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書籍名

アメリカ文学史への招待 豊饒なる想像力

著者名

橋本 安央、 藤井 光、 坂根 隆広 (編著)

判型など

318ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2025年3月

ISBN コード

978-4-589-04392-4

出版社

法律文化社

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アメリカ文学史への招待

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各国文学の歴史を学ぶということは、それ自体が自明の試みではなくなりつつある。20世紀後半からは、それまで「正典 (キャノン)」として普遍的な価値を与えられていた作家・作品の見直しが進行し、より多様化した文学史を記述しようとする試みがなされてきた。国民国家の「国語」という枠組みを問い直す視点から、歴史的な系譜を検証する視点に加え、インターネットをはじめとするネットワーク化の進展により、文化創造の活動自体もまた、同時代の複数地域にまたがるありようがごく当たり前になってきている。そうした展開を受けて、文学史を提示する試みも二極化しつつある。すなわち、映像資料等を援用し、文学の概念を文化の他領域にも拡張する傾向がある一方で、学際性を前面に押し出し、あるいは事典的な構成をとり、テーマ論的解説に重点を置くものもある。時代の潮流に応じて文学史がどう提示され記述されるのかも変わっていくことは、当然のことであると同時に、それらの多彩な試みを根本で支えているのは個々の文学作品の魅力であるという点は、この先も変わらない事実だろう。
 
本書『アメリカ文学史への招待』は、上記のような、21世紀現在の文学をめぐる最新の状況と、文学作品という原点の再認識を融合させ、アメリカ合衆国の文学を概観するうえで必須の情報をコンパクトにまとめた書物である。新たな文学観や歴史観がもたらした知見を踏まえつつ、20世紀後半から、さまざまな批評や思想による問い直しを経た現在でも、重要とみなされる作家・作品を中心とし、その文学的魅力と意義を再確認することが重視されている。単なる作家紹介にとどまらず、各時代を代表する作品を選定し、解説とともにその実際の表現を紹介することで、そうした文学的な魅力を味わえることが、本書の大きな特徴である。加えて、16世紀後半から21世紀まで、時代背景と文学との関わりを重視したセクションを導入することで、アメリカ文学史を学ぶことは、合衆国という国家の歩みを学ぶことでもあるという点を強調している。また、アメリカ合衆国というダイナミックな国家が世界に大きな影響を及ぼしていることを踏まえ、世界文学の中におけるアメリカ文学、アメリカ文学と日本文学の関連性、および21世紀の移民文学等をめぐる現代的な視点を積極的に導入しているほか、作品の舞台を視覚化した地図、本書を出発点として学術的探求を深めたい読者のための二次文献案内などを併録している。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 准教授 藤井 光 / 2025)

本の目次

はしがき
いまを生きる アメリカ文学史の現在
日本語読者のための,世界の中のアメリカ文学史
 
序章  ダイジェスト アメリカ文学史
1  ピューリタン文学と小説の始まり
2  アメリカン・ルネサンス
3  リアリズムと自然主義
4  アメリカン・モダニズムの展開
5  冷戦の時代と文学
6  ポストモダニズムから多文化主義の時代へ
7  新世紀のアメリカと世界
 
第I部  アメリカ文学史
イントロダクション―邂逅の衝撃
1  アメリカ大陸の「発見」
2  新世界と活版印刷術 
3  「発明」されるアメリカ 
 
第1章  起源と始動―植民地時代~1820年
1  アウトライン
(1) バージニア植民地の始まり
(2) ニューイングランドとピューリタン
(3) マサチューセッツ湾植民地と説教文学
(4) 理神論と啓蒙主義
(5) カルヴィニズムの抵抗
(6) アメリカ革命と政治的独立
2  ピューリタン文学
(1) 予型論という発想
(2) ピューリタンと日記
(3) アメリカ最初の詩人,アン・ブラッドストリート
(4) エドワード・テイラー,あるいは最後の形而上詩人
3  理神論の18世紀
(1) マザー王朝
(2) 近代人フランクリン
(3) フランクリンと明治日本
4  アメリカ小説の誕生
(1) 感傷小説,あるいは誘惑と美徳と破滅の物語
(2) ローソンとフォスター
(3) C・B・ブラウン,あるいはアメリカン・ゴシック
 
第2章  ロマン主義の時代―1820~1865年
1  アウトライン
(1) アメリカの知的独立
(2) 孤立主義と拡張主義
(3) ユニテリアン主義と超絶主義
(4) 社会改良運動と南北対立
2  ロマン主義文学の誕生
(1) ロマン主義とは何か
(2) アーヴィングとノスタルジー
(3) クーパーと自然の美徳
(4) ブライアントと炉辺詩人たち
(5) ハドソン・リバー派の風景画
3  アメリカン・ルネサンス
(1) 黄金期の到来
(2) あらゆる文学ジャンルの源泉にポーがいる
(3) 詩人エマソンと思想の環
(4) 理念と行動の人ソロー
(5) ホイットマンの自由 (詩) と民主主義
(6) 心の探求者ナサニエル・ホーソーン
(7) メルヴィルと海
(8) ディキンソンと「白の選択」
(9) ルイザ・メイ・オルコット―少女小説家の仮面の陰で
(10) ポー,エマソン,ホイットマンの日本的受容
 
第3章  リアリズムと自然主義―1865~1914年
1  アウトライン
(1) 変容するアメリカ社会
(2) 技術革新とホワイト・シティ
(3) 多民族社会の形成
(4)「金メッキ時代」から革新主義の時代へ
(5)「 新しい女性」とギルマンの「黄色い壁紙」
(6) 南部における人種隔離と『黒人のたましい』
(7) フロンティアの消滅と帝国への道
2  リアリズムの勃興
(1) リアリズムとは何か
(2) ハウエルズとリアリズム
(3) マーク・トウェイン―生きることとは書くこと
(4) 意識の探求者ヘンリー・ジェイムズ
(5) ローカル・カラーの文学
(6) ジュエットとショパンの女性たち
(7) マイノリティ作家の登場
3  リアリズムから自然主義へ
(1) 自然主義とは何か
(2) ノリスのロマンス
(3) スティーヴン・クレインと主観的な戦争
(4) ロンドンの犬
(5) ドライサーと欲望の声
(6) ウォートンとアメリカ/ヨーロッパ
(7) ダイム・ノヴェル―商品としての物語
 
第4章  モダニズムの時代―1914~1945年
1  アウトライン
(1)「狂騒の20年代」から大恐慌へ
(2) 第2次世界大戦とインフルエンザ・パンデミック
(3) 大量消費社会と大衆文化の到来
(4) 消費する/されるフラッパー
(5) 排外主義の時代
(6) 大恐慌とニューディール
(7) 第2次世界大戦と日系人の強制収容
2  モダニズムの幕開け
(1) モダニズムとは何か
(2) 諸分野におけるモダニズム
(3)「リトル・マガジン」と新しい詩の誕生
(4) ロバート・フロストとアメリカン・モダニズム
(5) パウンドとウィリアムズ
(6) モダニスト詩人T・S・エリオット
3  モダニズム小説の展開
(1)「失われた世代」の文学
(2) キャザーのモダン・ノスタルジー
(3) スタインと環大西洋モダニズムの形成
(4) アンダーソンとルイスの中西部
(5) フィッツジェラルドと結婚という謎
(6) ヘミングウェイの恋と戦争
(7) ウィリアム・フォークナーと南部
4  複数のモダニズム 
(1) ハーレム・ルネサンス―運動の多様性
(2) 1930年代の文学
(3) サザン・ルネサンスの作家たち
(4) オニールとアメリカ近代劇の発展
 
第5章  冷戦と体制の動揺―1945~1963年
1  アウトライン 
(1) 戦後体制の盟主として
(2) 冷戦と文化外交
(3) 赤狩りの時代へ
(4) 公民権運動の本格化
(5) ケネディ登場と暗殺
2  時代の空気と戦後文学
(1) サリンジャーと純粋さの追求
(2) 自由を求めるビート・ジェネレーション
(3) ユダヤ系アメリカ文学
(4) ウラジーミル・ナボコフと冷戦期アメリカ
(5) 黒人作家たちにとっての実存
(6) 新たな南部作家たちの声
(7) 戦後の2大劇作家―ウィリアムズとミラー
(8) 告白詩とシルヴィア・プラス
 
第6章  ポストモダニズムと多様化の時代―1963~2001年
1  アウトライン
(1) ケネディの死を乗り越えて
(2) カウンターカルチャーの世代へ
(3) フェミニズム運動のうねり
(4) 超大国の動揺
(5) アメリカの復権を目指すレーガン時代
(6)「歴史の終わり」から世紀転換期へ
2  ポストモダニズムの勃興 
(1) ポストモダニズムとは何か
(2) ポストモダン文学の展開
(3) 『キャッチ=22』と現実の (無) 意味
(4) ポストモダン文学第1世代の作家たち
(5) ヴォネガットと戦争の語り
(6) トマス・ピンチョンと現代の科学技術
(7) ベトナム戦争とティム・オブライエン
(8) アメリカと暴力,マッカーシーとオーツ
(9) カーヴァーと「アメリカの夢」の後
(10) トニ・モリスンと黒人の声なき声
(11) 多様化する声とジャンル
(12) ポストモダン第2世代
(13) 自然とアメリカと詩人たち
 
第7章  21世紀―2001年~
1  アウトライン 
(1)「テロとの戦い」の時代へ
(2) 拡大する経済格差と社会の分断
2  アメリカ文学の現在
(1) テロの時代のアメリカと小説
(2) 創作環境と移民文学
(3) 翻訳文学と広がる「文学」の定義
 
第II部  作品解題
1  エドワード・テイラー『準備のための瞑想』(1682―1725執筆)
2  ベンジャミン・フランクリン『フランクリン自伝』(1818―19)
3  ワシントン・アーヴィング「リップ・ヴァン・ウィンクル」(1819)
4  ラルフ・ウォルドー・エマソン『自然』(1836) 
5  エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」(1841) 
6  ナサニエル・ホーソーン『緋文字』(1850) 
7  ハーマン・メルヴィル『白鯨』(1851) 
8  ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『ウォールデン―森の生活』(1854)
9  ウォルト・ホイットマン『草の葉』(1855―92) 
10  エミリー・ディキンソン「わたしは見ることが好き,それが何マイルも舐めていき―」(1862) 
11  ヘンリー・ジェイムズ『ある婦人の肖像』(1881) 
12  マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒険』(1885)
13  セオドア・ドライサー『シスター・キャリー』(1900) 
14  イーディス・ウォートン『歓楽の家』(1905)
15  シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ,オハイオ』(1919)
16  T・S・エリオット『荒地』(1922)
17  ウィラ・キャザー『迷える夫人』(1923) 
18  F・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』(1925)
19  アーネスト・ヘミングウェイ『武器よさらば』(1929)
20  ウィリアム・フォークナー『八月の光』(1932) 
21  J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』(1951) 
22  フラナリー・オコナー『賢い血』(1952)
23  ジェイムズ・ボールドウィン『山にのぼりて告げよ』(1953) 
24  ジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』(1957) 
25  シルヴィア・プラス『エアリアル』(1965)
26  トマス・ピンチョン『重力の虹』(1973) 
27  レイモンド・カーヴァー『大聖堂』(1983)
28  コーマック・マッカーシー『ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤』(1985) 
29  トニ・モリスン『ビラヴド』(1987) 
30  コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』(2016) 
 
第III部  資 料
アメリカ文学を読む日本語読者のための読書リスト
関係年表  
関連地図  
人名索引  
作品索引
 
著者:池末陽子,大川淳,古井義昭,舌津智之,稲冨百合子,小南悠,白川恵子,石原剛,中村善雄,小林久美子,水口陽子,畔柳和代,金澤哲,出口菜摘,戸田慧,ハーン小路恭子,坂井隆,後藤篤,木原善彦,西光希翔
 

関連情報

書籍紹介:
【書籍紹介】新刊『アメリカ文学史への招待--豊饒なる想像力』(文学部池末陽子准教授の共著)のご紹介【文学部・文学研究科】 (龍谷大学ホームページ 2025年3月26日)
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news/entry-16346.html
 
金澤哲教授と中村善雄教授が分担執筆した書籍が出版されました (京都女子大学ホームページ 2025年3月18日)
https://www.kyoto-wu.ac.jp/gakubu/faculty/literature/eibun/news/boogco000000pj8k.html

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