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書籍名

密封線源の基礎 [8版] 第2種・第3種放射線取扱主任者のために

著者名

上蓑 義朋、山田 崇裕、角山 雄一、三家本 隆宏、 飯本 武志、 吉岡 正勝、山元 真一

判型など

286ページ、B5判

言語

日本語

発行年月日

2024年3月18日

ISBN コード

978-4-89073-291-3

出版社

日本アイソトープ協会

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私たちはさまざまな環境や状況で放射線に遭遇しています。「太古から存在する自然の放射線」、「より良い人間活動や生活環境を求めて医療分野や産業分野等で便利に利用してきた人工の放射線や放射性物質」、「その結果として発生する放射性廃棄物」、「東電・福島第一原発事故で、拡散した放射性物質によって汚染された広大な環境」等々。そのような状況のなか、私たちは空港の荷物検査や病院での診療診断で放射線の便利さを享受している一方で、ときに、放射線被ばくの話題を耳にし、その影響やリスクに不安をいだくこともあります。歴史を遡れば、1895年のレントゲン博士のエックス線の発見以来、専門家たちは大変長い時間をかけて、どのように放射線の被ばくリスクを可能な限り低減して、便利な「放射線」の有効活用を続けられるか、知恵を絞り、対応、対策を考え、経験を積み重ねてきました。チョルノービリ (1986年) や福島 (2011年) などの原子力災害に伴う人や環境への影響にかかる社会的混乱も、その取り組みの歴史、いわゆるPDCAに大きな影響を与え、いまでも関係者の議論やチャレンジは続いています。
 
本書は、さまざまな放射線源のうち「人工の密封線源」に関する情報に焦点を絞っています。密封線源とは、JIS規格 (JIS Z 4821) によれば「設計に従った使用において、設計条件での放射性物質の散逸を避けるため、カプセルに密閉するか、支持材に結合して一体化した放射線源」と定義され、一方、法令 (放射性同位元素等規制法施行規則) のないこと、(2) 密封された放射性同位元素が漏えい、浸透等により散逸して汚染するおそれのないこと、のふたつの条件に常に適合する状態で使用する」よう定めています。このような線源はレントゲン博士の予言のままに、医療分野での検査や治療のみならず、物質の成分分析や構造分析、メッキや紙類、金属材料などの厚さ計、非破壊検査、さらには食品や医療器材の滅菌など、実に幅広い分野で活用されています。私たちの日常生活に直結する場面で活躍している密封線源を有効に、安全にかつ安定的に活用し続けられるよう、そのような物質の本質を理解し、自らが自信をもって扱えるのみならず、扱う施設や仲間をも守ることができる優秀な施設安全管理者、つまり放射線取扱主任者を求める声が大きくなっているのです。
 
本書は主にこの目的に応えるべく、資格試験テキストとして丁寧に関連情報が整理されていますが、必ずしも放射線取扱主任者を目指す方々のみならず、だれでも、放射線の基礎のみならず、放射線施設における安全管理に必須となる最新の考え方や技術が理解できるよう、平易にまとめられています。この紹介文を執筆している私は、第4章「放射線管理技術」を分担し、放射線の防護と管理の動機とその目的、被ばくの単位「シーベルト」の意味、線量低減の考え方と実際のテクニック、事故対策、等について解説をさせていただきました。ご参考ください。
 

(紹介文執筆者: 環境安全本部 教授 飯本 武志 / 2024)

本の目次

1  放射線の基礎 (上蓑義朋)
2  測定技術 (山田崇裕)
3  放射線の生物影響 (角山雄一)
4  放射線管理技術 (飯本武志)
5  密封線源 (三家本隆宏)
6  法令 (吉岡正勝、山元真一)

関連情報

別冊「試験問題と解答例」ダウンロード
https://www.jrias.or.jp/report/cat3/53.html
 
シンポジウム:
第9回 環境保健衛生シンポジウム: 「私たちと放射線」
講義名:放射線防護の考え方1「我々と放射線の関係性」
講師:東京大学環境安全本部 教授 飯本武志氏 (東京都Tokyo Metropolitan Government | YouTube 2020年12月18日)
https://www.youtube.com/watch?v=iTXyutafiD4
 
第9回 環境保健衛生シンポジウム: 「私たちと放射線」
講義名:放射線防護の考え方2「放射線リスクから人と環境をまもる~リスクマネジメント~」
講師:東京大学環境安全本部 教授 飯本武志氏 (東京都Tokyo Metropolitan Government | YouTube 2020年12月18日)
https://www.youtube.com/watch?v=l0fnttotdNo
 
第9回 環境保健衛生シンポジウム:「私たちと放射線」
講義名:放射線防護の考え方3「放射線リスクから人と環境をまもる~防護の目的と実践~」
講師:東京大学環境安全本部 教授 飯本武志氏 (東京都Tokyo Metropolitan Government | YouTube 2020年12月18日)
https://www.youtube.com/watch?v=1fJ_jH0mJdU
 
第7回 環境保健衛生シンポジウム: 知っておきたい!身の回りの放射線 放射線はこんなところで使われている (東京都健康安全研究センター 2018年11月22日)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/10/11/05.html
 
講義アーカイブ:
2013年度開講:物質の神秘 ― その生い立ちから私たちの未来まで(学術俯瞰講義) 現代社会と物質
第10回 放射線のリスクと防護の科学 飯本武志 (OCW – Utokyo OpenCourseWare 2013年)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1134/
 
2015年度開講:宇宙・物質・社会-物質の成り立ちから応用まで(学術俯瞰講義) 放射能・放射線
第8回 放射能・放射線-さまざまな顔をもつ放射線とどう向き合うか 飯本武志 (OCW – Utokyo OpenCourseWare 2015年)
https://ocw.u-tokyo.ac.jp/lecture_1354/
 
放射線教育支援サイト“らでぃ”
https://www.radi-edu.jp/
 
放射線等に関する副読本 > 放射線等に関する副読本掲載データ > 中学校生徒用
https://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1314159.htm
 

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