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白い表紙の左側にパステル調の模様

書籍名

MINERVA 社会学叢書 66 高校生の進路・生活と「教育的カテゴリー」 ゆらぐ高校教育をとらえなおす

著者名

中村 高康、 中村 知世、小黒 恵 (編著)

判型など

272ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2023年9月30日

ISBN コード

9784623095964

出版社

ミネルヴァ書房

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本書は、「高校生の進路」を主題として大阪大学進路研究会 (研究代表者:中村高康) が実施した研究データとそのフィールドを再活用し、現代的な課題を踏まえつつあらためて東京大学高校生活と進路研究会 (研究代表者:中村高康) を立ち上げ、この高校生の生活と進路の問題を、その前身となる研究を含む先行諸研究とは異なる観点から追求しようとしたものです。
 
本研究の前身にあたる研究の成果は、中村高康編『進路選択の過程と構造』(2010年、ミネルヴァ書房) としてまとめられていますが、そこからさらに15年ほどが経過した今日ではさらに、そうした構造変動に対応すべく様々な高校改革がうながされ、現に実施されてきたという要素が加わって、現実も変化しています。
 
本研究において注目するのは、そうした新しい時代に対応するために様々な形で設定されてきた新しい制度枠組が登場することによって、既存の枠組みとの関係を意識せざるを得なくなった状況です。
 
新しい枠組みは、しばしば〇〇制度、××コース、△△系統などといったカテゴリーを立てる形で構築されます。新しい実践や制度を提案するには、既存のカテゴリーとは異なる新しいカテゴリーを宣言するほうが新規性が伝わりやすいからです。そこで問題となるのは、新旧入り乱れた多数のカテゴリーが乱立する状況の中で、高校では生徒も教師もどのようにそれらに対処しているのだろうか、という疑問です。この問いは、考えてみれば最近の現象に限定して生まれてくるものばかりではありません。むしろ、これまでも「学校」「学科」「学級」などのカテゴリーをめぐって、様々な使い分けが当事者たちになされてきたことにも思い至ります。
 
例えば、「学級」を例にとってみると、学級担任制を敷いている小学校での「学級」の意味と教科担任制でありまたコースや科目の選択も日常的にある高校の「学級」では、当事者にとっての重みは大きく異なるでしょう。高校ではある場面では「学級」が重視される一方で、別の場面では「学科」や「コース」が強調されたりします。このように、教育の目的を持ったカテゴリーは私たちの周囲に充満しており、それは高校における進路選択に限定されるものではありませんが、それに関連して当事者たちの意識や行動を規定する形で作動していると想定できます。私たちはこれを「教育的カテゴリー」と呼び、それがどのように高校生の進路や生活と関わっているのかを、具体的な調査データに基づいて分析しています。
 
教育社会学や教育学の研究者はもちろん、高校教育の関係者や教育に関心のある様々な方々にお読みいただければ幸いです。
 

(紹介文執筆者: 教育学研究科・教育学部 教授 中村 高康 / 2025)

本の目次

はしがき

第1章 高校生の進路・生活と集団編成──「教育的カテゴリー」への注目(中村高康・中村知世・小黒恵・布川由利・山口泰史・小西尚之)
 1 高校生をとりまく状況の変化
 2 進路選択をめぐる諸研究とトラッキング概念の限界
 3 学級に関する研究動向とカテゴリーとしての「学級」
 4 多様な高校教育の枠組みをとらえる新たなカテゴリー概念の必要性──高校教育改革研究の文脈から
 5 教育をめぐるカテゴリーに関する諸議論
 6 「教育的カテゴリー」の定義と性質

第2章 調査研究の概要と基礎分析(中村高康・小西尚之)
 1 調査研究の概要
 2 2005年度入学生調査からのデータ上の変化
 3 「教育的カテゴリー」をめぐる基礎集計

第3章 商業高校における専門教育と教育的カテゴリー(小黒 恵)
 1 はじめに
 2 専門教育に対する政策の変遷
 3 商業高校をとりまく状況
 4 X市における商業教育政策と教育的カテゴリー
 5 おわりに

第4章 商業教育と系統を用いた教師の実践(中村知世)
 1 はじめに
 2 先行研究の検討と分析課題
 3 系統を用いた商業教育の保持と普通教育との分化
 4 おわりに

第5章 X商業高校の学級編成と教育的カテゴリー(小黒 恵・中村知世)
 1 はじめに
 2 分析の視点
 3 質問紙調査にみるクラス編成の実態──工業とX商の比較を通じて
 4 商業高校におけるホームルーム編成の教育的意図──教師へのインタビュー調査より
 5 おわりに

第6章 生徒にとっての教育的カテゴリーの意味(布川由利)
 1 はじめに
 2 生徒の分類をいかにみるか
 3 分析の焦点
 4 分 析
 5 おわりに

第7章 高校生にとっての学校内所属集団の意味──教育的カテゴリーへの帰属意識の計量分析(山口泰史)
 1 はじめに
 2 データと変数
 3 分析結果
 4 おわりに

第8章 系統の再編と生徒の進路選択(小西尚之)
 1 はじめに
 2 「重要な他者」としての教師の直接的な影響
 3 生徒の進路選択に対応した系統の消失
 4 インタビューから見た進学指導の変化
 5 おわりに

第9章 所属集団と生徒の意識・行動の分化──系統,クラス,部活動の影響(山口泰史)
 1 はじめに
 2 仮説の設定
 3 データと変数
 4 分析結果
 5 おわりに

終章 ゆらぐ高校教育をいかにとらえるか──「教育的カテゴリー」概念の確立に向けて(中村知世・小黒恵・中村高康)
 1 本書の知見
 2 教育的カテゴリー概念と新たな高校教育モデル
 3 ゆらぐ高校教育をとらえなおす

あとがき
 

関連情報

書評:
香川七海 評 (日本社会病理学会機関誌『現代の社会病理』40号、p.213-215 2025年)
https://socproblem.sakura.ne.jp/journal/40.html
 
尾川満宏 (広島大学) 評 (『教育社会学研究』第116集、p.326 2025年7月11日)
https://jses-web.jp/publication/journal/journal116/
 
髙橋亜希子 (南山大学) 評 (『教育学研究』第91巻、第3号、p.401-403 2024年11月14日)
https://doi.org/10.11555/kyoiku.91.3_401
 
西丸良一 (慶応義塾大学助教) 評 (『社会と調査』No.33 2024年9月30日)
https://jasr.or.jp/asr/33/
 
川上泰彦 (兵庫教育大学) 評「多様化するコース、類型の実像に迫る」 (『日本教育新聞』 2024年4月15日号)
https://www.kyoiku-press.com/post-276785/
 

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