東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

朱色と緑の表紙

書籍名

Routledge Studies in Sociolinguistics Beyond Borrowing Lexical Interaction between Englishes and Asian Languages

著者名

Hyejeong Ahn、Jieun Kiaer、Danica Salazar、 Anna Bordilovskaya

判型など

208ページ、ハードカバー

言語

英語

発行年月日

2023年4月17日

ISBN コード

9780367181307

出版社

Routledge

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

Beyond Borrowing

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本書は、英語が東アジアの言語にどのような影響を及ぼしてきたかを概説し、考察するもので、社会言語学と言語接触を研究する4人 (Jieun Kiaer、Hyejeong Ahn、Danica Salazar、Anna Bordilovskaya) の著作です。私はこの研究プロジェクトに参加し、本書の執筆に携われたことをたいへん光栄に思います。本書は7章で構成され、社会言語学の視点から言語接触の歴史を概観しています。英語と日本語、韓国語、中国語などとの接触によって、現代の英語に新たな用法が生まれ、同時に英語が他の言語に組み込まれてきました。本書は、英語と東アジア言語の接触は一方向のものではなく、東アジアの言語とその話し手が彼らのグローバルアイデンティティと言語領域を拡大・形成するとともに、グローバル言語としての英語の発展に寄与していると論じます。
 
本書は全体を一続きのナラティブとして読むこともできれば、言語別・テーマ別に章立てされた作品として読むこともできます。7章構成で、章ごとに英語と東アジア言語の接触のさまざまな側面と影響を取り上げます。第1章は今日の世界英語パラダイムを概観し、それらの限界を分析したうえで、本書の構成と次章以下の研究手法を概説します。第2章では、グローバル言語としての英語の影響と、英語が他の言語や文化に及ぼす影響を評価する現行のアプローチを再検討します。今日の言語をめぐる現実は複雑で動的であり、一文化にとどまるものではありません。そうした現実に対する、言語の境界を越えた多面的なアプローチを組み込んだ枠組みを筆者らはここで提起してもいます。第3~5章はそれぞれ中国語、日本語、韓国語と英語の言語接触を取り上げます。第6章では、タガログ語やマレー語など東南アジアの言語状況に触れました。東南アジアは広大かつ多様な地域であり、日中韓の3言語に絞った考察のみでは過度な単純化となるからです。最終章はそれまでの6章を要約し、既存の枠組みの展開と見直しという主題に立ち返ります。そのねらいは、英語と東アジア言語の多方向の接触は今や複雑で動的なものになっており、その実態をより適切に記述・説明すること、また、グローバル言語としての英語の役割と位置づけを再評価することにあります。
 
言語間、文化間の接触は進行中の動的なプロセスであり、文脈を考慮し、さまざまな視点から考察すべきでしょう。本書は、この複雑な現象のいくつかの側面に触れたにすぎません。応用言語学、社会言語学、世界英語をはじめ、さまざまな言語学分野の学生や研究者にとって、本書はこのテーマへの関心をそそる有益な入門書となるでしょう。
 

(紹介文執筆者: グローバル教育センター 特任講師 アンナ・ボルジロフスカヤ / 2023)

本の目次

Chapter 1: Introduction
Chapter 2: A new translingual model of lexical innovation
Chapter 3: Lexical encounters between Chinese and English
Chapter 4: Lexical interactions between English and Japanese
Chapter 5: Lexical interactions between Korean and English
Chapter 6: Lexical interactions with English in Southeast Asia
Chapter 7: Conclusion
 

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