グローバルエビデンス委員会報告書 2024年改訂版 国内のエビデンスシステムの強化、グローバルエビデンスアーキテクチャの強化、そして日常生活の中心にエビデンスを位置付けるための推進力の醸成
EBM (根拠に基づく医療) 発祥の地ともいわれるマクマスター大学が事務局を務めるEBPM (根拠に基づく政策形成) の国際プロジェクトGlobal Commission on Evidence (グローバルエビデンス委員会) は、世界中の社会的課題に対処するために、エビデンス (科学的根拠) の活用を促進することを目的とした国際的なイニシアティブです。この委員会は、パンデミックや気候変動など世界的に重要な課題に直面する中、2021年に設立されました。エビデンスに基づく政策が不十分なために、対応が遅れたり、効果が発揮されないケースが多かったことから、信頼できるエビデンスを提供することの重要性が再認識されたことが背景にあります。
このプロジェクトには現在世界21ヵ国と90の国際団体が参画していますが、2024年4月まで日本の関与は皆無という状況が続いていた中、グローバルエビデンス委員会の作業部会にあたる実装評議会Implementation Councilが2024年5月に開催され、日本人として初めて小職 (宮木) と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林庸平主任研究員が参加し、同年8月から正式メンバーとして認められました。
同委員会では2022年に報告書 (フルレポート) が作成され、その後2023年と2024年にアップデートされて公式サイトにて多国語 (アラビア語、中国語、英語、フランス語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語) で公表されてきましたが日本語版はない状態が続いていました。このたび総務省行政評価局が翻訳を行うこととなり、宮木と小林先生が監訳することとなりました。本書はその日本語版 (2024年改訂版) であり、同プロジェクトの公式ページと総務省行政評価局のページでそれぞれ無償公開 (URLは下部「関連情報」に記載) されています。
この委員会では、政策決定や社会的問題の解決において、信頼性の高いエビデンスを提供することで、より効果的で公平な意思決定が行われることを目指していて、主な目標として以下の3つが掲げられています。
1) 国内エビデンスシステムの強化
各国が独自のエビデンスシステムを強化し、政策立案や課題解決に必要な情報を効果的に提供できるよう支援します。これにより、政策決定者はエビデンスに基づいた迅速な意思決定が可能となります。
2) グローバルエビデンスアーキテクチャの構築
グローバルな視点からエビデンスを共有・活用できるよう、各国間や国際機関の協力体制を構築し、世界的な課題(気候変動や感染症など)に対して一貫した対応が取れるよう支援します。
3) 日常生活におけるエビデンスの活用
市民がエビデンスを日常生活の中で活用し、意思決定や問題解決に役立てるための教育や情報提供を推進しています。これにより、社会全体でエビデンスに基づく文化を育むことを目指しています。
このたびの本報告書監訳により、EBPM (根拠に基づく政策形成) の国際的な動向を知ってもらえることになれば幸いです。
(紹介文執筆者: 公共政策大学院 特任教授 宮木 幸一 / 2024)
本の目次
国内のエビデンス支援システムの形式化および強化
グローバルエビデンスアーキテクチャの強化および活用
日常生活の中心にエビデンスを位置づけ
結論
補遺 1
補遺 2
関連情報
https://www.mcmasterforum.org/networks/evidence-commission
グローバルエビデンス委員会実装評議会Global Commission on Evidence Implementation Councilホームページ
https://www.mcmasterforum.org/networks/evidence-commission/about-us/who-we-are/implementation-council
監訳者 (宮木幸一) 研究室ホームページ
https://well-being.pp.u-tokyo.ac.jp/
総務省 政策評価ポータルサイト
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/seisaku_n/chousakenkyu.html
「政策評価手法に関する調査研究等」の最上部にある
・エビデンス委員会報告書 (マクマスター大学 (カナダ)) (令和6年9月)
にてPDFをダウンロード可能
グローバルエビデンス委員会公式サイトの日本語版報告書紹介ページ
https://www.mcmasterforum.org/networks/evidence-commission/report/Japanese
こちらでは報告書2024年改訂版のコンテンツが、複数のパワーポイントファイルとしても公開されています。