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薄いピンクの書影

書籍名

高校入試と内申書

判型など

248ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2025年3月24日

ISBN コード

978-4-12-005907-0

出版社

中央公論新社

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高校入試と内申書

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日本の教育システムでは、高校入学時と卒業時に大きく進路が分岐していきます。高校入学時というのはもちろん高校入試のことで、卒業時というのは高卒就職および専門学校、短期大学、四年制大学などへの進路の分化のことを指しています。
 
日本における教育システムの特徴と課題を明らかにしようとしてきた教育社会学では、当然ながらこの高校時点での進路分化に様々な角度から焦点を当ててきました。高卒就職のメカニズムの研究、大学入試の研究、高等教育機会の研究、中学や高校での進路指導の研究、等々です。しかしながら、なぜか高校入試に関する本格的な研究は、実はあまり見られませんでした。学力を基準にした客観的な選抜が行われているというイメージも強く、その仕組み自体というよりはその結果が出た後に進路が水路付けられてしまうことに大きく関心が寄せられてきました。高校入学後に専門高校の生徒は就職に向かいやすく、普通科の進学校の生徒は大きく大学進学に偏った進路をとることになります。この現象を、陸上競技のトラックになぞらえてトラッキングとして概念化し、その強弱や変化を探ってきたのです。その結果、進路の最初かつ最大の分岐点である高校入試に対する研究が、エアポケットのように抜け落ちることになっていました。
 
研究代表者の中村は、もともと大学入試において学力試験以外の方法の拡大を大衆型の選抜ととらえて研究を積み上げてきていましたので、その関連で特に高校入試の内申書に注目しました。研究上の重要性・新規性もありますが、社会的にも内申書はしばしばメディアに取り上げられており、社会的関心の高い重要テーマと考えたからです。この点を明らかにするべく高校入試に関する調査を実施してきましたが、一人では十分に研究が進まなかったため、東京大学の中で関心を持つメンバーを募り、共同研究チームを立ち上げて新たに調査を開始しました。本書はこのチームによる共同調査研究の成果です。
 
調査の結果は多岐にわたりますが、高校入試は都道府県によって入試制度が異なる面がありながらも、共通の特徴も持っており、内申書は中学生を学校の成績を意識した生活に縛り付ける「抑圧」的な作用と、一発勝負の学力検査のストレスを和らげる「救済」的な作用が併存しており、それがデータの様々な場面に現れています。多くの人にとってほろ苦い思い出のある高校入試と内申書について、その客観的な姿に関心のある方にはぜひ本書を手に取っていただきたいと思います。
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 中村 高康 / 2025)

本の目次

序 章 高校入試と内申書の諸問題 中村高康
 
【第一部 高校入試と内申書】
第一章 内申書の社会学 中村高康
第二章 各都道府県の高校入試における内申書利用の現状 田垣内義浩
第三章 社会調査からみる内申書の利用の実態とその変化 藤原翔
 
【第二部 内申書の調査データ分析】
第四章 調査の概要 中村高康
第五章 中学校生活は内申書に支配されているのか 中村高康
第六章 内申書に対する中学生の反応類型―階層と学力に注目して 伊藤美遥
第七章 中学生は内申書をいつから意識しているのか 山口ゆり乃
第八章 内申書を否定するのは誰か―否定意識の背景としての内申点・親学歴・性別 田垣内義浩
第九章 内申点とジェンダー 山口ゆり乃
第一〇章 地域ごとの入試制度と高校入試経験ー併願優遇制度に着目して 田垣内義浩
終章 高校入試における内申書の特質と現代 中村高康
あとがき
 

関連情報

書評:
石岡学 評 (『教育社会学研究』第117集 2026年1月16日)
https://jses-web.jp/publication/journal
 
書籍紹介:
「実は現代日本で最大の選抜イベント」…高校入試が"学力検査と内申書のミックス"になった歴史的背景全中学生に占める公立中学生の比率は9割を超える」 (『President』Online 2025年7月14日)
https://president.jp/articles/-/97815?page=1
 
関連記事:
調査書不要の高校入試が広がる 不登校や病気の生徒に「チャンスを」 (『朝日新聞』 2026年1月31日)
https://www.asahi.com/articles/ASV1X2J4XV1XUTIL00DM.html

入試内申書を考える 抑圧性緩和の制度設計を 東京大教授 中村高康さん (『西日本新聞』 2024年10月6日)
https://www.nishinippon.co.jp/item/1266613/
 
内申書の現代的課題を捉える三つの視点 / 中村高康 (『現代思想』 2026年4月号)
https://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=4110
 
中学生の学校での行動を縛る「調査書(内申書)支配」、よい子競争の岐路 生徒の個性や適性と高校をどう結び付けるか (『東洋経済education × ICT編集部』 2023年3月14日)
https://toyokeizai.net/articles/-/658310?display=b
 
高校入試控える中3の8割「内申書を意識」…先生から「内申書に書くぞ」15% (『読売新聞』 2022年11月10日)
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20221110-OYT1T50150/
 

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