東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

黄色の表紙に白の吹き出しのイラスト

書籍名

ケースで学ぶ国際企業法務のエッセンス 第2版

著者名

森下 哲朗、平野 温郎、森口 聡、山本 卓、増見 淳子

判型など

552ページ、A5判、並製カバー付き

言語

日本語

発行年月日

2025年4月

ISBN コード

978-4-641-04699-3

出版社

有斐閣

出版社URL

書籍紹介ページ

英語版ページ指定

英語ページを見る

本書は、2017年に刊行した初版の改訂版 (第2版) である。
 
現代における国際企業法務の射程の拡大や変化のスピードは速い。UTokyo BiblioPlazaでの初版の紹介でも述べたとおり、本書に書かれている情報があっという間に古くなってしまうという状況は、近年の企業を取り巻く事業環境の激変に伴う法的・倫理的な問題の高度化や複雑化により、まさに当時以上であると言える。このため、国際企業法務はますますその全体像がつかみにくくなっているが、そのような状況においても、あるいはそのような状況にあるからこそ、不確実性を持った現実の問題が目の前に現れたときに、それを法的・倫理的問題として正しく認識、再構成し、最適解を得る手掛かりが見出せるように、常日頃から感覚を研ぎ澄ましておくことが求められている。そのためには、法学の専門的知識が基盤となることは当然であるが、それを現実の法的・倫理的な問題の解決にどのように用いるのか、問題へのアプローチのしかたや法的な思考回路を、さまざまな事例を通して疑似体験し、生きた知恵として自らの引き出しに蓄積しておくことがますます重要となろう。
 
このような観点から第2版も初版の構成を踏襲し、国際企業法務の主要な分野毎に、前提となる「事例」、問題の所在を明らかにしつつ何を検討すべきかを示す「着眼点」、具体的に検討すべき課題や理論を示す「ポイント解説」、事例の問題にどう対応すべきか解決の道筋を示す「本事例の考え方」という流れに沿って記述している。一方、内容ついては全体を見直し、国内外のルールの改正・改訂や実務の変化に対応して記述をアップデートしたほか、ビジネスと人権など新たな課題も取り上げた。特に第3章「技術取引」については、新たに本学法学政治学研究科の増見淳子教授 (国際ビジネス法) に「無形資産と技術関連契約」と題して書き下ろしていただき、国際企業法務における重要性がより一層高まっている知的財産・無形資産、技術に関する契約について大幅に記述を拡充した。また、コラムでもこの分野の話題を取り上げたほか、契約交渉やLegal Operationsなど新たな話題も追加した。そのほか、第6章の「プロジェクト・ファイナンス」では、近年関心が高まっている洋上風力発電へと題材を改めている。
 
本書は序章から順に読み進めていただいてもよいし、国際企業法務に関わることになったとき、あるいはその力が必要になったときに、必要な個所をピンポイントで読んでいただいても構わない。初版同様、本書が国際企業法務に取り組む皆さんの道標の一つとなることを願うものである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 名誉教授 平野 温郎 / 2025)

本の目次

序  章 国際企業法務の世界
第1章 国際売買契約
 【事例1-1】新規取引案件の条件を取り決めようとしている営業部からの相談
 【事例1-2】契約の成立が争いとなっている営業部からの相談
 【事例1-3】紛争解決方法や支払に関する営業部からの相談
 【事例1-4】契約解除に関する営業部からの相談
 【事例1-5】製品の品質を巡るトラブルに関する営業部からの相談
 【事例1-6】国営企業との取引に関する営業部からの相談
 【事例1-7】X社と和解しようという営業部からの相談
 【事例1-8】X社との間で長期の契約を締結し,サプライソースを確保しようとしている営業部からの相談
 【事例1-9】安全保障貿易管理の問題はないか,と気づいた営業部門からの相談
 
第2章 販売店・代理店契約
 【事例2-1】介護・リハビリ用機器Care Oneの海外向け販売推進を担当する営業部からの相談
 【事例2-2】販売代理店契約書を作成しようとする営業部からの相談
 【事例2-3】N国向けに仕様変更して輸出したCare Oneの事故発生にあわてる営業部からの相談
 【事例2-4】X社が不正行為を行っているとの情報が!
 【事例2-5】販売店契約の打切り
 【事例2-6】X社の状況の悪化
 【事例2-7】Z氏から,これまでの開拓協力に対して適切な報酬と経費を支払ってほしいとの要求を受けた営業部からの相談
 
第3章 無形資産と技術関連契約
 【事例3-1】開発パートナーの吟味――秘密保持契約
 【事例3-2】製造装置の共同開発――スタートアップ企業との協業
 【事例3-3】ベンチャー企業との共同開発成果の特許出願
 【事例3-4】製造技術とノウハウのライセンス(ライセンシー)
【事例3-5】(欠番)
【事例3-6】新興国企業への製造委託(OEM)
 【事例3-7】知的財産権を巡る国際紛争
 
第4章 合弁契約
 【事例4-1】N国のX社から技術提供と出資の要請を受けた!
 【事例4-2】Xプロダクツ社への技術提供と出資を本格的に検討開始!
 【事例4-3】合弁形態 (Structure) の検討
 【事例4-4】新しい工場ライン建設に多額の資金が必要!
 【事例4-5】当社ブランド「α」!
 【事例4-6】ポストクロージング
 【事例4-7】合弁会社からの撤退
 
第5章 海外拠点の設立や運営
 【事例5-1】まずは出張ベースで本社社員を派遣したいという営業部からの相談
 【事例5-2】駐在員事務所が営業行為を行っている疑いがある!
 【事例5-3】ようやく設立できた現地法人のコンプライアンス体制不備を懸念する同法人社長からの指示
 【事例5-4】労務問題に悩まされている人事課長からの相談
 【事例5-5】独占禁止法違反 (カルテル) の疑いが発生した!
 【事例5-6】顧客や関係者に対する贈賄の懸念が浮上した!
 【事例5-7】環境汚染問題が発生した! (クライシスの発生)
 【事例5-8】N国に対して経済制裁が発動された!
 【事例5-9】サプライチェーンにおける人権侵害の懸念が浮上した!
 
第6章 プロジェクト・ファイナンス
 【事例6-1】プロジェクト・ファイナンスによる海外電力事業参画の打診を受けたが……
 【事例6-2】プロジェクト・ファイナンスに取り組むことになった
 【事例6-3】プロジェクト・ファイナンスにおけるリスクはどのように分担されるのか
 【事例6-4】Bankabilityとはなにか?

関連情報

書籍紹介:
編集担当者による紹介 Book Information (『法学教室』No.445 2017年10月)
http://www.yuhikaku.co.jp/static_files/BookInfo201710-04679.pdf

このページを読んだ人は、こんなページも見ています