jp/news/archives/001260.html

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